期間:スキフ 2021年10月9日(土)~10月12日(火)
開催地:和歌山ナショナルトレーニングセンター(和歌山セーリングセンター)

第5回 第一期NF_HOPE育成プログラムは、新規加入選手3名が加わり、総勢12名での開催となりました。新型コロナ対策も引き続き行い、選手、スタッフ全員のPCR検査、プログラム期間中の毎朝の体温、体調チェック、抗原検査を実施するなど徹底した感染防止対策の中でプログラムを行いました。

今回は新たにメンタル講習、JADAアンチ・ドーピング講習を取り入れ、パフォーマンス発揮のための自己分析やドーピングについての基礎知識を学びました。

プログラムの内容は下記のとおりです。
① 朝のウォーミングアップ
② 海上練習
③ ECC英会話講習
④ インティグリティ
⑤ セーリング技術講習
⑥ 栄養講習
⑦ ルール講習
⑧ 気象講習
⑨ メンタル講習
⑩ JADAアンチ・ドーピング講習
・ フィジカルトレーニング&フィードバック
その他 プレゼンテーション

■プログラムの内容
① 朝のウォーミングアップ

▲毎朝、体温、体調、体重をチェックし選手の体調を確認、軽いランニングとラジオ体操で体を目覚めさせ1日が始まります

② 海上練習

▲海上練習の様子
▲コーチング中のHOPE育成選手
▲帰着の様子

海上練習ではボートハンドリング、マークラウンディング、ヒールバランスの他に、全艇でのスピード練習を新たに取り入れ、コンビネーションの確認と、コミュニケーションによるズレを海上でその都度修正し、レベルアップを図りました。プログラムを重ねるごとに選手たちは成長し、レース練習では接戦の場面も多くなりました。フィニッシュ後のコーチとのコミュニケーションで、自分自身の課題やチームの課題などビジョンを明確に持ち、積極的にチーム内でコミュニケーションを取る姿は、プログラムで求めていた形に大きく近づいた成果とも言えます。引続きベーシックプログラムの指導を行っていきます。

③ ECC英会話 講習

今回、新たにプログラム全日程(3日間)の夜に各自の部屋で講習するスタイルを取り入れました。選手たちはプライベートな空間の中で、各講師の先生と英語のみを使って講習を受けました。日本語を使わない講習は日常では体験できないとても濃い時間だったようで、選手たちは大いに満足していました。今後もプログラムの重点強化として継続していきます。

④ インティグリティ 講師:前園昇先生

前回の講習を受けていない選手のほとんどが「インティグリティ(integrity)」という言葉を知らない選手ばかりで、講習を通じてその意味を理解し、アスリートとしてあるべき姿を学ぶことができました。「integrity=誠実、真摯、高潔」という言葉の中に様々な意味合いが込められていることが分かり、スポーツを熱心にやっている中でスポーツを楽しみ、相手やルールを尊重することの大切さを学び、選手たちは今から迎えるであろう晴れ舞台に上がるためにインティグリティの意識を持ち、日々行動することを誓いました。

⑤ セーリング技術講習 講師:鹿取正信先生(株式会社ノースセールジャパン)

今回は新規加入選手と前回参加できなかった選手が多かったこともあり、復習を兼ねてセールの役割やセールトリム、ヒールの影響など、これまでの総集編として講習を行っていただきました。日頃のセーリング練習の中ではなかなか学べない基礎的な知識を競技クラスごとに説明いただき、自分が現在乗っている競技クラスに照らし合わせて考えることができ、知識の向上が図れました。セーリングの基礎理論を学ぶことで海上でのコーチとの会話もレベルが上がり、素早いコミュニケーションで改善が図れるようになったことは大きな成果です。今後もプログラムの中で継続して取り組んでいきます。

⑥ 栄養講習 講師:武田哲子先生

▲講習内容の一部
▲講習風景(スキャンコードでのテスト)

今回の栄養講習では「体重コントロール(減量)」に関する講習を行っていただきました。選手の多くは目標の大会を目指して減量や増量の調整を行なっていることは少なくありません。講習の中では正しい減量方法、具体的な食事調整、減量成果に影響する要因、体脂肪量の計算や必要なエネルギー量など詳しく説明をいただきました。講習の最後にはスキャンコードで確認テストをして講習内容の振返りを行い、知識の向上を図りました。選手たちが増量や減量を行わなければならない時に直面した場合、この講習を生かして無理のない正しい方法で体重コントロールを行い、目指すべき目標を達成してほしいと思います。

⑦ ルール講習 講師:吉本昌弘先生

▲選手によるグループ模擬審問風景
▲グループごとの発表風景

セーリング競技では、ルールをしっかり学んでいないとメンタル面で追い込まれ、技術的な判断が遅れ、レースの順位に大きく影響することがあります。大会で勝利するには「どこまでが違反で、どこから違反ではないのか」を自分で学ばなねばならず、違反と違反でない境目を見極め(違反のボーダー)、認識できる知識が必要となります。
ルール講習で選手たちは4つのグループに分かれて、グループごとにそれぞれが抗議者、被抗議者、審判員に分かれ模擬審問を行い、違反のボーダーに対してそれぞれの立場で模擬審問を行うことで、これまで思いもしなかった発見ができ、知識を深めることができました。

