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総 括



2016 Trofeo SAR Princess Sofia

第47回プリンセスソフィア杯


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Report & Photo by JSAFナショナルコーチ


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▲470級男子メダルレースレースのスタート


大会4日目

予報どおり南から南西の風が朝から入り始め、定刻11時のスタートに合わせ10時には陸上を出艇しました。
レース海面までは曳航で20分程度ですが、海面に着いてしばらくすると濃霧とともに南西の風が強くなりました。20分ほどで視界が200mくらいになり、本部船の近くで待機となりました。レースコミッティは安全を考慮し定期的に音響ホーンを鳴らし、選手が離れないよう注意を促していました。無線でもその旨を伝えるインフォメーションがあり、安全管理がよくできていると感心しました。

レースが始まるころには14ノット平均、波高1mでしたが、風のシフト、強弱がありリグのセッティングが難しい状況でした。
この日は470女子が先のスタート。
吉田・吉岡はクリアなスタートを意識し上側に固まった艇団の下側からクリアスタート。左右どちらの風が押してくるか、見ていても難しい感じでしたが、少しだけ左サイドにシフトした分、2位で1マークを回航。最初のダウンウインドで1位を抜き、その後は1位を守り切りトップフィニッシュを飾りました。
2レース目も得意な風域。良いスタートができれば総合順位でもトップに近づけるところまで順位を上げていましたが、スタートで競り負け、悪い側に追い出されてしまい、10位でフィニッシュ。ブラジルはUFDで失格し、吉田・吉岡の公式順位は9位となりました。


大会5日目

大会5日目の470級は北→西の風12→4ノット、風が最終レグで大きく変わった中で1レースを実施しましたが、風の変化とともに大雨になり、AP&H旗で一度陸に戻りました。雨も小雨になり15時30分にAP旗が降下され再出艇しました。

その後、14ノット(ガスト16ノット)の中で2レース目を実施しました。男子の土居・今村は4‐12位とまとめて10位に入り、メダルレース進出を決めました。

女子の吉田・吉岡はこの日の1レース目のスタートが悪かったこと、またマーク手前でブローを見逃してしまい、混戦から抜け出せず12位となり、トップ3に少しポイントを広げられてしまいました。
しかし、2レース目はスタートも良く終始オランダ、イギリスとトップ争いをして2位でフィニッシュ。ブラジルが順位を落としたため、吉田・吉岡を含め上位6チームが僅差でメダルレースに臨むことになりました。


メダルレース

メダルレースは女子が12時スタート予定でしたが、風が弱く、1時間遅れて南の風8ノットの中でスタートしました。中国、オランダがリコールし、スタート直後にスロベニアがタック沈。スロベニア、オランダが脱落したため、上位といかに戦うかが吉田・吉岡のポイントでした。
2上途中から風が弱くなり、フィニッシュ100m手前まではメダルを獲得できる4位の位置につけていましたが、さらに風速が1ノットくらいまで落ち込み、混戦でのフィニッシュとなりました。結果6位となり惜しくも総合4位となりました。

男子メダルレースは風向が変わり北寄りの風10ノットでスタート。メダルレースでの結果により7位まで順位を上げる可能性がありました。1マークから上位と接戦で5位につけ、フィニッシュまで5位を守り抜きましたが、総合成績では変わらず10位となりました。しかしながら、対等に戦う姿はオリンピックでの活躍を期待せずにはいられません。


選手とコーチのコメント
470級女子
吉岡:「総合4位でメダルレースに出場しました。前とも後ろとも点差が近かったので、とにかく自分たちが前を走ることを意識しました。終盤に風が落ちてパフをうまく掴めず、最後に順位が落ちてしまったのはとても悔しかったです。この後、ヨーロピアンも続くので、今回の課題を少しでも克服できるよう頑張りたいです」

RS:X女子
伊勢田:「今大会はレース前にはいい手応えでしたが、レースでは思うように走れなかった。他選手と比較しても体格が違うので、自分自身のセーリングをしようと考えました。課題も多く発見しましたので、帰国後はよく考えて練習したいと思います。また、体調不良でレースに出られないという情けない状況があったので、体調管理もよく考えてたいと思います」

