「SAIL WAKAYAMA」 精鋭を集め、白熱の戦いを展開
国内初のメダルレース実施など新しい試みを随所に
台風18号が各地に傷跡を残して通過していったあと、台風の左半円になったおかげで被害が少なかった和歌山ではインターナショナルレガッタを無事に開催することができた。
昨年に続いて2回目のレガッタであったが、今回はレーザー級全日本、RS:X級全日本を兼ね、470級を加えた3クラスであった。残念ながら新潟国体の次の週ということで参加艇数がのびなかった上、台風の影響や猛威をふるうインフルエンザでのキャンセルなどなど、エントリー数が足りずにRS:Xは全日本として成立しなかった。
各種目とも、10日から12日の3日間で8レースを行い、12日は午後からRS:X、レーザー、470の順でメダルレースを実施した。2006年1月から世界各地で始まったメダルレースであるが、日本では今回が初めてで、レース運営、ジュリー、選手ともに緊張した面持ちでのレースとなった。
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RS:X
男子2、女子2という寂しい大会となったが、新潟国体で優勝したばかりの富澤(関東自動車工業)がダントツの走りを見せた。「今回は全日本として成立しできずで残念でしたけれども、苦手な風域だったので、課題をきめてしっかり練習しました。12月に東アジア選手権があるので、それが次の目標です。応援よろしくお願いします!」(富澤)
RS:Xは世界選手権で8月中旬から1カ月間、イギリスのウェイマスで合宿、レースをこなしてきた。五輪会場のウェイマスでRS:Xはほとんどのレースをポートランド港の中で実施するため、和歌山は絶好の練習の場となった。ウェイマスは左右への大きなシフト、ガストが入ってくる時に岸や堤防を越えて風が入ってくるため、見えてから風がくるまでの時間が短いこと、山からのたたきつけるような玉ブロー、多くの共通点を和歌浦湾でもみる。また、強弱のむらがある風が苦手な須長にとっても、和歌山は格好の練習場所だったかもしれない。
470
9艇が集まった470は、世界選手権3位の原田・吉田組が1点差で前田・谷口組をふりきった。3日間をとおして難しいレース海面だった。左右から入るガストには思い切って狙いをつけて寄せていくことも必要で、無心に風を追いかける大学生チームはNT選手相手に果敢な走りを見せてくれた。見ごたえあったメダルレースでは3点差で追う前田組がスタートから飛び出して最初のガストをつかんでトップを独走。ダブルポイントで捨てられないメダルレースだからこそ、間に1艇入れば勝つのだ。原田組は途中、紅1点の松下(関西学院大学)にも抜かれて5位まで落ちることもあり、あわや前田組が逆転の場面も見られた。しかし、最後まで落ち着いて走り、前田組に続いて2位でフィニッシュ。原田組は世界選手権3位の貫録を見せて1点差で逃げ切った。
「難しい海面でした。艇数が少なかったけれど、最後まで気の抜けないレースで、メダルレースもいい練習になりました」(原田)
レーザー
全日本選手権のレーザーは27艇が集まった。初日からトップを行くイアン・ホールが逃げ切るか、安田真之助(鹿屋体育大学)か永井久規(豊田合成)が逆転するか。8レースの末に、優勝は3艇にしぼられた。レーザーのメダルレースはドラマの連続で、前半は永井がトップに出てイアンが8位と、逆転したかに見えたが、2上でトップとラストが入れ替わるほどのどんでん返しがあり、安田がトップ、イアンと永井が中盤で上下し、フィニッシュの順で誰が優勝かが決まる接戦となった。「すごくドキドキしました。永井さんがトップの時には、やられたかって思いましたけど、2上で逆転したので、チャンスが来たかって」(イアン)。「トップをとるしかないってわかっていましたけど、あと1艇、イアンと自分の間に入ってくれたら自分が優勝だったので残念です」(安田)。結局、安田はトップをキープしたがイアンが4位で入り、イアン・ホールが全日本初優勝をとげた。
トップ10に入って、メダルレースに残ることは、選手達の新しい目標となる。上位で入った選手がハラハラドキドキするのと同じように残った選手達はそれぞれにエキサイティングな気持ちを味わうことができたようだ。「メダルレース、楽しかったです。また出たいです。次も出られるように頑張ります」(藤村)
世界初のメダルレースはオーストラリアのメルボルンで2006年1月に行われたのだが、その時も永井久規はトップ10に残って出場している。実は、そこでケースになり、オンザウォーターのプロテストで相手にペナルティーをつけたのだが、今回もスタートでイアンをけん制するなど、ベテランらしい攻撃的なメダルレースぶりを見せてくれた。「優勝して、もう一度世界選手権に行きたかったのですけど、選考レースで権利とらないと…」(永井)と、ベテラン永井は世界選手権でゴールドフリートに入る夢をもち続けている。
初めてのメダルレースは、10日のBBQパーティの前にインターナショナルジュリーからクイズ形式でレースについての説明があり、42条のこともあわせてルールの勉強会がもたれた。Addendum Qをみたことがない人が多かったので、選手もオンザウォータージャッジのやり方から理解していかなければならなかった。インターナショナルレガッタでは、公式言語が英語なので、帆走指示書もノーティスも英語で出る。日本にいて世界の雰囲気を味わうことができる大会なのだ。インターナショナルジュリーは英語で説明するわけだし、今回は韓国から470とレーザーにエントリーしている。
和歌山NTCではメダルレースでのレーザーと470をGPSトラッキングシステムを用いてリアルタイムで中継し、ハーバー内のスクリーンで見ることができた。また、レースエリアはハーバー防波堤のすぐ外がスタートラインだったので、レースがよく見え、陸からの観戦で大いに沸いた。今年はエントリーが少ないながらも、メダルレースやGPSトラッキングの中継など、新しい試みにチャレンジした大会であった。来年はより多くの選手達が和歌山に集まり、トップ選手にチャレンジしてほしい。
和歌山インターナショナルレガッタ成績表