期間:2022年6月20日(月)~6月23日(木)
開催地:和歌山ナショナルトレーニングセンター(和歌山セーリングセンター)
2022年度初めての470級次世代強化合宿を開催しました。
HOPE選手から3名、470級ジュニアワールドに参加する選手4名に加え、ナショナルチーム選手や特別強化コーチも2名参加し、世代の枠にとらわれない、内容の濃い4日間の合宿となりました。
新体制の試みとして、本合宿を単体での開催とするのではなく、HOPE育成合宿の前後にクラス別の合宿(今回でいえば、本合宿とスキフ合宿)を同時開催することで特別講師を含めスタッフ陣営の拡充を図っています。今回の合宿においても栄養学やメンタル、ルール、フィジカルトレーニングなど、専門分野の特別講習もしっかりと行うことが出来ました。
海上練習においては4艇で実戦形式の練習に取り組むことができ、自分たちの走りを確認することだけに留まらず、スタートや競り合いの中でのタクティクス、ルールの確認など、普段自分たちだけでは意識することの薄かった分野で、選手たちは多くの発見があった様子でした。
オリンピック強化委員会は、今後もHOPE合宿と並行開催するかたちで次世代選手の育成を中心とした合宿を実施し、選手たちが互いに刺激し合い、競い合える環境整備に尽力していきます。
①栄養学講習「体重コントロール、補食、糖質制限、水分補給」(講師:武田哲子)
470と49erで実際に海外レースを控えた選手も多く、HOPE合宿での栄養講習から発展させたかたちで武田さんに講習して頂きました。
アスリートとしての体作りの為の食事や、パフォーマンスを維持するための補食や水分補給などの知識について、より深堀りすることができました。
「健康に良い食事とは」という漠然とした栄養講習ではなく、実際に選手の体重や筋肉量のデータから、1日に摂取し続けた方が良い栄養素量や水分量を算出して可視化することで、合宿が終わった後の日々の食生活にも活かせる知識を教えていただきました。
また、微量栄養素とコンディションの関係性も教えていただき、発汗などによるパフォーマンスの低下を防ぐ為に取り組む補給の仕方などは、海の上で1日競技をし続けるセーリング競技には無くてはならない知識であり、とても為になる講習でした。
成長期の若い選手達にとっては、自分の身体づくりに直結する実践的な学びはとても重要、かつ学校の部活等では教わる機会が少ないこともあって、非常に刺激に富んだ講習であったようです。今後もHOPE合宿や次世代強化合宿を通して意欲的に学んでもらえればと思います。
②メンタル講習「自己分析(強み+弱み)、その活かし方」(講師:高士真奈)
初日の講習では、これまで経験した「失敗」を元に、選手達に自身の弱みと強みを考えてもらい、それをインタビュー形式で選手自ら説明をしてもらうことで、他者に自分自身を認識してもらい、さらにインタビューを通して自己認識していない自分の特徴を他者からフィードバックしてもらうことで、潜在的な自分を見つめ直すきっかけを作りました。
自身の情報を解放し、さらに自身の一面を周りに理解してもらうこと。
こういった作業を行うことで、コミュニケーションが今まで以上に円滑になる効果が望めると共に、合宿やトレーニングの効率アップ効果も見込むことが出来ます。
最終日には、認識し直した自分の弱みと強みを受容し、さらにそれを競技に活かして行動に移して方法やプロセスを選手たちに講習していただきました。
今後もコミュニケーション能力やメンタルコントロール能力の基礎を学んで行くことで、合宿や練習会をいかに自身で濃い内容に昇華させていくのか、セーリング活動を継続し、世界で戦っていく為の活動環境をいかに自分で整えていくのかといったことについても深く考えていってほしいと思います。
③ルール講習「A節、B節、42条の確認」(講師:石川雅之)