RS:X男子
工藤:「3回目の海外レースとなった今大会、海外勢の力には及ばず悔しい結果に終わりました。しかし、1年間かけてようやく見えてきたものも多くあり、収穫の多い大会になりました。大切なのはこれから。忘れてはいけないことは、自分よりも海外の選手の成長スピードの方が上だということ。日本は周囲に速い選手がたくさんいる環境ではないので、だからこそ海外の選手よりも努力しなきゃいけないし、国内でできることは今の自分にはたくさんある。今まで以上にギアをあげてウインドに取り組んでいきたいと思います」

レーザー
瀬川:「最終日は16ノット前後の強弱ある風の中で2レースを行いました。33位、35位となり、総合86位で本レガッタを終えました。陸からの風で大きなうねりも入ってくるコンディションで、走らせるのが難しく、うまくボートスピードを出せませんでした。不規則なコンディションでも対応できるように練習し、メキシコでのワールドへ向けて準備します」

宮野コーチ
「今回はリオオリンピック代表選手から2020年を見据えた若手の選手たちまで、幅広い年齢層が参加した大会になりました。すでに東京オリンピックに向けてのトライアルが始まっていると感じました。若手といっても男子は180cm以上、女子は160cm以上の選手がほとんどです。とくにRS:Xは選手の大型化が進んでいます。このような世界の流れの中、日本はどのようにしてメダル獲得に向け選手を育成、強化せねばならないのか、ナショナルチームの選考の仕方、世界に通用する選手をどのように選考していくのかなどをしっかりと考える必要性を改めて実感しました」


全体総括

今大会は軽風から中、強風での大会となりました。とくに470級は数日後にヨーロッパ選手大会が開催されるので、多くの参加謝がありました。
一方、国によっては代表チームを本大会に参加させずリオ合宿を組んだり、また、選手のコンディションを考えて参加しないチームもありました。
470級男女の日本代表チームは課題を克服するためにこの大会に出場しましたが、より調整が必要と感じる大会でしたし、課題が明確になった大会でもありました。
3月のアブダビでアジア枠を獲得した他クラスの日本代表チームは準備ができず本大会には参加していませんが、言えることはただ一つ。やるべきことをしっかりしなければならないということです。支援するスタッフは選手の能力を最大限に発揮させるよう最大限の情報収集をし、コミュニケーションをより高めることが大切だと感じています。


大会Webサイトhttp://www.trofeoprincesasofia.org/en/default/races/race

●成 績
470級男子(79艇参加)
○土居 一斗・今村 公彦
 10位 8-8-14-5-4-(16)-8-15-4-12-M10
○市野 直樹・長谷川 孝
 20位 21-16-5-20-(32)-25-7-13-7-DNC
○高山 大智・木村 直矢
 50位 13-21-(UFD)-17-9-BFD-10-3-19

470級女子(66艇参加)
○吉田 愛・吉岡 美帆
 4位 1-3-5-(9)-5-6-1-9-12-2-M12
○山口 祥世・畑山 絵里
 33位 9-29-25-8-22-28-27-26-(UFD)

RS:X級男子(85艇参加)
○工藤 輝
 80位 39-35-(DNF)-39-DNF-26-23-26-39

RS:X級女子(63艇参加)
○伊勢田 愛
 54位 24-23-27-14-4-17-(DNC)-DNC-DNC-DNC

レーザー級男子(152艇参加)
○瀬川 和正
 86位 31-28-(40)-8-23-39-23-39-33-35


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▲運営には多くの女子スタッフが活躍

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▲470級女子メダルレースのフィニッシュ直前。風がなくなり混戦模様の運任せ?

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▲プレスは大きなインフレータブルボートが用意された

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▲470級男子、5位でフィニッシュに向かう日本チーム

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▲RS:X男子大会5日目。クロスホールドは工藤スタート

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▲RS:X男子の工藤の最終レース最後のダウンウインド


(編集・文責:JSAFオリンピック強化委員会・広報)






Day2



2016 Trofeo SAR Princess Sofia

第47回プリンセスソフィア杯


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Report & Photo by JSAFナショナルコーチ


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▲470級男子、決勝初日のスタート直後、上スタートを切るJPN8は市野・長谷川


