期間:2022年5月2日(月)~5月8日(日)
開催地:和歌山ナショナルトレーニングセンター(和歌山セーリングセンター)
新2022年度の最初となる合宿では、新体制でのスタートとなりました。選手達も2ヶ月ぶりのプログラムで、開会式では新しく就任したコーチ陣と選手全員との交流を深めるために自己紹介と、HOPE育成プログラムの今後の取り組みについて説明を行いました。また、ワールドを間近に控えたILCAクラスとの合同合宿形式でプログラムを実施し、講習、フィジカルトレーニングはHOPE育成選手と合同で行い、海上練習は別メニューでワールド前の課題に取り組みました。コロナ感染対策に関しては、政府の規制緩和が行われる中、感染症対策として手洗いや手指消毒、陸上でのマスク着用等、感染対策を徹底し合宿を実施しました。
①栄養講習「身体づくりのための栄養摂取」(講師:武田哲子・リモート)
初めに前回の内容の復習と確認を行ってから講習に移りました。今回は身体づくりのためにどのような食事をとれば良いのかを学びました。身体づくりのための食事とは、競技の目標達成に必要な体格を維持・獲得するための食事です。必要なタンパク質の量、タンパク質について、効果的な栄養補給のタイミング、ケガをしているときの食事のとり方等を指導いただき、現状の自分の状況に合わせ対応できるよう学ぶことができました。今回の内容をしっかりと普段の食事に活かしていくことができるよう、各自が家に持ち帰り、ご両親と情報共有し自分の目指す体づくりを実践してもらうことが最大の目的です。
②メンタル講習「目標設定+振り返り」(講師:高士真奈)
今回は合宿初日に目標設定と振り返りについて講習をしていただきました。なぜ目標設定は必要なのか?を、選手に問いかけ、目標設定の重要性と設定のポイントや振り返りのポイントを詳しく学びました。また、高士先生に作成いただいた目標設定シートに選手全員がその日の目標を書き込み、練習後に目標に対する振り返りを行うことで、モチベーションの確認や、考え方の整理整頓を合宿期間中、毎日実施しました。毎日の振り返りを実践しながら自己と向き合うことで自分自身を客観的に観察する事が習慣化できることを目標として今後取り組んでいきます。この講習はメンタルを鍛えるだけでなく、方法の面で他にも使えることもあります。積極的に今回学んだことを生かしていきたいと思います。
③マッチレース講習
前回から新たに導入されたマッチレースプログラムでは、アジア大会金メダリストのシエスタセーリングチームの和田さんにお越しいただきマッチレースを学ぶ意義やJ24の特性、船の上下架における安全面に関して、選手、コーチ陣全員がお話を交え指導をしていただきました。早速、コーチ指導のもと注意点の確認を行いながら、船の下架と自分たちが使用する船の準備と各セクションの動作確認を行いました。海上練習ではマーク回航をアンクロック周りからクロック周(通常のフリートレース回航の逆回り)りに変更しました。また。マッチレースに必須の技術であるスタートラインをジャストで切るための「タイム&ディスタンス」を取り入れ、チーム内で役割を決め、トライ&エラーで修正を繰り返し、正確性を追求していきました。最終日には緊迫したレースをできるまでになり、チームのコミュニケーションの質も格段にレベルアップしました。振り返りの発表では「自分の乗っている種目にタイム&ディスタンスを取り入れて早く練習したい!」という意見が多く、新たな発見や気付きを得て選手たちは輝いていました。
次回の練習がさらに楽しみです。さらにもうひと段階レベルの高い練習ができることを期待しています。
④ルール講習(講師:吉本昌弘・林健太)
前回は17条までの講習だったので、今回は18条から19条および20条について学びました。講習の中で、各選手の理解度を確認するため、実際にオンライン抗議書を作成・提出し、講師による添削を行いました。選手たちは、自身のルールに対する理解度を把握し、インシデントが起こるまでに注視しなければいけない周囲の動向と、自艇をプロテクトする術を学びました。曖昧に理解していた条項も、今回の講習を経て、明確な解釈を得ることができました。今後は、海上でのトレーニングにおいて、適切なルール解釈を基に自艇をイメージする場所へ操船する技術を磨いていく必要があると感じました。
また、模擬審問を練習で行い、証言内容のポイントが確実に伝わるようにするには何が大切かを確認しました。しっかり整理して説明できるようになることが重要です。自分の意見をわかりやすいように日頃でもディスカッション等でもトレーニングしていきたいと思います。
⑤海上練習①(HOPE育成選手)
