大会後レポート

Allianzレガッタが終了しました。
ILCA6以外は参加艇数が少ない大会となりましたが、弱い風から始まり、中盤からは10~18ノットの風で緊迫したレースが行われました。1985年にスパレガッタと称して誕生したアイセル湖でのオリンピッククラスの大会で、オランダチームがオリンピック代表選手を発表する場になってきた大会でもあります。今回はアジアからの参加が多数みられました。

日本からは6クラスに11艇が参加し、男女混合470級で岡田・吉岡組が3位で表彰台にあがりました。また、髙山・盛田組も5位でメダルレースに残りました。
女子iQFOiL級は参加が少なく、メダルシリーズに全艇が残る数でしたが、風が弱く、最終日はレースができませんでした。

470クラス以外の多くのチームについては、ボートスピードで苦しんでいるケースが多いことが選手のコメントから見て取れます。トップレベルの選手の走りを目の当たりにする良い機会であったと思いますので、自分たちよりも上のレベルの選手たちがどのようなセーリングをしているのか、その差は何であるのか、具体的な一つひとつの要素に分解をしながら分析・言語化し、自らのせーリングに反映させていってほしいと思います。

オランダではDen Hagueで7月にWSユースワールドが開催されます。また、同大会後には来年の2023年セーリングワールドチャンピオンシップ(全オリンピッククラスとパラクラス)の練習大会が種目別に分かれて実施されます。2023年8月の本番大会はパリオリンピックの最初の国枠予選となります。最初の世界選手権での枠が一番多い、広き門となるため、そこでの枠獲得を目指して各国準備を周到に始めています。今回、3位に入った岡田・吉岡組は、「課題がまだ多くても、3位に入ったことはうれしかった」と二人ともほっとした表情を見せていました。

次はドイツ・キールウィークとなります。

日本選手の成績:

男女混合470級【7か国/14艇/日本から2艇参加】
3位 岡田 奎樹(トヨタ自動車東日本)・吉岡 美帆(ベネッセホールディングス)

5位 高山 大智・盛田 冬華(ヤマハ発動機)

岡田:今大会は参加人数が少ない大会でした。海面は湖で行われたのでフラット、シフトが大きいという環境でした。実力的に上位にいて普通という立ち位置でしたので真ん中での勝負がメインになったのですが、端からのブローに対応できない状態が多々あり3位という成績になりました。勝負の仕方を誤っていたので、大会の組み立て方は環境を理解し組み立てるこの重要性を考えさせられる大会となりました。

吉岡:今回の大会はパルマ、イエールに比べると参加艇数が大幅に少ない中でのレースでした。大会を通して風待ちが多かったものの、レース時の風速は安定していい風が吹きました。その中で、1上までのコース取りやコミュニケーションの取り方に課題があり、1上までの順位が良くなかったです。ダウンウインドでは理想とするものにはなっていませんが、他艇に対してはアドバンテージがあることが確認できました。次の海外遠征まで2カ月あるので、足りないものを整理して、課題に取り組んで行きたいと思います。

高山:今回の大会は前半振れ振れ、後半は安定したコンディションでのレースでした。
Palma、Hyèresの時から3戦目となった今大会では、スピードの面、1上に向けてのコースの取り方の所で向上できていることを実感しました。レースを続けると、新しくできた矢先に以前にできていたことを忘れていたり、それに気をつければできていたことだったりして、下がった時にそのことをしっかりと受け止めて学ぶことを大事にしていきたいと思います。しかしながら、レベルが上下しながらも、徐々に良くなっている実感があります。次の大会がすごく楽しみです。

盛田: 初日は無風でノーレースでしたが、その後は風に恵まれて毎日O旗の上がるタフなレガッタになりました。前回のイエール大会からボートスピードは向上していることが実感できた大会でしたが、コース取りの面でもったいない順位の落とし方をしてしまったりと、まだ一つの壁は越えきれていないです。しかしながら、確実にその壁を越えるための階段は一段一段上がれています。成長には喜びながら、さらに上へと行けるように励みます!
応援ありがとうございました!

