■セーリング競技は選手(Athlete)・レース運営(Race Committee)・
審判(Jury)の3つのグループで構成され、競技が運営実施進行されます。
競技の進行には、国際的な海上ルール(海上衝突予防法)が有り、レース中の衝突・針路妨害などで権利艇が不利を被った場合に、選手がレース後(着艇後)に抗議書を提出し、双方の選手が出席して、審判団(ジュリー)が面接審議します。ルールに基づき複数審判員の判断により判決(裁決)が下されます。
また、最終決勝メダルレースにおいては海上判定システムが有り、選手艇の後方を伴走する審判艇によりその場で瞬時に抗議の判定が下されます。
(面接審議を不要として、メダルレース終了時に最終順位が確定し、合理的にメダリストが決まる仕組み)
■審判団(Jury)
世界各国から国際ルールに精通した上級審判が召集され、国際審判団(インターナショナルジュリー)が編成され、公平厳正な審判が下されます。日本からも数名の審判が参加します。
■セーリング競技は海上に下記のマーク(ブイ)が設置され、
コースが特定されて競技がスタートします。
原則は風下の位置からスタートして風上の第1マークを目指し、その他のマークを含めて指示された周回方法・数を回るシステムです。そのため、風上の第1マークの設定が重要となります。
風はその日の天候気象によって微妙に変化します(風の振れと呼びます)。公平なレースを行うために、レース毎にマークの位置は風の動きに連動して移動変更されます。これらの指令はスタート場所に位置する本部船上のレース委員長の判断に委ねられていますが、実際の作業はそれぞれのマーク設置を担当するレース運営船がGPSやコンパスを使用して正確な位置(角度)に設置します。
スタートラインは風上マークに対して直角(90°)に引かれます(仮想の線)。ヨットは風上マークに対して左右45°方向にジグザク(この進路変更動作をタックと呼びます。90°に向きを変えます)走るからです。
コースの種類、周回数などは本部船上に表示され、選手たちはそれを目で確認して、レースに臨みます。
1.レースの進行
スタートとスタート信号
(スタート運営船に下記のフラッグが音響と共に掲揚される)
コースの帆走
スタート後は前述の定められたコースを帆走、マークを順序通り回航してレースが行われます。
ヨットレースでよく使用される国際信号旗と意味
2.レースの回数、得点およびメダルレース
①レース回数:五輪は11レース(49er級は15レース)が行われます。
第1レースから第10レース(49er級は14レース)までの成績の上位10艇で
最終11レース目(15レース)のメダルレースが行われます。
②得点:五輪、世界選手権等では低得点方式が採用されます。
●得点は1位1点、2位2点、3位3点、以下同じく順位が得点となります。
●メダルレースのみ通常の2倍のポイントが加算されます。1位が2点、2位が4点、以下同じ倍数で
10位が20点。それまでのレースの総得点もプラスされます。
成績表に表示される順位以外の標記には主に以下があります。
●DNC:スタートしなかった艇(スタートエリアに来なかった)
●OCS:スタートしなかった艇(スタートの時フライングをし、復帰せずにそのままレースを続行)
●DNS:スタートしなかった艇(上記DNC・OCS以外)
●DNF:フィニッシュしなかった艇
●RAF:フィニッシュ後にリタイアした艇
●DSQ:失格した艇
※これらにはペナルティーとしてシリーズに参加艇数に1を加えた得点が課せられます。
●RDG:救済を受けた艇
※救済の内容により決定した得点が与えられます。
(一般的には当該レースの前までのレースの平均点が与えられます)
五輪では第1レースから第10レース目までは5レース以上が実施された場合、一番悪い得点(成績)を除外する事が出来ます(捨てレース、カットレース、ディスカードなどと呼ばれます)。
(後述のメダルレースの得点は除外出来ません)
③メダルレース:最終レースとして、上位10艇のみが決勝として出場できるレースで、
海上審判システムを使って、レースの終了順位で最終成績がその場で出ます。
2008年北京五輪から採用された新しい仕組みで、これまでのセーリング競技では最終レースを待たずに優勝が決まってしまったり、レース艇がフィニッシュした後に抗議・審問が出た場合、その結果が出るまでメダリストが決まらないという、間の悪い、わかりにくいものでした。
その改善策がこのメダルレースで最終レースに上位10艇のみが決勝として出場し、海上審判システムを使って、レースの終了順位で最終成績がその場で出るというシステムです。フィニッシュラインを通過した時に暗算、手計算でメダリストがわかるというシンプルな仕組みです。(五輪大会以外でも海外の主要レースでは実施されています)
メダルレースの得点(通常ポイントの2倍)は必ずカウントされるため(成績は除外出来ません)、レースに出ずに勝者が生まれることはありません。
メダルレースの模様は沖合ではなく、必ず陸上から見える場所(特設の観客席を説置)で行われます。「セーリング競技の見える化」への配慮です。