期間:2022年3月19日(土)~3月27日(日)
開催地:和歌山ナショナルトレーニングセンター(和歌山セーリングセンター)
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により第1回は途中中断、第2回は中止となりましたが、蔓延防止等重点措置の解除もあり、第3回HOPE育成プログラムを開催することとなりました。プログラム開催前に選手、スタッフ全員の抗原検査を行い、また、毎朝の体温と健康チェック、3日に1回の抗原検査、海上練習以外のマスク着用、手指消毒の徹底等、新型コロナウイルス感染拡大防止を徹底しながら合宿を進めました。
今回のプログラムは、本年から始めたマッチレース講習をはじめ、ルール講習、気象講習、メンタル講習、栄養講習、フィジカル講習、ECC英会話講習、海上練習等と内容盛りだくさんの合宿となりました。また、4月から新規にナショナルコーチに就任するコーチも含め、8名のコーチ体制で行き渡った指導で非常に充実した指導となりました。プログラム期間中に新会長も訪問され、選手、コーチへ激励のご挨拶をいただきました。
①マッチレース講習
海上ではベーシックプログラムの課題であるボートハンドリング・ボートスピード・コーストレーニングを中心に練習を行いました。これまでのプログラムで得た知識をフルに活用し、選手自身で考え改善していくことができるようになりました。感覚的に行なっていたことを理論的に考え、対応できるまでに成長してきたことは今後につながる大きな成果です。
コーストレーニングではシニアの選手もまじることで、シビアなボートハンドリングやコンビネーション、コミュニケーションが求められますが、これまで5回のプログラムでその重要性を十分に理解し、取り組んできた成果を実感し、ヨットが楽しくなってきたことに喜びを感じていたのが印象的でした。
②フィットネス講習 講師:吉松大樹
トレーニングの基礎について講習を通じて学びました。ただトレーニングをするだけでなく、ケガをしないことも大切です。トレーニングは競技力向上の重要な要素になりますので、今回は講習だけでなく、機能的な動作ができているのかを確認しました。HOPE育成プログラムでは、フィジカルで世界で負けない体づくりの指導と強化を展開する中で、選手の成長を定期的に確認しながら、選手自身が地元に戻って継続できる意識づけを大切にして指導しています。引き続き段階的に強化を展開していきます。
③メンタル講習 講師:高士真奈
今回は「自己分析」をテーマに自分自身を多角的な視点(主観的/客観的)で分析し、自分自身を整理し振り返ることで、どのように改善していくことが良いのかより深く考える機会となりました。その他、ピークパフォーマンス分析、最新の心理テストを用いて更に自分を理解し、全員の前で結果を発表しアウトプットすることで、理解度を高めることも併せて学習しました。今後、自分自身の理解を増やしていき、自分自身の専門家になっていくことが大切であることを学べた講習でした。
【ピークパフォーマンス分析】
個人の最大限に発輝できた状態を把握し、成功体験として今後に活かしていくことを目的に行うものです。
④ルール講習 講師:吉本昌弘
今回は、10~18条の基礎的なルール内容の確認を行いました。各班で、ルールを確認し理解を深め、特にわかりづらいことなどを詳しく解説していただきました。何気なく分かったような中でレースを行い、自分が権利艇なのか非権利艇なのか、今回の講習で理解することができ選手たちは霧が晴れたようなすがすがしさを見せていました。また、今後のレースにおいては電子版の抗議書を書く機会が増えてくることが予想されるため、電子版での抗議書の書き方の操作方法を手順に沿って詳しく学びました。レースと同様のフォーマットを使用し、各班で電子版の抗議書を作成したことで、少なくとも選手自身で実践できるように練習を繰り返し習得しました。
今後の課題としては、海外遠征時に英語で同様のことができるようになることです。
⑤気象講習 講師:岡本治朗
今回はベーシックの選手が多かったので基礎的な雲の種類、海風が吹く仕組みについて学びました。
選手たちは日常生活で雲を見る習慣がありませんでしたが講習を通して十種雲形を学び、雲によって天候の変化だけでなく風速の変化が起こる事を学びました。海風が吹く仕組みに関しても雲が影響していることも講習を通して気づきがありました。
海上練習時だけ気象をチェックするのではなく、今後は日常生活から気象について日々意識を向けることで更に理解度が高まりやすくなります。選手自身が気象の大切さに気づく講習内容でした。
⑥海上練習
アドバンス選手はコーチとのヒアリングを行い、選手が選択した艇種に乗り、ベーシックの選手は男子が49erFX、女子は470に分かれて練習を行いました。アドバンスの選手はさらに技術を上げることを、ベーシックの選手は船に慣れていくことがメインになりました。悪天候もありディンギーでの海上で練習できたのは3日間でしたが、各クラスにわかれた選手たちは驚くほどのスピードで成長をしており、今回で学んだことをしっかりと整理し、次回の課題も確認して海上練習を終えました。
⑦フィットネスチェック
現在の体力(筋力)を確認することで、日頃のトレーニングの成果を確認し、自分自身の課題を見つけて持ち帰る選手、新たに加わった選手は自分の現状を確認し、アドバンスの選手たちと比べどういった筋力等が必要か、合宿から日常に戻ってどういったトレーニングをしていくかを学ぶ機会になりました。世界を目指す選手の大切な項目の一つは体力です!
