大会3日目(最終日)

最終日も朝から残っていた北~北東の風の中、定刻どおりレースを始めました。
予報どおり午前中が勝負となった風ですが、RS:Xと49er、FXは2レースできました。その他のクラスは1レース終了後、南へ変化する風を待っている間に時間切れとなりました。ナクラは変化した風で1レースをぎりぎりのところで完了することができました。

各クラスの成績は以下をご覧ください。

https://www.jeow.org/results-1

470男子で印象に残ったのは、岡田・外薗組の今シーズンの活躍ぶりです。
今シーズウの最後になるこの江の島オリンピックウィーク(EOW)も優勝でまとめました。
また、ずっと最前列で頑張り続けた磯崎・高柳組はアジア大会で燃え尽きそうになりながらも、海外勢との接戦でしっかりと成績を残してきたところが凄いと思いました。「もう、ヨット、見たくない病です…」(磯崎)と笑いながらも6位は立派でした。

470女子は吉田・吉岡組の貫禄勝ちでした。
男子と混ざったレースで総合5位ですから、別の嬉しさもあったと思います。歩き始めた息子の姿に目を細めながらも、東京を目指して表彰台に上がり続ける覚悟が見えました。
また、14位で女子4位になった田中・野田組も別々の大学でインカレを目指す活動を続けながら、強化合宿や海外遠征で力をつけて来ました。

420の選手たちには、今回のオリンピックウィークがどう見えたのでしょうか?
初めて見たナクラのフォイリングやいきなり追いついて来たフィン。スキフの49erやFXが多数で競り合うのも、RS:Xがパンピングしながらスタートしていくのも、満員のスロープも…。次回は420を最初に表彰してほしいなとか思いつつ、「いつか自分もオリンピック種目に乗りたい、目指したい」との夢を持ってくれたなら、EOWは大成功でしょう。

最初は種目に入っていなかったナクラですが、世界からの嘆願が届いて、スキフとエリアをシェアしての大会でした。
旧タイプを改造した艇が多かったですが、波やウネリにだいぶ慣れて来た様子です。4位になった村山・渡部組は体重がやや軽めなところもありますが、得意な風域で上位を走れました。

トップ選手がほぼ勢揃いしたレーザーラジアル級では葉山の広瀬選手が11位と大健闘でした。土居選手は混線の中から少しずつ順位を上げてくるようになり、「ヨット見たくない病」から脱却しつつあるようです。3レースしかできなかったので、調子が上がる前に大会が終ってしまったという印象でした。優勝したモレイラ選手は地球の裏側のウルグアイからの参加で、優勝は各段に嬉しかったそうです。

RS:X女子の大西選手は今日の3レースをオールトップでまとめました。
微風で中国選手にも漕ぎ勝つパンピングが武器で、見事な1日でした。総合2位で、中国勢の表彰台独占を阻止しました。

EOW2018は9月後半の開催となったため、多くの海外選手はオリンピック本場のコンディションとは異なると判断して参加しませんでした。数は想定したほど集まらなかったかもしれませんが、残ってレースしたのはトップ選手ばかりでした。それなりに、見応えあるレースができて、貴重なものとなりました。

W杯からの連続で、選手だけでなく運営メンバーもくたびれ果てたことと思います。大会を支えてくださったすべての皆様に感謝を申し上げ、御礼させていただきます。皆様、ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。

Report & Photo by 斎籐愛子

大会サイト(https://www.jeow.org/)

大会2日目

今大会では朝のブリーフィングでウェザーニューズの気象情報を解説してもらっています。今朝はその予報の「北東から東へ変化する風が14時には南へ回ってなくなる。早めのレースをしたほうがいい。日照があると風は速くなくなるから、内陸がいい天気にならないほうがいい」とのアドバイスどおり、弱い風ながらレースができる間に定刻でスタートしました。

