最終日

3月13日。
470級は昨日がフリートレースの最終日で、今日はトップ10によるメダルレースのみ。RS:Xはトップ10によるメダルレース、10位以下のフリートレースが行われました。
レースコンデションは北寄りで午前中は良い風が吹いていましたが、メダルレースの頃には風が弱くなり、典型的な「Vilamouraの風」、強弱とシフトの大きいレースになりました。
本日が両クラスの最終日です、大会期間中に応援していただいた皆様に感謝すると共に、オリンピックで活躍し、恩返しをしたいと思います。

470

男子2021年世界チャンピオンの座を獲得したのは、スウェーデンのAnton DAHL、BERGFredrik BERGSTRÖM。これまでの世界選手権では最終日レースまで1位につけながら、金メダルを何度も逃したチームであり悲願の優勝です。
銀メダルを獲得したのは、地元ポルトガル若手のDiogo COSTA、Pedro COSTA兄弟。東京オリンピック出場枠のかかった本大会で堂々の銀メダルは東京オリンピック出場枠をかけた6カ国の中で、群を抜く結果でした。
銅メダルにはここ数年、でに安定した成績を残しているスペインのJordi XAMMAR、Nicolas RODRIGUEZでした。

女子で金メダルを獲得したのはスペインのSilvia MAS DEPARESP、atricia CANTERO REINA。これまでの大会でも安定した成績を残しているチームです。
銀メダルはオランダのAfrodite ZEGERS、Lobke BERKHOUTで、このチームでの表彰台は初となります。
銅メダルはイタリアのElena BERTA、Bianca CARUSO。彼女たちも世界選手権初のメダル獲得になります。
今回の大会は特別なコンディションだったと思います。
メダル候補の選手が序盤で苦戦し、挽回するも追いつかずメダルレースにさえ進出できない。セオリーや戦術が役に立たない、風を見ていても、見えていたブローがあっという間に消えてしまったり、選手を悩ませる大会でした。
それでも、大会に出場したことで、チームのコミュニケーションのあり方や課題が明確になったことは大きな収穫でした。

RS:X

男子の2021年ヨーロッパ選手権を制したのは、オランダのKiran BADLOE。銀メダルがイタリアのMattia CAMBONI。銅メダルはイスラエルのOfek ELIMELECH。
女子は金メダルがフランスのCharline PICON。銀メダルがオランダのLilian DE GEUS。銅メダルはZofia NOCETI KLEPACKAでした。
東京オリンピックを最後にオリンピッククラスから外れてしまうRS:Xクラスでありながら、男子、女子共に経験の長い選手が上位に食い込み、組織立って強化を継続している国が強い印象があります。
もう一つは道具です。どのクラスでもシビアに確認をしていますが、マスト、セール等々、ワンデザイン種目でありながら道具の選択でスピードが変わります。オリンピックで使う道具選びは妥協することなく選別する必要があります。

RS:X Day5【選手コメント】

富澤:「レース最終日は、プレーニングコンディションとなり、良いスピード感を持ってスタートすることができました。今大会はコンディションによってスピードの差が大きく、成績に上下がありました。今後、同じミスを繰り返さないように、しっかりと整理をし、次回の世界選手権に向けて準備していこうと思います」

須長:「終始良いところのないレースしかできなかった今大会でしたが、良い経験になりました。五輪本番までには必ず仕上げたいと思います」

伊勢田:「今日はラスト1本、最後は思いっきりやろうと決めていました。最初は景色が良かったけれど、後半には反対海面が良くなり、1上がすごいキツイ順位でした。昨日も同じコンディションでしたが、プレーニングすると決めて、風を取りに行こうと思っていたので挑戦することができ、挽回することができました。昨日や今までのレースを活かし、思いっきりレースができて楽しかったです」

470級 大会サイト(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race) 470級 成績(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race-resultsall) RS:X級 大会サイト(https://www.rsxclass.org/europeans2021/) RS:X級 成績(http://vilamourasailing.sailti.com/en/default/races/race-resultsall/text/2021-rs-x-windsurfing-european-and-youth-european-championships-open-trophy-en)
470男子優勝:スウェーデンのAnton DAHLBERGFredrik BERGSTRÖM
470女子優勝:スペインのSilvia MAS DEPARESPatricia CANTERO REINA

Report by 中村健次

470 Day5 / RS:X Day4

3月12日、出艇は定刻どおりでしたが、レースエリアの風が安定せず470級はさらに沖にエリアを移しました。ちょうど470大会初日に近い状況でしたが、風の入り方は一方的な左海面有利ではなく、ブローを上手くつないで上マークを目指したチームが上位に入ってきました。470のコースセットですと陸からの風で北西335度近辺でした。
12日で470級はフリートレースが終わりました。岡田・外薗は総合11位となり、メダルレースへの進出は逃しました。

