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めんそーれ、帆走の島へ
セーリング日本代表チーム合宿を受け入れて

座間味村長 宮里 哲


村民の悲願の実現

昨年12月末から1月初旬にかけて、多くの方の熱い思いとご支援のおかげで、セーリング競技の470級とRS:X級日本代表チームの合宿を受け入れることができました。沖縄県体育協会が作ってくださった横断幕を掲げ、座間味港でフェリーを下船して来られる選手の皆さんをミス沖縄とともに迎えた時は感無量でした。合宿誘致は本村の村民にとって数年来の悲願だったのです。

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▲座間味村長(左から4番目)と座間味村民みなさんに歓迎していただきました。

慶良間諸島といえば、美しいサンゴ礁とダイビングを思い浮かべる方が多いと思いますが、周囲を海に囲まれた離島村・座間味の人々は、古くから帆を上げて大海原を行き来することに長け、琉球王朝時代は貿易船の船頭職を多く輩出したことで知られていました。
現代においても沖縄県内で最も長い歴史をもつヨットレース 「座間味ヨットレース」(宜野湾マリーナから座間味港)と、2000年の沖縄サミットを記念して創始された「サバニ帆漕レース」(座間味島から那覇港)の開催地としてその血を受け継いでいます。“帆走競技の隠れたメッカ”を自任してきたわけですが、とりわけ冬の本村海域は、高い水温・気温に加え、強い北東風と多島海地形がもたらす海面の状態がセーリング競技のトレーニングフィールドとして国内最良であると伺っており、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けてわが国トップセーラー育成の地として名乗りを上げたいと考えていました。

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▲座間味沖の大岩の前での1コマ。

 一方、本村は、2014年3月の慶良間諸島国立公園指定を機に国内外から多くのマリンレジャー客をお迎えするようになりましたが、お客様は夏場に集中しており、冬は宿泊施設も集落も閑散としています。冬場の活性化としても、長期で滞在していただける代表チームの合宿はありがたく、何よりマストが沈むほどのシケの海をものともせずに疾走する白いセールは、私たち村民の心を熱く揺さぶるのです。しかし、那覇からさらに船を乗り継ぐ遠隔地であり、練習艇やコーチボートの輸送に費用がかかるというハンディが本村にはありました。
 今回、この輸送費に対して沖縄県のスポーツコンベンション誘致戦略推進事業の支援を得ることができ、悲願の実現となったのです。


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▲出艇風景

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▲青い海が際立つ1枚。本当に綺麗の一言です。


小さな島の誇りをかけて

 座間味村には設備が整った大きなホテルはありません。しかし、ハードな練習に耐える選手たちを笑顔とあたたかい食事で迎える民宿の女将さんがいます。
起伏に富んだ島の林道は、陸のトレーニングフィールドとなっていて、走る選手に「がんばれ!」と村民の声がかかります。島をあげてのもてなしと、豊かな自然が私たちのアピールポイントです。
 しかし、世界で戦う選手を継続して受け入れるためには、トレーニング設備や最新のテクノロジーが必要であることも痛感しています。2月には470級のチームがマイアミから帰国し、座間味村での合宿が再開されますが、少しずつでも練習環境を向上させてゆくことが受入れ自治体のつとめでしょう。
 今回県内外の企業から、管理栄養士によるアスリート食のアドバイス、トレーニングマシンの提供などがあり、東京五輪への期待と日本代表への応援に支えられましたが、村としてもコンディショニングトレーナーの誘致やコーチボート、無線機器などの所有に力を入れていきたいものです。


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▲座間味湾でパノラマ撮影


本村の目標はヨットハーバー施設を備えたナショナルトレーニングセンターの指定を受けることです。選手の練習環境を第一に考えることで、ここからオリンピアンを送り出すという本村の栄えある歴史を積み重ねていきたいと思っています。

 1月の合宿の終わりに、中村健一コーチが「冬季の合宿地を提供してくれる沖縄で、若い世代を育てたい」として、県内高校のヨット部員と、また県内外からのジュニアセーラーたちとの交流の機会をもってくれました。選手たちは子どもたちに夢をくれます。彼らの存在が刺激となり、沖縄県内から、また本村から世界的な選手が生れるかもしれません。

座間味村民はもはや祖先のように木造船に帆を上げて島々を往来する必要はなくなりました。しかし、世界を舞台にセーリングの技を競う若者を応援させていただくことで、海の民の誇りを受け継いでいくことができます。それは、我々の使命であり大きな喜びなのだと感じています。


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▲4mを超えるうねりに直撃

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▲強風のダウンウィンド

Photo by 中村健一

(編集・文責:JSAFオリンピック強化委員会・広報)