総括レポート

東京オリンピックから採用されるフォイリング・カタマランとして改造されたナクラ17級(男女混合クラス)の2018年世界選手権選考レースを3月2日から4日までの3日間、江の島ヨットハーバーで行いました。

昨年7月にエス・ピー・ネットワーク所属の飯束潮吹・畑山絵里組がドイツで新艇を受け取り活動をスタート。日本では11月にリオ五輪を目指して旧ナクラ17クラスのクルーとして活動していた梶本和歌子選手(橋本総業ホールディングス株式会社)がスキッパーとなり、川田貴章選手(ミキハウス)と組んでチームを結成。またNPO法人ツネイシ・スポーツアクトのサポートを受け村山仁美/渡部雄貴組がペアを組み、3チームが活動を始めました。またもう1チームが3月から活動を開始し、計4チームが活動を行っています。

今回の選考レースに艇が間に合わなかった1チームを除く3チームがデンマーク・オーフスで行われるナクラ17級世界選手権の代表を競ってレースを行いました。

大会は3日間で7レース行いました。

大きなウネリが残る軽風から強風まで、いろいろな条件の中でレースを行い、1位に飯束・畑山組、2位に梶本・川田組、3位が村山・渡部組となりました。活動が始まったばかりでもあり、乗艇時間が多く練習を積んでいるチームが上位へ来るという結果となりました。まだまだ、各選手とも艇の扱いに苦労しており、乗り込んで練習し、乗りこなしていくことが今は第一です。

今回、村山・渡部組の村山選手が練習中にケガをしてしまい、練習があまりできない中、まだ完治していない状態でのレースでした。
他の選手に大きなケガはありませんでしたが、波に突っ込んで吹き飛ばされたり、落水してダガーやラダーと接触して打撲するなど、小さなケガは絶えません。ヘルメット、プロテクターなどをつけていてもケガを完全に防ぐことはできないので、ケガをするようなシーンで安全面をどう確保していくかが課題です。ハーバー、運営側、サポートスタッフの連携が必要となります。

今のところ世界選手権の参加枠は1艇ですが、今後、追加枠の要請も行っていき、追加があった場合はこの順位で枠が与えられます。

今回のナクラ17世界選手権選考レースのあたり、運営をしていただきました神奈川県セーリング連盟はじめ、東北運営スタッフの皆さま、本当にありがとうございました。
また、応援いただきましたスタッフの皆さま、ありがとうございました。

Report by ナクラ17クラス担当・中村昭仁

▲初日のスタート
▲飯束・畑山組
▲梶本・川田組
▲村山・渡部組

3月4日(レース最終日)

午前9時、南風が強まり始めた江の島のC海面で、ナクラ17世界選手権の代表選考レース最終日の2レースを行いました。
18ノット前後でスタートしたものの、2レース目の途中からは平均で20ノットに上がり、ガストも25ノット近くまで上がりました。
2レースともに飯束潮吹/畑山絵里組がトップでフィニッシュしました。
途中でバウ沈をしたり、波を追い越していくようなスピードでジェネカーをフラッピングさせたりと、風速と波の上限に近いコンディションの中でも3艇が完走しました。
結果、飯束/畑山組が総合1位となり、8月にオーフスで開催される世界選手権の枠を獲得し、強化選手に選ばれました。

3月3日(レース2日目)

レース2日目は7ノット前後の弱い海風の中で、1レースを行いました。
3艇が1下ゲートで連なって回航するような接戦でしたが、2上へのレグで左に大きく展開した飯束・畑山組がリードし、そのままトップでフィニッシュしました。
村山・渡部組が2位ではいりました。
梶本・川田組は1上の付近でフォイルに藻を引っかけてしまい、2上へ行く途中で艇を止めてバックして藻を取らねばならなくなり、大きく遅れてしまい3位となりました。
明日は10時スタートです。
最大で5レースを予定しています。

本格的な活動がスタート

ナクラ17級はリオから五輪に加わった男女混合の新種目です。2020東京五輪からはフォイリングするカタマランとして進化したナクラ17級を使います。

3月1日~4日にかけて「2018年ナクラ17世界選手権代表選考レース及び練習会」が江の島で開催されており、ナクラ17の本格的な活動が日本でも始まりました。世界選手権(8月、デンマーク・オーフス)の代表枠と強化選手への枠をかけ、3艇での熱き戦いが繰り広げられています。

3チームの顔ぶれ

梶本和歌子/川田貴章組(橋本総業ホールディングス株式会社/ミキハウス)
梶本(旧姓・田畑)和歌子選手はリオ五輪を目指してクルーとして活動しましたが、五輪国枠予選でシンガポールに負け、本番へは進めませんでした。その後、結婚して役割もクルーからスキッパーになりました。
医師としての活動を断続的に休業しながらキャンペーンを行う川田貴章選手と組んで、ミキハウスの所属でチームを結成しました。北京五輪の金メダリストであるスペインのAnton Pazコーチがついて基礎からしっかり練習しています。

飯束潮吹/畑山絵里組(株式会社エス・ピー・ネットワーク)
昨年の欧州選手権前にドイツで艇を受け取り、欧州選手権と世界選手権、マイアミのワールドカップに参加した飯束・畑山組は470級からの転向です。エスピーネットワークの所属で、フォイリング艇でのセーリング時間が最も長いチームです。
クルーの畑山絵里は日本経済大学出身でスキッパーの飯束の後輩になります。フォイリング艇を入手する前にはリオ時のフォイルしないナクラで練習を重ねてクラス転向してきました。

村山仁美/渡部雄貴組(立教大学/NPO法人ツネイシ・スポーツアクト)
村山・渡部組はオリンピッククラスに取り組むのは初めてで、広島のツネイシスポーツアクトのサポートを受けて、ナクラ17に取り組み始めました。2月にイギリス選手を江の島に招いて日本チームと合同合宿をした際は村山選手がケガで乗れなかったのですが、渡部選手はイギリスのGimson選手と乗って教えてもらう時間があり、急成長しているチームです。

初日、接戦を展開

2日からオーフス世界選手権の代表枠と強化選手への枠をかけて、3艇での熱き戦いが始まりました。
レースを運営するチームにとってもナクラ17のレースは初めてです。風の強さでスピードがすぐに上がるため、オリンピックまでに運営も慣れておこうと勉強しています。相模湾では、フォイリング・モスやウインドサーフィンRS:X級世界選手権も運営してきましたので、スピード艇の運営にも積極的に取り組んでいます。

3月2日は4レースを行いました。
3艇のレースですが、風のある場所とない場所でスピードに差が出るので、最初の2レースは順位が安定しません。R3とR4はダウンウインドでフォイリングし出す10ノット以上の風でしたが、波が南から、風は東からという走りにくい海面でした。それでもR4は飯束組と梶本組が抜きつ抜かれつの接戦を見せてくれました。4レースを終えて上位2艇が同点、3位が3点差です。