女子ILCA6級【30カ国57艇/日本から1艇参加】
46位 冨部 柚三子(福井総合病院)

冨部:今大会での課題は前回大会で浮き彫りとなったスタートの改善です。練習してきたテクニックを試し、60%ほどの確率でスタート以降の風に対する戦略を遂行できるようになりました。一方で、混戦の上マークや下マークで艇団からすり抜けることができず、スタートの改善は成績につながりませんでした。今回は1レース30~40分とコースが短く、風も8~12knotが中心でボードスピードもしっかり戦えるコンディションでした。60艇前後の拮抗したボードスピードのフリートレースは日本では経験できないため、たくさんの気づきがありました。今年に入って3大会に参加しましたが、次の国際大会は10月の世界選手権まで予定していません。ここでの気づきを忘れず、課題に取り組んで国際大会でより良い成績を取れるようにトレーニングしていきたいと思います。

男女混合Nacra 17級【11カ国14艇/日本から1艇参加】
8位 飯束 潮吹(エス・ピー・ネットワーク)・西田カピーリア 桜良(エス・ピー・ネットワーク/関西大学)

飯束:今回はアップウインドフォイルにフォーカスし、事前練習からトレーニングをしてきました。前回の大会より、他の選手たちもフォイリングに積極的になっており、技術的にも上がっていました。レースを重ねるごとに私たちもフォイリング技術が上がってきましたが、スピードがあと一つ物足りないところです。次回までにより良いポイントを見つけ出して、トップマークまでの順位を上げていきたいと思ってます。

西田:今大会の第一目標はアップウインドフォイリングの走らせ方を確立させることと、それをレースで使えるようにすることでした。アップウインドフォイリングでは風や波の変化によって船のバランスが少しずつ変わっていくので、状況に応じた船のセッティングとフォイリングの感覚をつかむことが難しかったです。日を重ねるごとに走らせ方やセッティングを確立させ改善していけたのですが、やはりトップ艇と比べるとスピードの差を感じる場面があったので、今大会での海外の選手の走らせ方を参考に、より研究してもっともっと練習していかなければならないと感じました。また今大会ではタック・ジャイブの動作で差をつけられることが多かったので、今後の練習ではフォイリングの走らせ方の改善とともに動作の練習もしなければならないと感じました。次の大会はキールです。課題を克服してトップ艇団に食いついていけるような走りができるよう引き続き頑張ります。応援よろしくお願いします。

男子49級【18カ国40艇/日本から1艇参加】
18位 古谷 信玄・高柳 彬(エス・ピー・ネットワーク)

古谷:今大会は、チームでの国際戦2戦目です。国内では練習相手がいないため、大会で対相手に関する気づきが多く日々課題がみつかり、少しずつ改善できていく大会となりました。
大会を重ねるごとにレース中のコミュニケーション、リレーションシップも良くなってきています。次はドイツのキールウィークに出場するので、今回より良い成績を出せるように練習します。

高柳:今回の大会で痛感したことはシリーズの前半と後半でコースの組み方を変えなければいけなかったことです。シンプルに言えばレベル差の激しいオープニングシリーズでは通用していた抜け出し方もゴールドフリートになると同じように考える選手が多く、その中でもスピードのないボートは振り落とされていく印象でした。これからの改善点としてはその日のコンディションに合わせてベストに近いセールセッティングをして、スピードで戦えるポジションを作り上げていくことです。海外レースでは今まで見えなかった課題がたくさん出てくるので、とても楽しいです。レベルアップだけでなく次の大会ではメダルレースに残れるように練習に臨みます。

男子iQFOiL級【9カ国16艇/日本から2艇参加】
13位 池田 健星(三重県スポーツ協会)
15位 倉持 大也(フリー)

池田:今大会は少人数でのレースでしたが、半数は先日の欧州選手権でも上位に食い込んだメンバーが揃っていました。そのため間近でトップクラスの走りを見ることができ、非常に勉強になりました。そこで彼らと最も差を感じた部分は上り角度です。特にスタート直後や下マーク回航後の僅差で競り合う場面でつていけないことが多々ありました。しかしスピード自体は劣っていません。フリーなポジションを確保し、2上で挽回してシングルに食い込むレースも何本かありました。自分の持ち味を忘れずに、今後の大会に向け今回発見した課題を多方面からアプローチして克服していきたいと思います。

倉持:今回は直前にヨーロピアンがあったこともあり参加人数は多くありませんでしたが、開催国のオランダの選手が多く、レベルは高い印象でした。
ヨーロピアンのガルダ湖と同じ淡水でのレースでしたが、フォイルの浮き具合や感覚が違うと感じました。
少人数でのレースということもあり海面や人数によって走り方を細かく調整していかなくてはいけない中、うまく自分の長所を出せず苦しい展開が続きました。ですが、少人数でトップの選手たちともしっかり走ることができたので今回得た収穫を日本に戻り、しっかりとモノにして行きたいです。

女子iQFOiL級【4カ国7艇/日本から3艇参加】
4位 須長 由季(ミキハウス)
5位 大西 富士子(ホマレ電池)
7位 渡辺 純菜(太陽コミュニケーションズ)