RS:Xクラスの海面もほぼ同じ風向でしたが、470の海面よりも岸に近かったこともあり、強弱の激しいガスティなコンディションでした。強いブローではプレーニング、ブローが抜けてしまうとダガーを入れるコンディションだったこともあり、通常よりも上位グループと下位グループの差が広がり、コース取りの要素も大きい1日でした。
今大会スピードで競り負けるシチュエーションが多かった富澤選手も、最後のレースは、スタートから良い風の中を走り続け5位でフィニッシュ。満足なスピードが出せない中でも、どこにチャンスを見つけてレースをするかの重要さを実感するレースでした。RS:Xは、明日大会最終日は、フリートレースも11位以下の選手により1レースが実施される予定です。

470【選手コメント】

岡田・外薗:「今日は陸風の風の強弱、シフト幅も大きい海面で難しく、順位を落とす結果となってしまいました。しかし、海外の選手とレースをすることができて多くのことを学び、レベルの高い競い合いを思い出し、課題を見つけることができました。その課題を帰国して改善していきます。」

RS:X【選手コメント】

富澤:「レース4日目はオフショアのコンディションになりました。1、2レース目は昨日と同じような風速で、スピードが伸びず、さらにコースも外してしまい苦しみました。
3レース目はコンディションが変わりスピードの伸びを感じ、周囲を確認する余裕ができ、落ち着いたレースをすることができました」

須長:「今日は大きくシフトを外してしまい、なかなか上マークへ辿りつきませんでした…。自分の考えとシフトが噛み合わず、走っていてとても辛かったです。何が悪かったのかしっかり反省して最後1レース頑張ります」

伊勢田:「今日は風がシフティー、ガスティ過ぎて、どっちの海面が良いか判断がとても難しかったです。その場で良くても次は反対から来ると結局後ろになってしまったりで、今の風で次にどうつなげるか、走りを考えるべきだったと思いました。今日はまくられる場面が多かったので悔しいです。明日ラスト1本、気持ちよく終われるように頑張ります!」

470級 大会サイト(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race) 470級 成績(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race-resultsall) RS:X級 大会サイト(https://www.rsxclass.org/europeans2021/)
レース間での水分栄養補給をしながら、修正点を探る岡田・外薗
苦戦しつつも、10位前後で上マークを回航する岡田・外薗
今回のレースリーダー(SWE)と競り合う岡田・外薗
RS:X女子、本日のスタート
富澤、最大限に体を外に出して、少しでも速く走る姿勢を保つ

Report & Photo by 中村健次

470トップテン争いの上マーク回航
470、10ノット近辺でのパンピングダウンウインド、手を抜くとあっという間において行かれます。
RS:X男子、レース後のNickコーチとのディスカッション
470は1時間の延期、陸上でのAP旗+数字旗1+class旗
RS:X女子のスタート
RS:X女子は10ノットの風速ではアップウインド、ダウンウインド共にパンピングコンディションになります。

Report & Photo by 中村健次

3月10日は天気予報どおり、弱い海風(南寄り)の5~9ノット、波なしのコンディションで470級が2レース、RS:X級が3レース行われました。
最初のレースは風向230度くらいでしたが、少しずつ風軸が変わり、最後のレースの頃は210度に変化しました。その中でも1~2ノットくらいの強さの差や10度程度のシフトがあり、その少しの差で順位が変わり、昨日までの陸風とは違う環境でのレースとなりました。

470 Day3

岡田・外薗は得意風域でのレースでしたが、初日(day1)での遅れや失敗はできないという考えが優先されたことで、少し受け身のレースをした感がありました。
それでも、今日は7位、9位と順位をまとめ全体で14位。最終日のメダルレース進出へ向けて得点をつめてきています。予選シリーズはあと4レースですから、1レース1レースに集中して、メダルレースに残って1レースでも多くレースすることを目的としています。

【選手コメント】

岡田:「少しずつレースの感覚を取り戻すことができ、自分の思う風の捉えてもできるようになってきました。引き続きしっかりとレースを組み立てることができるように頑張ります」

外薗:「本日も海からの軽風で2レースを消化し、苦しい場面もありましたが、なんとか踏ん張ることができました。徐々に接戦でも自分たちのボートと対相手、風に対しての正確性が上がってきていると思います。明日からも取りこぼしがないようにやっていきます」

