2020年夏に代表選手の合同練習を江の島で行った後、春から秋へ延期されていた海外での大会を目指しましたが、新型コロナ感染が第2波、第3波となり、延期や中止となってしまいした。国内はまだ落ち着いていたので10月と11月はクラス別全日本選手権があり、選手たちは久しぶりに緊張感をもってレースに臨みました。その後は沖縄合宿や江の島での練習をへて、やっと再開された世界選手権、欧州選手権への遠征が始まりました。2021年2月下旬における、五輪内定選手の近況をお伝えします。

【470男女】

470男女は江の島での練習時に大学生やレース運営チームとコラボして、江の島や逗子、鎌倉エリアを中心に海上集合でレース練習を繰り返しました。全日本では岡田奎樹・外薗潤平組が優勝、吉田愛・吉岡美帆組が4位(女子優勝)。男女ペアがメダルレースに2組、大学生チームが2組参加し、コラボによって次世代選手たちのレベルアップにもつながりました。
全日本の後は沖縄・与那原と同・宜野湾に場所を移し、特に強風でのレベルアップを目標に課題に取り組みました。岡田・外薗組はその成果を確認するため、3月5日からポルトガルのビラモーラで開催される世界選手権へ、1年ぶりの海外遠征に出発しました。吉田・吉岡組は遠征はせず、レベルの高い男子チームを相手に、ひたすら国内で練習を続けています。

470men
@JSAF
470men
@JSAF

【レーザー&ラジアル】

レーザー男子の南里研二、ラジアル女子の土居愛実選手は11月に三重で全日本に参加。その後は江の島の練習をへて、年末から沖縄・与那原で合宿を続けています。
男子は僅差で全日本チャンプになった鈴木義弘選手がトレーニングパートナーで、南里選手と2艇での特訓。女子の土居はラジアル全日本チャンプで強風が速い黒田治渡選手が相手でしたが、高校生の黒田選手がずっと沖縄にいられるわけではなく、一人で走る時間が増えてしまい、飯島洋一コーチがセーリングパートナーで、頑張って練習しています。オーストラリアやクロアチアへの海外遠征はやめて沖縄を長くしましたが、4月のイエール大会の参加を考えています。

470men
@JSAF
470men
@JSAF

【RS:X男女】

RS:X女子の須長由季選手は11月にパリからの新しい種目となるiQFoil全日本に参加。その後は伊勢田愛選手と葉山、沖縄の宜野湾で練習を続け、3月5日からポルトガル・ビラモーラでの欧州選手権に参加します。RS:X級は東京が最後になるため、次世代選手たちはみなフォイリングへ移ってしまいました。まったく別種目になるので、そこに練習相手を求めるのは難しく、須長選手はRS:Xで大学生男子の選手にもセーリングパートナーをお願いしてきました。

RS:Xmen
@Kazushige Nakajima
RS:Xwomen
@Kazushige Nakajima

【フィン】

フィン級は代表選考になっていたスペイン・パルマでのソフィア女王杯が10月に延期となり、最終選考は5月に国内で行うことになりました。
緊急事態宣言が出る前にスペインに遠征した藤村裕二選手はバレンシアをベースに練習をしています。国内に残った國米創、西尾勇樹、瀬川和正の3選手は和歌山や江の島などで、複数艇で走るレース練習をする時間を設けてレベルアップに取り組んでいます。代表選考は4艇で行うことになりますから、選考で使う艇を仕上げることにも時間を費やしています。

Finn
@JSAF

【ナクラ17】

ナクラ17の飯束潮吹・畑山絵里組も国内に練習相手がいないことから、スペインのカナリー諸島に集まる海外のナクラの選手たちとの練習の場へ遠征しました。ランサローテ島では国際レースも開催するようになり、3月末には欧州・アフリカの東京大会の国枠をかけたインターナショナルレガッタも開催されます。飯束組はその後イエール大会にも参加をします。

Finn
@Matias Buhler
Finn
@Matias Buhler

【49erFX】

49er FX女子の山崎アンナ・髙野芹奈組は葉山で単独練習を繰り返していましたが、1月から沖縄・座間味で男子選手やスキフ合宿でFXを練習してきた次世代選手達と合宿練習を繰り返しました。レースから遠ざかっているので、3月末から欧州遠征でナクラと同様にランサローテとイエールへ行きたいということで、今はその準備中です。

49erFX
@Kazushige Nakajima

【49er】

49er男子の髙橋稜(レオ)・小泉維吹組はもともとオークランド在住なので、地元のヨットクラブでニュージーランドチームと練習しています。クラブレースやニュージーランド選手権でもトップ3艇で争い、アメリカズカップが忙しくなる前は金メダリストのピーター&ブレア組も49erに乗っており、彼らとレースで優勝争いもするようになりました。
ニュージーランドチームと練習するようになってからは目覚ましい進歩を見せており、昨年のケガからはすっかり回復し、マラソンにもチャレンジしました。3月でアメリカズカップが終わりますから、その後もニュージーランドチームとうまく調整ができていけたらと思うところです。

江の島はディンギーヤードから既存艇が移動して、残りが少なくなってきました。建造途中のまま止まっていたテントや仮設ケーブルなどの工事が少しずつ再開されるようになりました。先の見えない状況は全世界で同様ですが、トンネルの先の五輪の灯をめざし、手探り状態で練習や大会参加を続けていくことになります。
スポーツ選手の大会参加の特例で渡航できた選手たちが体調を崩すことなく練習の成果を試してこられるよう祈るばかりです。新型コロナに勝てるのかは誰にもわかりませんが、いまはとにかくその灯を目指して進んでいきたいと思います。(齋藤愛子/JSAF オリンピック強化委員会統括補佐・情報科学責任者・ロジスティック)

49er
@JSAF
49er
@JSAF

Report by 齋藤愛子/JSAF オリンピック強化委員会統括補佐・情報科学責任者・ロジスティック