⑧ 気象講習 講師:岡本治朗先生

▲岡本先生による気象指導

今回の気象講習は、朝の全体ミーティングの後、担当選手が交代制で天気予報を調べ、1日の風の状況をホワイトボードに記入し発表するスタイルに変更しました。発表後には岡本先生からさらに詳細な情報の落とし込みを行い、1日の中で気をつけておかなければならないポイントを指導していただき、海上練習時に風軸の変化、気温の変化、雲の変化に関して担当コーチと話し合いながら考える取り組みを行いました。コーチから問いかけることで選手たちの意識も少しずつ上がり、練習の中で感じていたことがより明確に確認できるようになりました。練習後は全員で振返りを行い、盛んに意見もかわせるようになってきました。今後もこの形を継続していきます。

⑨ メンタル講習 講師:高士真奈先生

▲経験を振返ることの効果お説明
▲グループに分けてシート記入

メンタル講習では「自分自身の専門家を目指す:自己分析」をテーマに高士先生に講習を行っていただきました。スポーツにおけるメンタル面に関して、目に見えないからこそ、さまざまな角度から分析する必要性があることを学び、これまでの自分の経験の中で自分の実力が発揮できた大会では、どのような状態であったのかを心技体に分けた時に考えられる要因を洗い出し、グループごとに発表してもらいました。また、プログラムの初日に目標シートを作成し「Keep」=続けていきたいこと、「Problem」=課題としていること、「Try」=今回のプログラムで挑戦、改善、進化したいこと、「自分のテーマ」の4項目をさらに細分化し、自分自身がどのように考えているのか講習の中でしっかり向き合うことができ、新たに発見する機会となりました。

⑩ JADAアンチ・ドーピング講習 講師:諸越由佳先生

HOPE育成選手にとっては初めての講習で、「アンチ・ドーピングの基礎知識」フェアプライド(FAIR PRIDE)ガイドを参照しながら、どんなことが違反になるか11項目のアンチ・ドーピング規則違反を確認しながら理解を深めていきました。選手のほとんどが日頃の練習環境の中で何気なく口にしているサプリメントやプロテイン、薬等に禁止薬物が入っている可能性を意識しないまま過ごしていました。今回の講習で「飲料の管理や薬を服用する前の確認など、身体に摂り入れるものは自分で責任を持って管理する」ことの重要性を確認し、これから大きな大会に向かう選手にとって非常に勉強になりました。今後も定期的に取り入れ、アスリートの皆さんがフェアであることの誇りを胸にセーリング競技に取り組んでいけるよう取り組んでいきます。

フィジカルトレーニング&フィードバック 講師:吉松大樹・石嶺忍

▲シャトルラン測定
▲体力測定:反復横跳び

新規加入選手3名の体組成・動作(FMS)・乳酸カーブ・2000m Rowing(+VO2max)を実施し現状の体力を確認、フィードバックを行いました。また、全員に対して定期測定を行い、シャトルラン、反復横跳び、腕立て伏せ、斜め懸垂、ジャンプ、など各自がフィジカルトレーニングの継続を行なっているのか現状を把握し、数値の変化に関するデータのフィードバックをし、それぞれの選手が目指すべき目標値に近づけるよう指導を行いました。
定期的に確認することで選手の意識も高くなり、「体作りの大切さを」理解し継続して取り組んでいける選手になってきたことは大きな成果です。

その他 プログラム内容ピックアップ

▲出艇前体操風景
▲海上・コーチング風景
▲選手によるプレゼンテーション風景

4日間と短い期間の中で海上練習、陸上での講習など内容の濃い充実したプログラムとなりました。最も印象的だったのは、プログラムの新規加入選手に対して、第1回から参加しているHOPE育成選手によるプログラムに関するプレゼンテーションを行ってもらったことです。内容はきちんと構成され、我々コーチ陣も惹きつけられる素晴らしいプレゼンテーションでした。今後、選手自身がスポンサーや支援者を獲得していく中で、自分の考えを表現することが求められてきます。人前で堂々と話せる練習や、何を伝えたいのか内容を構築することの練習の成果を改めて実感しました。自分の魅力を発信できる、素晴らしい選手になれるよう引き続き指導していきたいと思います。

選手・コーチ・スタッフの皆さんお疲れ様でした。
参加選手:HOPE育成選手12名
上園田心太浪・吉井稀世輝・後藤凛子・西田カピーリア桜良・三浦帆香・池田海人・嶋倉照晃・鈴木海翔・重松駿・市橋愛生・山﨑彩加・宇田川涼太郎

次回、第6回NF_HOPE育成プログラムは11月2日〜11日となります。

オリンピック強化委員会HP:https://jsaf-osc.jp/nor/nor_130.php

Report & Photo by 中村 健一

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