予選4レースが終了し、今日からゴールドフリート、シルバーフリートに分かれてのレースとなりました。

予報の風が入らず出艇時刻にはAP旗が全クラスで掲揚され、陸上待機2時間。12時にAP旗が降下されレース海面に向かいますが、陸風と海風が押し合い、なかなか安定せず多くのクラスは15時過ぎに最初のレースが行われました、セーリング競技の宿命ではありますが、長い1日となりました。

昨日までの4レースの結果でゴールドフリートに進出したのは470級男子の土居・今村、市野・長谷川、470級女子の吉田・吉岡、山口・畑山。470級男子の若手の高山・木村は僅差でゴールドフリートに残ることができませんでした。
RS:X男子の工藤、女子の伊勢田、レーザー級の瀬川も残念ながらシルバーフリートでの戦いとなりました。

15時過ぎに、南の風が平均10~13ノットと安定した中でのレースでしたが、470級の海面はコースエリア左側に小高い丘を抱えており、その影響もあって左側のコースを走った選手が上位を占めることになりました。もちろんボートスピードも大切ですが、スタート位置とストラテージがとても大切でした。

470女子はスタートが少し消極的な感があり、1分も経たないうちにポートタックになる場面が多かったので、今日のように左海面が良いと判断するならもっと積極的になることで、まったくレース展開が変わるのではないかと見ています。

リオ五輪代表の470級男女は最終日のメダルレースに進出できる位置につけていますので、攻めの気持ちを忘れずに明日もしっかり戦ってもらいたいです。

●選手コメント
470級女子
吉田 愛:「今日は2レースともにスタートを失敗してしまいましたが、得意な風だったのでボートスピードで抜くことができました。ボートスピードが良くてもスタートを成功させないともっと上位は狙えないので、明日はもっとスタートラインを見て攻めていきます」

レーザー
瀬川和正:「12ノット前後の風で2レースを行いました。23位、39位で総合83位です。マークタッチや42条ペナルティ、ケースに巻き込まれるなど先を読めず冷静さを欠いたレースをしてしまいました。とくにダウンウインドではうまく波をつかめずスピードを出せませんでした。アップウインドのスピードは手ごたえを感じているので、明日も頑張りたいです」

●成 績
470級男子(79艇参加)
○土居 一斗・今村 公彦
 14位 8-8-14-5-4-(16)
○市野 直樹・長谷川 孝
 31位 21-16-5-20-(32)-25
○高山 大智・木村 直矢
 42位 13-21-(UFD)-17-9

470級女子(66艇参加)
○吉田 愛・吉岡 美帆
 4位 1-3-5-(9)-5-6
○山口 祥世・畑山 絵里
 33位 9-(29)-25-8-22-28

RS:X級男子(85艇参加)
○工藤 輝
 81位 39-35-(DNF)-39-DNF

RS:X級女子(63艇参加)
○伊勢田 愛
 46位 24-23-(27)-14-4-17

レーザー級男子(152艇参加)
○瀬川 和正
 90位 31-28-(40)-8-23-39


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▲470級女子、最終マーク(3マーク)からフィニッシュに向かう吉田・吉岡

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▲RS:X女子の伊勢田、1上4位で回航下マークへ


(編集・文責:JSAFオリンピック強化委員会・広報)




Day1



2016 Trofeo SAR Princess Sofia

第47回プリンセスソフィア杯


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Report & Photo by JSAFナショナルコーチ


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▲大きな波の中リーチングを走る土居・今村


●開催地:スペイン・マヨルカ島(パルマ)Spain Majorca (Palma)

●大会日程:2016年3月27日〜4月1日

出場選手
470男子
 ○土居 一斗・今村 公彦(アビームコンサルティング・九州旅客鉄道)
 ○市野 直樹・長谷川 孝(和歌山セーリングクラブ、横浜ゴムMBジャパン株式会社)
 ○高山 大智・木村 直矢(日本大学入学4月予定、日本大学)
470女子
 ○吉田 愛・吉岡 美帆(ベネッセホールディングス)
 ○山口 祥世・畑山 絵里(NOEVIR)
RS:X男子
 ○工藤 輝(愛媛県セーリング連盟・FAREAST)
RS:X女子
 ○伊勢田 愛(福井県体育協会)
レーザー級
 ○瀬川 和正(米子産業体育館)