実戦形式の海上練習でのケースから、艇と艇のタクティクスやルール、また推進方法違反でペナルティーを課されてしまうボーダーラインなど、実際にレースで起こりやすいものを確認しました。オンザウォーター(海上)ジャッジもしてもらい、競り合う中で選手それぞれが癖で行ってしまっている違反アクションなどを厳しく見てもらい、陸上でのルール講習でフィードバックを行って選手に認識してもらう機会を作りました。
世界の舞台で活躍する選手になる為には、英語で自身の権利を主張するとともに、ルールを駆使して自分の順位を守る力が必須です。ヨットという競技を深く理解し、戦術をより深く学んでいくためにも、若い頃からルールに強い選手へとなってくれればと思います。
④フィジカル講習「体の仕組み+セルフケア」(講師:與那嶺寛樹、吉松大樹)
日々、ハードなトレーニングを自身に課している選手たちの為に、体のメンテナンス、コンディショニングに役立つ知識やセルフケア方法などを講習していただきました。
プロのトレーナーの方に帯同いただいているHOPE育成合宿やクラス別強化合宿については、トレーナーの方々がケガをしている選手はもちろんのこと、練習後の体のケアも請け負ってくれていますが、選手達がこれから参加する国内・海外の大会はそのような機会は少ないことが予想されます。競技を続ける上で資本ともいえる自分自身の身体は、自分自身が最も大切にしていかなければなりません。
「自身の体について深く知ること」「自分自身でケアしていくことの重要性」について、この機会に確りと学んでいってほしいと思います。
⑤陸上トレーニング (講師:與那嶺寛樹)
毎朝のウォーミングアップに始まり、海上練習などの後にも毎回フィジカルトレーニングを行いました。体力の違いや、ケガも含めた体の調子など、選手それぞれの身体に合わせてトレーナーさんが考案したメニューをこなしました。
個人での身体強化だけでなく、チームワークの向上にも繋がるトレーニングなども取り入れ、ハードな内容のトレーニングでも、みんなで刺激し合い、支え合うことで乗り越えていけるということを学べる機会を作って頂きました。
継続的に強化合宿に来ている選手たちは、合宿に来るたびに体力の向上がしっかり見て取れる成果が出ており、合宿を離れてからの普段の生活やトレーニングにも、ここで教わった体作りの知識やノウハウが活かされているように思います。
これからより高負荷な練習を積み上げていける為にも、若い世代のうちからケガをしにくい体作り、ケガのアフターケア、競技特性に合った正しいトレーニングなどの知識を深めていって貰えればと思います。
⑥海上トレーニング(講師:中村健一、辻寛基、市川航平)
ジュニアワールドに出場を控えた2チームが参加していたので、より実戦に近い形を取ったトレーニングを実施しました。
ショートコース、ショートスタートラインでのコース設定をメインに練習することで、艇のポジショニングとタクティクスに重きを置いてもらい、選手たちが常に考え続けることを促すような意図をもって海上トレーニングおよび、その後の座学に取り組んでもらいました。
特別講師として、470級でオリンピックキャンペーンの経験と海外大会でも優秀な成績を修めた経歴のある、磯崎哲也・小泉颯作の両氏に来ていただいた上で、選手と一緒に乗艇して頂き、コーチングと競走をしてもらうことで、若い選手達にはトップ選手との走りの違いを感じてもらうことは勿論のこと、自分たちよりも実力の優る相手にどうやったら競り合っていけるのかを考える、良いきっかけになったようでした。
若い選手たちがトップレベルの選手と競い合うレベルに達するには、トップレベルの選手に競り勝つためのタクティクスをどう積み上げていけるかが重要であり、今後ハイレベルな海外勢とのレースシーンで必ず活きるスキルになってきます。
470クラスにおいて、日本チームは世界の中でもランキング上位に位置し続けており、その強みを生かして、今後も特別講師・ナショナルチームの招集を行い、高レベルでの強化が行える環境づくりを行って参ります。
⑦合宿の様子
Report & Photo by オリンピック強化委員会