開催地:アルゼンチン・ブエノスアイレス
日程:2018年10月6日〜18日(13日間)
セーリング競技開催場所:Club Nautico San Isidro
参加競技数:32競技241種目/206カ国参加
日本選手団:24競技/選手91名・監督コーチ44名(総勢135名)

大会公式サイト
リザルト
206カ国が参加したYOG2018のセーリング競技会場 © Matias Capizzano / World Sailing

大会概要

今回で3回目となるユースオリンピック競技大会(YOG)は、ジャック・ロゲ前国際オリンピック委員会会長により発案されたスポーツと文化・教育を融合させた国際総合競技大会です。14歳〜18歳までを対象とした若い世代に、スポーツの本来の意義やオリンピズムを体感してもらうことを目的に国際オリンピック委員会が主催し、4年ごとに夏季大会と冬季大会が開催されています。

ブエノスアイレス2018は夏季大会であり、2020年には冬季大会がスイス・ローザンヌで開催され、次の夏季大会は2022年セネガルのダカールに決定し、アフリカでは初の開催となります。

YOGの競技数は南京大会での28競技からブエノスアイレス大会では32競技に増え、種目も222種目から241種目となり、大会規模が拡大しています。

開催国となったアルゼンチンは日本の国土の7倍を持つ大きな国でサッカーとタンゴで知られていますが、今大会では多くのボランティアスタッフの活躍が素晴らしく、主催国のイメージは大変よいものでした。

開会式はブエノスアイレス市街中心地の公道を封鎖して行われました。レース前日とあって日本のセーリング選手は短時間しか参加できませんでしたが、オリンピックを彷彿とさせる迫力のある内容で、ボランティアスタッフを含め関わる人々すべてが楽しんでいること感じられる素晴らしいセレモニーでした。

開会式の様子(写真:OIS/IOC)
開会式の様子(写真:OIS/IOC)
開会式の様子(写真:OIS/IOC)

Athletes Education Programme

YOGはスポーツの祭典というだけではなく、文化・教育プログラム(Athletes Education Programme)が特徴的な大会です。

若手アスリートの将来におけるスポーツキャリアと個々のエリートアスリートへの発展に向けて対話形式のワークショップが組まれています。選手が自身のキャリアを切り拓くために必要なツールと知識を身につけることを目的とした支援プログラムであり、大会組織委員会、WADA、国際連合、IOC、およびその他の専門家によって行われ、ほとんどのプログラムは選手が生活する選手村内で行われていました。大会期間を通して毎日提供されていたプログラムには下記のようなものがありました。

◉Athletes 365: クリーンで安全な競技の推進(アンチ・ドーピング、ハラスメント等)
◉Performance Accelerator:効率良い競技練習のための最適化について専門家からのアドバイス
◉Media Lab:アスリートとしてソーシャルメディアを最大限に活用する方法を学ぶ
◉IF Focus Day: IFアスリート/コーチとのスポーツに特化したトークセッション
◉Chat with Champion:オリンピアン/アスリートロールモデルとのトークセッション
で選手はプログラムで得られる知識やグッズ、現場での交流を楽しみながら個々の資質を向上させるために参加し、ウインドサーフィンで今大会に参加した日本の池田拓海も他競技選手と交流しながらプログラムを経験しました。

セーリング競技のIF Focus Dayにはリオ五輪のNacra17級で金メダルを獲得したアルゼンチンのサンティアゴ・ランへ、セシリア・カランサ・サローリ選手が登壇し、レースに向けてのアドバイスなどをレクチャーしていました。

セーリング競技

セーリング競技は選手村からバスで約2時間の場所にあるClub Nautico San Isidroで開催され、今大会では新しく下記の5種目が行われました。
これまでのYOGではディンギーのシングルハンド(Byte)とウインドサーフィン(Techno293級)で行われていましたが、今大会からは参加資格の年齢がU19に変更されシングルハンドディンギーがなくなり、ウインドサーフィンはセイルサイズが大きくなり、カイトとマルチハルが新たに加わりました。

◆ウインドサーフィン男女(Techno293+級) 男女各24艇
競技形式:フリートレース、ダウンスラロームレース(風速20ノット前後で実施)
◆カイトボーディング男女(IKA Twin-Tip Racing級) 男女各12艇
競技形式:ダウンスラロームレース(風速12ノット以上で障害物あり)
◆マルチハル男女混合(2人乗り:Nacra15級) 14艇
競技形式:フリートレース
*競技用具は大会組織委員会から支給(カイト種目を除く)。

ウインドサーフィン/Techno293+級

各大陸予選でYOG参加国枠を獲得した24カ国の代表選手が出場、日本は2月にシンガポールで開催されたアジア予選で国枠を獲得した池田拓海(鎌倉高等学校)が出場しました。