昨日、陸で待つだけで終わったナクラでしたが、今日はウネリと軽風のコンディションながら、3レースを行い、最初のレースはフォイリングする場面もありました。
3レースを通じて日本勢が前を走ることも多く、第3レースでは飯束・畑山組がトップフィニッシュを果たしました。総合では村山・渡部組が7位、飯束組が9位、梶本・川田組が10位と続いています。
ナクラの上位陣は口を揃えて江の島の波を「Challenging!」と言います。「南が吹けば恐ろしいウネリと合わさって複雑だし、北が吹いても逆のウネリで押されて、スピードを落とさないようにバランスをとるのがたいへんだ」と、あるクルーがぼやいていました。

同じエリアをシェアしていた49erとFXは1レースしかできませんでした。
古谷・八山組と高橋・小泉組は軽風だと上位の中で戦えるので競り合っています。弱い風では我慢が肝心ですが、ナクラ同様、波の扱いが難しそうでした。プレッシャーがある場所を探してコースをとるのですが、今日は晴れ間が出ると風が落ち、雲が広がると少し北へ戻った方から風が入ってくるような状況でした。アップウインドで風を探すのはまだいいのですが、ダウンウインドが難しく、順位を落とさないようにするのが大変でした。昨日は潮に翻弄された原田・永松組でしたが、今日は風をよく見て走り、フィニッシュ間際の接戦をものにして2位で入りました。

葉山エリアとさがみエリアにまたがるようにレースをしていた470、420、フィンは2レースを行いました。
470は岡田・外薗組が3-1と安定したレースぶりでトップに立ちましたが、2位につけているオーストリアも1-5で3点差です。シフトもあるし、強弱もあるし、難しい海面ではありますが、それでもしっかり上位にいる選手たちの風を見る目には脱帽です。
女子1位の吉田・吉岡組は総合で7位につけています。
大学生の田中・野田組は2レース目でトップを走る時もあり、そのレースでは4位でフィニッシュしました。

420では地元の葉山チームが頑張りました。
江の島から出てレース海面に向かいますが、いつも練習している葉山の(かなり沖になりますが)、定置網の外側が上マークです。総合1位は光高校の玉山・高須賀組ですが、2位の青山・桑野組、3位の林・久保田組はともに葉山のチームです。上位は僅差です。3位タイも2艇いますが、今日はインナーのコースが少し距離をつめて短くなったため、420も長すぎないレースとなりました。

フィンは11艇の小フリートですが、3艇がスタートのUFDで失格になりました。
UFDだとスタートラインを出たかどうかがわからないため、しっかりラインを見て判断しなければならず、厳しいところです。
トップをいくオランダのニック・ハイナーは全レース1位という安定ぶりです。ハイナーは江の島で金メダルを狙うべく、淡々とエリアの特徴を観察しています。夏に北風が吹くこともあると知っているせいか、地道に経験を積み重ねていくアプローチです。

レーザー男子では南里選手がトップに立ちました。「前で入った選手2人がUFDでしたから、順位があがってトップになりました。明日もがんばります」(南里)

女子と男子がいっしょにレースとなったレーザーラジアルでは地元葉山の廣瀬選手がオリンピック選手たちに混ざって走り負けないレースをしました。オランダのマリット選手は先のW杯でオランダのラジアルの女子東京五輪代表に内定しました。もう、東京向けてのプログラムを考えています。

RS:X男子では軽風が得意なスイスのマテオ選手がトップに立ちました。小柄ながら、ヨットレースが上手で、風を拾ってのレースが好きなことが強みです。「江の島とは相性がいいみたい。RS:Xのエリアの運営は手際がよくて感謝しています」(マテオ)。スペインからスイス国籍へと帰化した選手です。

RS:X女子は軽風ですと中国の強さと選手層の厚さが出ています。
その中で、昨年から大きなジャンプアップを見せているイギリスのエマ・ウィルソン選手が上位に入ってきました。ユースからシニアへ上がり、フルタイムでセーリングをするようになってから、体力もついてトップレベルへと駆け上がってきました。東京五輪も意識しだしたようです。