⑧セーリング技術講習
“なぜ船は走るのか”と“ヨットのコントロールロープについて”というテーマで、各班に分かれて話し合い、学んだことを全員に発表することで理解を深めました。
なぜ船が走るかについては?推進力を増すためにどうすればいいのかを理論的に理解することによって、セーリングの際にセールをトリムする量やセンターを上げる量を再度考える機会になりました。
コントロールロープに関しては、470と29erの船を実際に用いて確認を行いました。バング、カニンガム、アウトホール、ジブリーダーを引いたり緩めたりすることにより、セールの形やマストの変化を確認することにより、風の変化への対処などを理解することができました。また、船によっての違いも確認することができ、実際のセーリングに活かしていきたいと思います。選手全員理解していると思っていることも、掘り下げて詳しく考えていくと理解していなかったことが多く、実りある講習となりました。
⑨朝の体操、フィジカルトレーニング 吉松大樹・鈴木慶トレーナー
朝は体温・体重のチェックの後、ランニングや紀三井寺の階段のぼり、ラジオ体操で体を動かすことから始まりました。風待ちの際は鈴木トレーナーによる自重トレーニングをメインに、楽しみながらしっかりと体を動かしました。日々のフィジカルトレーニングは吉松トレーナーのもと計画的に実施しました。今回は特にスペシフィックトレーニングを取り入れ陸上シミュレーションを使用したタック練習をくたくたになるまで頑張りました。
⑩栄養講習 講師:武田哲子
アスリートとして必要な五大栄養素について講習を行いました。自炊の場合や外食の場合の食事例をもとに、何の栄養素が足りてないかなどを各班で意見を出し合い理解を深めました。のちに、食生活バランスチェック表を使用し、自分自身の食生活で必要な栄養素を補えているのか確認をしました。
多くの選手が必要な栄養素を補えていなかったので、今後通常の生活に戻って学んだ内容を実践してほしいと思います。
⑪ECC英会話講習 講師:海外先生
夕食を終えて毎日19時45分〜20時30分の45分間、ECC英会話のレッスンを各自の部屋でリモート講習しています。オリンピックを目指す選手にとって必須となる英語でのコミュニケーションを獲得するため、海外講師の方と気軽に会話できる環境のなかで計画的にレベルアップを目指しています。
その他合宿風景
まとめ
今回、実質的には本年1回目となる第2期NF_HOPE育成プログラム合宿は無事に終了しました。
選手たちは朝から晩までみっちりと入ったプログラムをこなし、しっかりとご飯を食べ、くたくたになりながらも最後まで挫けることなく頑張りました。セーリングの技術についても、いままで何となくわかっていたところが、人に説明できるように理解を深めることができたと思います。この合宿で得た課題をしっかりと地元に持ち帰り、普段の練習、生活に取り込み、よりたくましくなって次回の合宿に参加して欲しいと思います。
合宿にご協力いただいた講師の方々、スタッフの皆さん、選手、コーチの皆さん、お疲れ様でした!
Report & Photo by 佐藤麻衣子・中村悠耶