今回も各種目に分かれて練習を行いました。ベーシックの選手は49erFX・470で基本動作の練習を中心に実施。アドバンスの選手は49er・29erで、基本動作の確認とマッチレース講習で学んだタイム&ディスタンスをスタート練習に取り入れ実践で使用できるよう習得に励みました。カイトは普段の練習でできないスタート練習とマーク回航、ILCAは世界選手権の前ということなので現状の課題の反復と確認をしっかりと行いました。これまでカイトが同じ海面で練習したことがなかった事もあり、あまりのスピードの速さに全員が驚いていました。良い刺激をもらって選手たちのモチベーションも上がりました。海上練習前には各クラス課題や目標を設定し、トライアンドエラーを繰り返しながら達成できるように取り組み、メンタル講習にあった目標設定にも関連したことで、内容の濃い振り返りができました。また、今回も一部の選手はコーチと一緒に乗る機会があり、瞬時にアドバイスをもらえることで自身の成長をより実感することができました。海上で、49er、49erFX、470、ILCA、Kite、29erの6種目が同時に練習している風景を観て、セーリングの未来が楽しみに思えました。
海上練習②(ILCAチーム:飯島洋一コーチ)
海上ではほぼ毎日、海から安定した風のハイクアウトコンデションで行う事ができ、合宿後に行われるILCA7世界選手権の開催地メキシコ・プエルトバヤルタのコンデションと似た状況で存分にトレーニングを行う事ができました。良い風が予想される世界選手権に向け、海上練習ではハイクアウトトを持続しながらのスピードトレーニング、さまざまなシュチュエーションでのスタートトレーニング、本番を想定した安定した風の中でのコース練習をメインに行いました。毎日、毎日ハイクアウトとHOPE育成プログラムの若手との陸上トレーニング、陸上での各種講習で体も頭も存分に使った8日間でした。
⑥フィジカルトレーニング(吉松大樹・與那嶺寛樹)
毎朝のウォーミングアップ集合時に体温と体重測定を行い、選手の体調管理を確認後、紀三井寺の階段ランとラジオ体操を行いました。また、合宿前半はトレーニングの一慣で宿舎としてハーバーまでの行き来をランニングし、持久力の向上に努めました。フィジカルトレーニングでは、ベーシック、アドバンスの選手をグループに分け、トレーナー指導の下、基礎的なトレーニングやサーキットトレーニング、有酸素運動等を毎日行いました。グループごとに運動強度を変えたプログラムをトレーナー監修のもと、選手たちは日頃とは違ったトレーニングに戸惑いながらも肉体的にも精神的にも追い込まれていましたが、グループで取り組む事で、選手同士でモチベーションを高め、筋肉痛と闘いながら最後まで取り組んでいる姿勢を見て頼もしく感じました。クラス間を超えた絆をHOPE育成プログラムの中で構築し、チームジャパンとして将来活躍してくれる事を目標に今後も継続して取り組んでいきます。(トレーニング中はマスクを外しています)
⑦気象講習(講師:岡本治朗)
今回の講習では「海風・傾度風」をテーマに実際の地形と見比べながら陸から、海へ吹く風のパターンがどのように変化しているのか、和歌山の地形や国内外の似たような地域をいくつかピックアップして傾度風の特徴と傾向を確認ました。まず初めに、前回の復習としてアウトプットをすることで、より理解度を上げていくことを目的に、海風のメカニズムに関して選手がどこまで理解できているかを、各班で話し合い発表することから始まりました。また、ILCA7クラスが世界選手権直前のため、開催場所であるメキシコの地形を全員で確認しながら詳しい説明を受けました。毎日の気象予報はこれまで通り順番に発表してもらい、選手たちの予測はレベルアップしてきましたが、今後の注意点として、最低気温とはどこの時間のことを表しているのか、晴れている日と曇りの日での気温差の変動に関して詳しく説明していただき、気温に関しての理解もさらに深まりました。今後の発表にも新たに取り入れていく気付きを得る事ができました。
⑧フィジカル講習「心肺持久力トレーニング」(講師:吉松大樹)
心肺持久力トレーニングの重要性について話をしていただきました。トレーニングの目的として、レース時の疲労を最小限にすることと、質の良い海上練習や怪我の予防に繋げて行くことを確認しました。この講習で学んだことは普段のトレーニングにも必ず生かすことができます。オーバートレーニングにならないように注意しながら、身体の状態に合わせてトレーニングをすることの重要性を学びました。
⑨その他の合宿風景
Report & Photo by 辻寛基・波多江慶・中村悠耶