前回大会ではセイルサイズが7.8でしたが今大会では年齢制限変更に伴い8.5を使用するTechno293+級に変更されました。競技形式は通常のフリートレースに加え、今大会では20ノット前後の風域で3ジャイブコースのダウンスラロームレースが組み込まれ、Techno293+級では初めてのスラロームレースがYOGで1レース成立しました。
4ヒートに分かれての勝ち上がり戦は合計で9ヒートを行い、普段と違うレース形式でエキサイティングである反面、1レースを成立させるのに約1時間(男女で計2時間)がかかり一番良い風の中でレースを待っている時間が長く、今大会のレース環境(レース海面が遠いこと)などを考慮すると効率良いレースが望まれましたがEvent Formatに従って競技は行われました。
また、レース海面がいくつもの川が大きなラプラタ川に流れ出す河口に位置していたため、レース海面にはとても速い潮流が流れていました。大会期間を通して前半は3〜4m/sの微風、中盤から後半にかけては風の強い日もありながら持続性はなく4〜9m/s。風の振れと潮流に対する戦略・戦術が重要で、少しのミスで順位が変動する難しいレースがつづきました。

6日間の競技期間で13レースを実施(フリートレース/11レース、スラロームレース/1.5レース)、途中までとなったスラロームレースを除き12レースが成立し、池田は総合8位で大会を終えました。得意なコンディションでは海外大会で初めてとなるトップフィニッシュを果たすなどこれまでの成果も感じられましたが、新たな課題も多く見つかる大会でした。

Techno293+級が採用されたウインドサーフィン © Matias Capizzano / World Sailing
日本からは池田拓海(鎌倉高等学校)が出場 © Matias Capizzano / World Sailing

カイトボーディング/TT:R級

カイトボーディング競技は初めて五輪競技に入り、YOGではIKA Twin Tip Racing級(TT:R級)が採用されました。

規定により6m/s以上の風速では障害物があり2回のジャンプと3回のジャイブをするダウンスラロームレース、弱風では障害物は取り除かれます。今大会では7レースが成立しましたが、新しい競技としての課題は多く、競技会場の立地や風向に大きく進行を左右されました。

3枚の異なるサイズのカイトと1枚のボード登録が許されますが、今大会では出艇帰着のランプエリアが狭いことや風向によって出艇が難しいことなどで容易にカイトチェンジに戻れないこと、また競技海面が遠く一度出たら容易に戻れないため、風速が変わっても1枚のカイトで競技を続けなければならない状況となり、選手にとってはハードな大会だったと思います。日本は国枠予選に和歌山の唐門選手が出場しましたが12カ国の出場枠には届きませんでした。
カイトボーディング競技は2024年パリオリンピックの正式種目としてFormula Foiling級の採用が決定しています。

ドミニカ共和国の選手(赤いヘルメット)が話題をさらった © Matias Capizzano / World Sailing
これまでセーリングシーンにはほとんど登場しなかったドミニカ共和国の選手が優勝 © Matias Capizzano / World Sailing

マルチハル/Nacra15級

マルチハル男女混合競技のNacra15級は、2020年東京オリンピックで採用されているNacra17級と見た目もほぼ同じユース規格の艇で、今大会では国枠を獲得した14カ国が出場しましたが、日本は参加していません。スピードの速いこの艇に乗るには勇気と体力がいると思いますが、ユースの間に乗ることでNacra17級への移行も容易になり、日本からも挑戦者が出てほしい種目です。出場している選手は各国の国旗の入ったヘルメットを装着して挑んでいました。

日本からも選手が出てほしいNacra15 © Matias Capizzano / World Sailing

最後に

今大会の日本選手団は混合競技も含めると世界第2位の競技成績を収め、前回大会(南京)の10競技26個のメダル獲得を大きく上回り、混合種目でのメダル獲得を合わせたメダル総数は13競技44個(金:16個、銀:14個、銅:14個)となりました。セーリングはウインドサーフィン種目のみ参加しましたが、8位入賞で大会を終えました。

3週間に及ぶ長い遠征期間でしたが体調を崩すこともなく、日本の裏側でしっかりと戦い今後につながるレースができたと思います。期間中の応援をいただきありがとうございました。

Report by 小菅寧子

セーリング競技出場選手:ウインドサーフィン種目(24艇出場)
Techno293PLUS級 男子8位 池田拓海(神奈川県立鎌倉高等学校)

大会スケジュールと選手の動き
9月30日 結団式(グランドプリンスホテル新高輪)/Building UP Team Japan
10月1日 日本選手団出発
10月6日 開会式/レジストレーション 計測
10月7日 10:00〜Team Leader’s Meeting 12:00〜 レース
10月8日 10:00〜Team Leader’s Meeting 12:00〜 レース
10月9日 10:00〜Team Leader’s Meeting 12:00〜 レース
10月10日 10:00〜Team Leader’s Meeting 12:00〜 レース
10月11日 10:00〜Team Leader’s Meeting 12:00〜 レース
10月12日 10:00〜Team Leader’s Meeting 12:00〜 Finalレース
10月13日〜 文化・教育プログラム参加
10月18日 閉会式/帰国準備
10月19日 解団式/日本選手団帰国
10月21日 成田到着/解散