●JSAFコーチ:中村 健次・中村健一・鈴木 國央

大会Webサイトhttp://www.trofeoprincesasofia.org/en/default/races/race

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今日からプリンセスソフィア杯が始まりました。
ヨーロッパでも人気が高く、各クラスに多くのエントリーが今年もありました。宿泊費が安いこと、寒くないこと、ヨーロッパでシーズン最初のイベントであること等が人気の理由なのではないかと推測します。

大会初日は、朝から南西の風が14~18ノット、波高1mの好条件でレースが行われました。予選は各クラスともグループ分けされ、男子と女子ではレース時間が異なりました。日本が参加する470級は11時から女子、13時から男子がそれぞれ2レース、RS:X級も女子、男子の順で2レースが予定どおり行われました。

470級
470級女子は世界ランキング上位3チームが今大会には参加していない中(今大会後に開催されるヨーロッパ選手権に照準を合わせているため)、リオ代表の吉田・吉岡は1-3とまとめて初日の発進です。男子のリオ代表の土居・今村も8-8と安定した順位で初日をまとめました。
土居・今村のブルーフリートは、2レースともゼネラルリコールの後のブラックフラッグによるスタートでした。土居・今村は2スタートともにブラックフラッグのリスクを回避し、スタートライン中ほどからリスクの少ないスタートを行ったため、スタート後のスターボードタックで長時間走ることができません。
しかし、その後のボートスピードと、現地に来てから練習を行ってきたダウンウインドで順位を上げ、第1レースで8位、第2レースでは一時4位まで順位を上げましたが、トラブルもあり8位でフィニッシュしました。
市野・長谷川は2レースともに10位くらいで1マークを回航しましたが、トッピングリフトのトラブルで順位を落としてしまいました。今後このようなトラブルがないようにしたいと反省した面持ちで、明日に向け気合を入れ直していました。

RS:X女子
RS:X女子リオ代表の伊勢田は今日のレースを終えて、次のように話しました。
「考えている走りができず、ポートが上らず、前に出ることができなかった。みんなと同じ角度で行ければもっと前を走れたと思うので、角度が悪いのが悔しい。明日はセッティングや乗り方を考え直してレースに臨みます!」

2020東京を目指す選手も出場
今回、海外レース初挑戦の470級男子の高山・木村は、強風の中よく走り、1レース目13位、2レース目はメインハリヤードのトラブルに見舞われ21位となりました。

15ノット前後の風で2レースを行ったレーザー級ですが、31-28位(総合90位)で初日を終えた瀬川和正は、「アップウインドのスピードがうまく出せず、いいポジションでシフトをつかまえられませんでした。シフトが大きく、シフトに乗れるか乗れないかで大きな差となるので、スピードに集中する場面、周りをしっかり見る場面とうまく切り替えられるようにします」と感想を述べました。

RS:男子の工藤輝は、「初日はプレーニングコンディションでした。大切にしたのはスタートです。これまでは、わかってはいながらも海外という不慣れな環境に翻弄されて消極的なスタートを切っていたので、今回は思い切りよくいこうと考えました。結果はまだまだでしたが、1本目より2本目の方がタイミングは合わせられた気がします。次はオンラインで切れるように、明日からはプレーニングコンディションがきたら合わせて行きたいです」と初日の印象を話しています。

●成 績
470級男子(79艇参加)
○土居 一斗・今村 公彦
 11位 8-8
○市野 直樹・長谷川 孝
 36位 21-16
○高山 大智・木村 直矢
 31位 13-21

470級女子(66艇参加)
○吉田 愛・吉岡 美帆
 4位 1-3
○山口 祥世・畑山 絵里
 38位 9-29

RS:X級男子(85艇参加)
○工藤 輝
 75位 39-35

RS:X級女子(63艇参加)
○伊勢田 愛
 50位 24-23

レーザー級男子(152艇参加)
○瀬川 和正
 90位 31-28


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▲混戦で1上マークに向かう470女子フリート

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▲初日、順位をまとめた吉田・吉岡

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▲海岸近くで行われるFXのレース。国際オリンピック委員会は見せる競技を推奨しており、今後はこのようなコース設定が増えるかもしれません

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▲しかし、岸が近いため浅瀬を走ることが多く、マストが海底に刺さってデスマストしたレース艇


(編集・文責:JSAFオリンピック強化委員会・広報)