大会を終了して
大会が無事に終了しました。
これまでは大会期間中にコロナ感染者が発生すると大騒ぎになっていたものでしたが、スペインはイースターの休みをコロナからの回復期間と考え、社会が動きだす時とみているようです。今回も大会前や期間中に陽性になった選手やスタッフが複数でたようですが、それぞれが自己隔離、抗原検査を行い、陰性になったら競技に復帰していました。東京大会が終わった後、ずっと足踏みしていたパリ五輪へ向けて大きな一歩を踏み出した大会になりました。
人の密を防ぐ手法は入念に準備されており、アプリを使った大会の連絡、毎朝屋外で行うブリーフィング(雨の日は参りましたが……)、ノーティス、プロテスト、成績など、すべてが迅速に行われました。特にアプリでは登録している選手とコーチへは個人アカウントが設定してあり、アカウントからエントリ―の領収書もとれるため、紙での印刷がほぼゼロになりました。プロテスト提出もすべてオンラインになりました。
日本から16艇22名の選手が参加しましたので、クラス別に報告します。
男女混合470級(21カ国66艇 日本から2艇参加)
6位 岡田奎樹(トヨタ自動車東日本)・吉岡美帆(ベネッセホールディングス)
12位 高山大智・盛田冬華(ヤマハ発動機)
470は男女混合種目になり、東京五輪代表選手がペアを組み替えての挑戦が多数いました。また、ジュニアワールドや420クラスから上がってきた若い世代も数多くいます。ミックスになってから初めてのトップレベルが揃った大会となり、クラス全体に活気があり、楽しい雰囲気が戻ってきました。今大会は日本470協会の会長を務められ、ベネッセチームの監督でもある山崎会長がレースを見にきていらっしゃいました。「日本も470はチャンスがあると思います。各国、東京大会のメダリストたちがチームを組み替えて、継続しているのを確認できましたし、若い新しい世代がのびのびとチャレンジしている姿は楽しみです。次世代の選手たちもジュニアワールドへ積極的に参加し、東京世代に続く力が生まれることを期待します」と手ごたえを感じていました。
日本は2チームがゴールドフリートに残り、岡田・吉岡組はメダルレースで2位をとり、総合6位になりました。パリで表彰台を狙うには、常にメダルレースに残る実力が必要です。470はパリ五輪を目指して日本を牽引していく種目になります。
男女混合Nacra 17級(23カ国38艇 日本から1艇参加)
20位 飯束潮吹(エス・ピー・ネットワーク)・西田カピーリア桜良(エス・ピー・ネットワーク/関西大学)
テクニカルで特殊な種目のナクラは新人が増えません。高価な艇であるため、東京大会からの継続しているチームが多いです。飯束選手のようにクルーが交代したチームもあれば、クルーが残ってヘルムスマンが交代しているチームもあります。パリへの予選は来年から始まります。日本チームのクルーの西田カピーリア選手は初めての国際大会でしたが、強風の中で沈しても、3周のレースでも、ひたすら乗り込み、覚えることの多い大会になりました。日本では単独練習になってしまいますから、欧州の大会に出て競争の機会を増やすことが必要になります。ただ、これからしばらく日本へ戻ったら、アップウインドフォイリングのテクニックをマスターしたり、ジェネカートリムをもっと正確にできるように磨いたり、課題をクリアして次の大会を目指してほしいと思います。上位陣は変わりませんから、追い付くことが絶対です。
男子49級(27カ国79艇 日本から1艇参加)
54位 古谷信玄・高柳彬(エス・ピー・ネットワーク)
選手の顔ぶれに一番変化があったクラスです。東京大会金メダリストのディラン・フレッチャー選手(イギリス)はクルーが交代しましたが、途中から棄権しました。470男子がなくなったこともあって49erへ移ってきた選手が多数見受けられました。高柳選手は早めに現地入りして練習していた期間にコロナ陽性になり、数日間隔離状況になりましたが大会前には回復し、レースに間に合いました。ただ、練習できなかった分、初日のパフォーマンスには影響があったと思います。次第に慣れて動きが戻ってきた後半はいい走りになりました。プロテストでの失格がなければシルバーフリートに残れていただけに、残念でした。フリート分けが決まる予選最終日は、チャンスがあればプロテストをして順位をあげる努力をする艇がでてきますので、注意が必要です。
女子49erFX級(22カ国57艇 日本から2艇参加)
28位 山崎アンナ(日本体育大学大学院)・髙野芹奈(関西大学)
30位 田中美紗樹・永松瀬羅(豊田自動織機)