須長:ヨーロッパ選手権直後のため参加人数が少ない大会でしたが、地元オランダを拠点に練習している速い選手と間近で戦うことができ、いろいろとチューニングのテストもしながらのとても実り多き大会となりました。メダルレースで逆転表彰を狙っていたので、成立せず残念です……。それでも思うように走れず苦しんだ前大会から、今回少しヒントがつかめたのでよかったです。まだコンディションにより慣れていない部分も多く、自分の走りが安定していないので、もっと道具の知識も深め、技術も幅を広げ、さらにスピードもあげていかなければならず、やるべきことも多いです。時間もないですが諦めず、着実に前進していきたいと思います。

大西:参加人数は少なかったですがトップ選手もいたのでその走りをたくさん見て学んで、とても有意義な大会でした。まだまだ改善点があるので日本へ戻ったらしっかりとそれに取り組んで、もっと速くなれるように頑張ります。今回もたくさんの応援ありがとうございました。

渡辺:今回は少人数のレースであったため、苦手なスタートの課題を克服しようと臨みました。ヨーロッパ選手権の頃と比べるとスタートはすごく良くなったのではないかと思いますが、その分スタート後の走りやVMGの差で上位選手と差がついてしまうことを改めて感じました。また、リーチングの走りは悪くはなかったのですが、下りの走らせ方やマーク回航など、小さな技術の差がまだまだあるので、帰国してから徹底的に練習します! 応援ありがとうございました。

以下のクラスは日本からの参加がありませんでした。
男子Formula Kite級【25カ国54艇】
女子Formula Kite級【17カ国26艇】
女子49erFX級【10カ25艇】
男子ILCA7級【実施されず】

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大会レポート

長い間オランダのワールドカップ大会はMedemblikが会場でしたが、今回はアムステルダム北部のAlmereのマリーナに470、49er、FX、Nacra17、ILCA6、そしてアイセル湖中央の東岸にあたるLelystadのビーチにiQFOiL、Kiteが分散して開催されます。ILCA男子はメキシコで世界選手権が開催された直後なので今回は種目からはずれ、代わりにオリンピッククラスではないRSエアロクラスがレースを行います。

AlmereはオプティミストやUnited 4などユースを中心にした大会を実施してきた場所です。Allianz Regattaが急遽ワールドカップになった背景は2022年ユースワールド、2023年Sailing World Championshipというワールドセーリングのイベントが続くため、その前哨戦という位置づけになったからです。

iQFOiLは欧州選手権の直後であるため、南ヨーロッパの選手のエントリ―は多くありません。しかし、メダルシリーズに残ればパリからの新フォーマットを経験でき、ランキングに有利なポイントを稼ぐことができる大会になりそうです。
49erとナクラはこの後デンマークで開催される欧州選手権へと続きます。日本選手だけでなく、アジアやアメリカ、カナダの選手も欧州遠征が長期になり、大会を数多くこなしています。アジア大会が1年延期になりそうなため、アジアの選手にとってはアジア勢同士で現状を確認できるよい機会です。

開催地:オランダ・アムステルダム
大会期間: 5月31日~6月5日(iQFOのレースは6月1日から開始)
毎日のレーススケジュールは前日にオンラインノーティスボード(ONB)に掲載されます。第1レースは11時スタート予定です。

参加状況:日本から6クラス11艇15名の選手が参加

男女混合470級【7カ国14艇/日本から2艇参加】
岡田奎樹(トヨタ自動車東日本)・吉岡美帆(ベネッセホールディングス)
高山大智・盛田冬華(ヤマハ発動機)

女子ILCA6級【30カ国57艇/日本から1艇参加】
冨部柚三子(福井総合病院)

男女混合Nacra17級【11カ国14艇/日本から1艇参加】
飯束 潮吹(エス・ピー・ネットワーク)・西田カピーリア 桜良(エス・ピー・ネットワーク/関西大学)

男子49級【18カ国40艇/日本から1艇参加】
古谷 信玄・高柳 彬(エス・ピー・ネットワーク)

男子iQFOiL級【9カ国16艇/日本から2艇参加】
池田 健星(三重県スポーツ協会)
倉持 大也(フリー)

女子iQFOiL級【4カ国7艇/日本から3艇参加】
須長 由季(ミキハウス)
大西 富士子(ホマレ電池)
渡辺 純菜(太陽コミュニケーションズ)

以下のクラスは日本からの参加がありません。
男子Formula Kite級【25カ国47艇】
女子Formula Kite級【17カ国26艇】
女子49erFX級【10カ25艇】
男子ILCA7級 実施されず

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