RS:X Day2

シーブリーズで470のレースエリアと同様の海況でしたが、RS:X級にとってはパンピングコンディションでの3レースとなり、フィジカルのタフさも求められる1日でした。
今日は成績から視れば悪いようにも思えますが、ハイレベルな集団の中でのスタートやマーク際での位置取りが勝敗を決めるシチュエーションが多く、日本国内での1人での練習ではわらなかったことが明確になり、良い振り返りができた1日でした。
大会に出場して気づことが一番大きな成果です。明日からの後半戦は、これまでの振り返りをいかに修正して形にできるか、五輪本番までの限られた時間の中で、早い修正能力も必要とされるところです。

【選手コメント】

富澤:「2日目は安定したオンショアの微風コンディションになりました。スタートは成功と失敗がありましたが、どちらも同じような成績でのフィニッシュでした。
特に第一マークまでの走りが悪いので、改善していこうと思います。

須長:「今日は自分の一番苦しい風で、スピードも遅く辛いレースでした。少数精鋭でレベルも高いので、残り3日頑張ります」

伊勢田:「今日は漕ぎ漕ぎレースで、漕いでもなかなか前へ出られない。レベルが高いと実感しました。海面は思っているより安定していなかったので、自分のコースを信じて全力でやるのみでした。明日も頑張ります」

470級 大会サイト(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race) 470級 成績(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race-resultsall) RS:X級 大会サイト(https://www.rsxclass.org/europeans2021/)
岡田・外薗組
岡田・外薗組
470男子レース前の準備を終え、日焼け対策
470男子R6。6番手からスタートする岡田・外薗組
470男子R7。トップ争い大混戦で下マークに向かう
RS:X男子。パンピングコンディションでの上マーク回航
RS:X男子。ダウンウインドもパンピングコンディション
RS:X女子R2のスタート。日本の須長、伊勢田は上側からのスタート

Report & Photo by 中村健次

470 Day2

大会2日目は予定の2レースを行いました。
陸からの風で最大で40度以上もの風向変化、加えて1レース目は平均12ノット±6ノット、波は小さいのですが、とにかく風をしっかり捉えることが難しい状況でした。
2レース目は7ノット±4ノット、風のないところに入ってしまうとアッという間に追い抜かれたり、離されたりするレース海面でした。

今日の1レース目、岡田・外薗組はシングル後半でレースの流れに乗りそうでしたが、競っている5チームほどが風のないスポットにハマり順位を少し落としてしまいますが、中盤前でフィニッシュ、踏ん張ります。

続く2レース目はスタートでは出遅れますが、レースの組み立てをさらに修正、レースの流れに沿いつつも、チャンスを窺うポジションに艇を持っていきました。その読みが良く、12番手からフィニッシュは5位まで順位を上げました。初日の遅れを取り戻しつつあります。

【選手コメント】

岡田・外薗:「約1年ぶりの国際レースに参加できてとてもうれしいです。レベルの高い大会になると当たり前ですが一つの判断ミス、スピードロス、動作ミスで順位を落としてしまいます。そこの部分でシビアさが鈍っているので、なんとか取り戻して後半戦は順位を上げていきたいです」

RS:X Day1

男女共に本日が初日、3レースを予定していました。
しかし、1レースのみ成立、それ以降はスタートを4、5回するものの、途中、風がなくなったり、風が大きく変化してしまったりでレースキャンセルとなりました。

470同様に、数メートル位置関係が違うだけで展開が変わり、フリート全体の順位変動が大きく、判断の難しい局面の多いレース内容でした。

日本選手は、男女共に1年ぶりの国際レース、さらには、この1年国内で孤立した環境で練習してきたこともあり、スタートの混戦の中での駆け引き、レース中の他艇に対する走りの切り替え等、今回の遠征でどれだけ思いだすきっかけを作れるか、現時点でできていること、できていないこと、忘れていることを整理するのがテーマとなります。

本日は1レースのみでしたが、それぞれ成果と課題が確認できた初日となりました。

【選手コメント】

富澤:「レース初日はオフショアで安定しないコンディションでした。
1レース目はプレーニングとダガーを使い分ける最も難しいコンディションで、さらに風の変化も大きく、順位の入れ替わりが激しいレースでした。
その中でも冷静な判断ができ、順位を徐々に上げてゴールすることができました。
その後は風が安定せずレースが行われませんでしたが、積極的なレース運営で、何回もスタートを繰り返しました。
1年振りの国際大会のため、より多くの実戦を経験をしてレース感を取り戻したいという思いでEUに来たので、大変貴重な1日でした」

須長:「1上も2上も最終的なシフトを大きく外して逆へ行ってしまい、苦しい展開でした。キャンセルのレースはトップだったのにそれもまた運……気を取り直して明日からまた頑張ります」

伊勢田:「久しぶりのレースで海外選手のレベルにハラハラして挑みました。今日は風が安定しないコンディションで自分にもチャンスがある。そう思って、冷静にレースができたと思います! 明日からも頑張ります!」

470級 大会サイト(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race) 470級 成績(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race-resultsall) RS:X級 大会サイト(https://www.rsxclass.org/europeans2021/)
470男子2日目、レース前の準備
470男子、周りをよく見て、コースを考える
day2、470 1レース目接戦の上マーク回航
上側からスタートを決める須長選手
久々の国際レース、気合が入ります!