FXはオランダが圧勝で、東京大会金メダルのブラジルチームを破りました。メダルレースへ出る前、「今日のレースでは、Good Luckはいらないです。Enjoy sailingだけです」とコメントするVan Aholt選手は東京代表のクルーと新チームを組み、すでに優勝が決まってのメダルレースでした。メンバー交代も多いのですが、新人チームは470女子から転向してきたペアが複数あり、これまでのヘルムスマンかクルーが残って新チームを作ってきたケースが多いです。日本の2チームは中盤での競り合いの中で、スタートで前に出られたレースはしっかり走り切れています。アジア競技大会でのライバルとなるシンガポールも日本と似たような成績で、東京大会以降、練習ができていないようでした。25艇のゴールドフリートまであと少しです。
女子ILCA6級(39カ国95艇 日本から1艇参加)
50位 冨部柚三子(福井総合病院)
東京五輪6位のSarah Douglas(カナダ)が驚異的な順位で2位に31点差をつけて優勝しました。2位のイギリスはこれまで2番手だった選手で、3位ギリシャは東京大会9位です。2018年世界チャンピンのEmma Plasschaet(ベルギー)も今回は8位にとどまりました。上位選手が抜けて、これまで2番手だった選手が台頭してきた印象が残りました。ILCA6はユースワールドで上位に入った若手選手が次々と活躍する種目です。同じ競技艇種ということと、国枠がユニバ―サリティークラスとして多いので、世界各国が五輪代表の女子選手で枠をとることに力を入れていることが国数を増やす活動につながっています。
冨部選手はヨーロッパセーリングアカデミーに参加しており、スペイン・カナリー諸島に拠点を構えています。6月末まで欧州での国際大会への参加とスペインでのトレーニングを繰り返していきます。
男子ILCA7級(51カ国168艇 日本から1艇参加)
61位 瀬川和正(鳥取県スポーツ協会)
ILCA7は上位陣に変化が少ないのですが、優勝したMichael Beckettのようにユースワールドから上がってきた選手が体が大きくなり、スタンダードサイズのILCA7でも通用するようになると上位に入ってきます。東京大会金メダリストのMatt Wearnは初日に若干つまづいたもの、終わってみれば2位まで上がってきました。また、10位にはシンガポールのRyan Louが入りました。インド、マレーシアも30位以内に入りました。アジア勢が力をつけて上位に入る種目でもあります。
瀬川選手はクロアチアにトレーニングに行き、スプリットで練習しているメンバー相手に力をつけてきました。フィンで増やした体重を落としたら、レーザーでの体の動きにキレが出てきました。上位フリートに残れるようになるまで、あと少しのところです。
男子iQFOiL級(28カ国101艇 日本から4艇参加)
49位 池田健星(三重県スポーツ協会)
56位 富澤慎(トヨタ自動車東日本)
63位 倉持大也(福井県スポーツ協会)
70位 穴見知典(ライテック)
女子iQFOiL級(24カ国74艇 日本から4艇参加)
41位 須長由季(ミキハウス)
45位 新嶋莉奈(エリエール)
60位 渡辺純菜(太陽コミュニケーションズ)
63位 山辺美希(サガミ)
IQFOILについては、男子も女子も大柄、男子は90kg~100kg、女子も75kg前後の選手が安定した走りで上位にいます。バランスのとり方がRS:X級とは異なるため、RS:Xに乗り込んだ人ほどクラス転向に苦労しています。フォーマットも3種類あり、持久力が試されるロングディスタンスのマラソンレース、ダウンウインドでのパフォーマンスが問われるスラーロームレース、これまでのヨットレースに近いアップウインドの入るコースレースで、対応が異なるフォーマットで準備も技術も新しい方法を考えていかなくてはなりません。リーチングスタートはスピードで突っ走るイメージで、接近している中での加速には勇気が必要です。日本チームはまず体重が足りないこと、スピードに対する恐怖心がまだ克服できていないことが大きな課題です。
今大会では、選手の日々のコメントをSNSに掲載しました。新レースシステムについてはHPで若干説明させていただきましたが、これからも変更が出てきますので、変更内容が発表されるたびにアップデートしていきます。コロナ打破を目標に大会を運営していただいたスペインの大会主催者に感謝いたします。大会ができ、以前のように対面で話ができ、それだけで楽しかったのだと思います。たくさんの応援をいただき、ありがとうございました。
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