レースが終わった後、陸ではウェザーニューズの内藤さんが黒い風船を飛ばして上空までの風の測定をしました。同じような光景を2000年シドニー五輪の前にウラーラーセーリングクラブでイギリスチームがやっているのを見ました。やっと日本のセーリングでも地道な作業でバックアップしてもらえるようになってきました。風を三次元で捉えて変化を予測する作業です。
24日は最終日。2レースを予定しています。

Report & Photo by 斎籐愛子

大会サイト(https://www.jeow.org/)

大会1日目

開催地:江の島・日本
日程:2018年9月21日~月24日

前日の予報では南西の強風だったのが、午前9時、江の島はちょうど秋雨前線が南下していく最中で、風が吹きませんでした。全クラスに回答旗が上がりしばし陸上待機。その後、北東からの風が少し入ってきた11時から、少しずつ海上へ出ました。

男女一緒の1グループでスタートした470と同じエリアの3組目でスタートしているフィンはなくなっていく風のなかで1レースを消化しましたが、2組目の420は途中までレースをしてキャンセルになりました。

風は北東、ウネリが南から入って右へシフトしていく中、船を走らせるのが難しいコンディションでした。470はアウターの2上がマーク移動となり、アップウインドのレグが半分くらいの長さにつめられ、弱くなった風の中でレースを完了することができました。1位はスウェーデンのアントン組、2位に磯崎組、3位に岡田組が続きました。吉田・吉岡組が8位で入り、女子のトップです。

フィン級は420よりも後からスタートしましたが、1上から追いつき、上下コースでフィニッシュできました。オランダのニック・ハイナーが後ろからの波の中で的確なアップウンドの走りでトップ。日本勢はアップウインドでは海外勢に食いついていくものの、ダウンウインドでの向かい波にうまく対応できず、順位を落としてしまいました。

420は2上を周り、サイドまでいったところでノーレースになりました。初めて見るフィンにぎょっとする場面もあったようですが、少ない艇数だったので、たいした混乱もなく、さばけました。

49erとFXは何とか1レースでき、男子は古谷・八山組が2位に入りました。女子は「スタート後にタックで逃げて、右へ行きましたが、マークに対してレイラインに足りないところでタックしたはずだったのに潮で押されてオーバーセールになり、しかも向かい潮でマークへ向かうという最悪なパターンになりました。明日はスタート頑張ります」(原田)というように、沖のコースでは南東へ向かって1ノット近い潮と南からの波、北東や東からの軽風に翻弄されてしまいました。

逗子エリアのレーザーとラジアルは北東の風でスタートしましたが、途中で風が東へ60度くらいシフトしてしまい、両クラスとも中止。やり直しとなりましたが、海上待機をしたもののレースはできずに終わりました。

他のエリアが苦労している間にRS:X男子は3レース、女子は2レースをこなしました。アジア大会の疲労が蓄積していた富澤選手でしたが、W杯が終わったあとに一息いれて今回は調子を取り戻してきました。上位陣の中で戦って7位です。女子は大西選手が軽風で5位につけました。

W杯に続いて、ウェザーニューズ社から毎朝現場でウエザーブリーフィングをしてくださいますが、今日は前線が南下した後に小さな低気圧ができてしまい、予報よりも北からの風がしっかり残ってしまいました。明日はどうなるのか、22日の予報が23日朝になると変わっているかもしれません。

しかしながら、どんな風が吹いても、難しいコンディションになればなるほど、顔ぶれは固まります。艇の上での動作、テクニックなど細かい点に至るまですべてにおいてトップチームは動きがアスリートで、バランスに対する神経の使い方、トリムの繊細さが違うように見えます。江の島オリンピックウィークは本物の動きを目に焼き付ける絶好のチャンスです。

23日は10時半スタート(49erとFXはナクラが終わった後)です。風が弱いもしれませんが、レースができることを祈るばかりです。

Report & Photo by 斎籐愛子

大会サイト(https://www.jeow.org/)