Report & Photo by 中村健次

470級day1が始まりました。
北西系で岸の影響を受ける風向、風速は10~16ノット。やや後ろからウネリを伴う波の状態で、風の強弱が激しい中で3レースが行われました。

1レース目は上側(スタート運営戦側)有利の風で岡田・外薗チームはスタートライン有利サイドから良いスタートを決めますが、岡田・外薗の上下4艇がUFD(早過ぎるスタートで失格)となりました。レース展開としては、岡田・外薗は風の変化に合わせ1マークを10位くらいで回航、その後、マークを周回するごとに順位を上げ6位フィニッシュを果たし、まずまずの入りでした。
初日のレース全体の流れとしては、左海面が有利になっており、3レースの中の6回のアップウインドの内の5回は左側に強い風があり、フリートを支配すると言った状況でした。

第2、第3レースでは岡田・外薗はスタートの競り合いに負け、スタート直後に右海面にコースを取らざるを得ない状況になりました。一度、右側に行くと左側に行きにくい状況になり、レース展開を変えることが難しくなったように思えました。
過去のオリンピックなどでも、メダリストのような上位選手であっても艇間だけで左側集団(艇)にチャンスをつくる下受け展開で失敗し、順位を上げる事ができなかった場面も多くみられたこともあります。

1年ぶりの国際大会となった本大会、微妙な駆け引きなど我々コーチが見えない部分での調整が必要なのだと初日を終えて思いました。選手の感じるNGな箇所を修正して、明日につなげたいと思います。

明日はRS:X級もday1になります。
引き続きレポートを発信してまいりますので、応援のほどよろしくお願いいたします。

470級 大会サイト(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race) 470級 成績(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race-resultsall) RS:X級 大会サイト(https://www.rsxclass.org/europeans2021/)
定刻通りの出艇
470第1レースのスタート。残念なことにUFD
第1レース上マーク回航(10位回航)
第1レースUFD(残念な表示)
接戦の下マーク回航(ESP44は初日のTotalTOPチーム)

Report & Photo by 中村健次

開催地:Portugal・Vilamoura(首都リスボンより約250キロ南下した観光地)
470級大会日時:2021年3月5日~13日(8日からレース開始)
RS:X級大会日時:2021年3月7日~13日(9日からレース開始)

参加者:
470級男子 岡田奎樹・外薗潤平(トヨタ自動車東日本、九州旅客鉄道)
RS:X級男子 富澤慎(トヨタ自動車東日本)
RS:X級女子 須長由季(ミキハウス)、伊勢田愛(鳥取県セーリング連盟)

コーチ: 関一人・石川裕也・ニック・デンプシー・小菅寧子・NF中村健次

470級 大会サイト(https://2021worlds.470.org/en/default/races/race) RS:X級 大会サイト(https://www.rsxclass.org/europeans2021/)

2021年470級世界選手権および、RS:X級ヨーロッパ選手権が開催されます。
世界的なCovid-19感染の影響により多くの国際大会が中止または延期される中、地元ポルトガルや国際クラス協会の多大なる努力と準備のおかげで本大会が開催されます。
日本からの参加者は、入念な情報収集を行い、出入国の書類を揃え、本大会に出場する決定をしました。出国前にはPCR検査と抗原検査も行い、移動途中では検温や書類の提出など今までとは全く違う環境での海外遠征となりました。
今大会は、昨春の世界的なパンデミックにより遠征ができなくなり、日本での練習のみを余儀なくされた選手たちが、日本国内でしっかり取り組んできた練習の成果を確認し、海外チームと比較しさらなる課題を見つけ、東京オリンピックまでにできるこを今一度、再確認する大会でもあります。
470級は8日から、RS:X級は9日からレースが始まりますので、大会レポートをお送りしていきますので、応援よろしくお願いいたします。

Report & Photo by 中村健次

470men
ハーバー風景、470とRS:Xクラスお同時開催
470men
470計測(蜜を避けるために余裕あるスペースと日程の確保)
470men
470男子岡田選手
470men
470男子外薗選手
470men
470男子東京代表岡田外薗組、練習前の準備
470men
RS:X男子東京代表 富澤選手、海上練習を終えて
470men
RS:X女子東京代表 須長選手
470men
RS:X女子で参加の伊勢田
470men
コロナ対策、オンラインでのノーティスボード