期間:2023年8月17日(木)~8月27日(日)11日間
開催地:和歌山セーリングセンター

8月HOPE合宿を和歌山セーリングセンター(NTC)にて実施しました。
今回は、HOPE BASICの8回目とHOPE ADVANCE/RACINGの7回目を合同で行いました。選手たちはそれぞれ、国体予選やインターハイ、420ワールド、ILCAユースヨーロピアン、セーリングワールドカップ(オランダ・ハーグ)など、レース経験を積んできた直後ということもあり、今合宿ではその振り返りや今後の目標設定、短期〜中長期プラン作成などに取り組んでもらいました。
自分が勝負していくクラス(艇種)やポジション、また具体的に何年に開催されるオリンピックをターゲットにし、キャンペーンに必要になってくることや、今すべきことなどを明確化してもらい合宿に励んでもらいました。

▲8月HOPE合宿 開式の様子
▲合宿拠点となる和歌山セーリングセンター
▲毎朝のウォーミングアップの様子
▲朝のトレーニング
▲合宿参加選手 集合写真

【セーリング講習】担当講師:山田コーチ・市川コーチ
今回は技術的な講習ではなく、オリンピックキャンペーンそのものにフォーカスした講習を行いました。どれだけの時間や資金、環境が必要になってくるのか、今の自分に足りないもの、これから準備しなくてはいけないことが何なのかなど、選手たちには自分の将来を具体的にイメージしてもらい、これからの活動の指針をそれぞれクラス担当コーチと相談しながら作成、全員の前で発表してもらいました。
また、トレーナーさんなどのスタッフを面接官に仮想設定して、選手それぞれにスポンサー獲得の為のプレゼンも行ってもらい、自分と競技をいかにリンクさせて企業に魅力的な展開が出来るのかなども学習・経験してもらいました。

▲セーリング講習の様子 オリンピックに向けた具体的なキャンペーンについて考えました

【ルール講習】講師:吉本ジャッジ・林ジャッジ
今合宿では、選手それぞれが様々な大会に出場した直後ということで、実際にHOPE選手が経験したケースの共有や解説を行いました。また、初めての取り組みとして、より実践的な能力向上の為にこちらで提示したケースを題材に、決められた時間内で抗議書を作成/評価する取り組みを毎日実施しました。ジャッジの方から採点とレビューをタイムリーに行っていただき、自分の抗議書が要件を満たしているのか、何点と評価されるのかが明確に分かるため、選手たちも意欲的に取り組んでいる様子でした。
また、今回Basic選手は日本語、Advance/Racing選手は英語での抗議書提出を義務付け、より実戦を想定したかたちになるよう工夫を行いました。、来合宿以降は更に求められる内容をシビアにするなど、ルールやインシデントに強い選手への育成方法を考えていきたいと思います。

▲ルール講習の様子

【フィジカルトレーニング&ケア】講師:鈴木トレーナー・岩田トレーナー・石井トレーナ・山口トレーナー
フィジカルトレーニング、ケアの方では、計4名のトレーナーさんにお世話になりました。
また、今合宿中にはHOPEプログラムの選手評価項目の1つと定めているフィジカルテストも実施しました。選手それぞれが合格基準の数値を満たしているのかを厳密に計測し、今後のフィジカル要素の課題なども明確化、選手に共有を行いました。
今回のセーリング講習で大会結果の振り返りや、オリンピックキャンペーンについてのプラン立てをした際にも、多くの選手がフィジカル向上や増量などの課題を持っていました。コーチ、トレーナーとで協力しながら、選手たちがそれぞれ自身のクラスで戦える体格を獲得できるプロセスを更に明確に定め、目標に向かっての適切なサポートをしていけるように考えていきたいと思います。

▲フィジカルテストの様子
▲Basicフィジカルトレーニングの様子
▲Advanceフィジカルトレーニングの様子
▲高負荷のトレーニングに取り組む男子選手
▲トレーナーさんが選手の能力に適したトレーニングメニューを考えてくれています

【海上練習】講師:各クラスコーチ
台風一過の合宿期間中は天候も風も不安定ではありましたが、その分きっちりブリーフィングの時間を設けて各クラスに分かれて効果的な練習を行うことが出来ました。
HOPE合宿では各クラス1艇ないしは2艇をコーチそれぞれが見るため、ほぼマンツーマンでのコーチングが可能となっています。選手それぞれの課題を明確化し、そこに向けた練習方法、陸上でのトレーニングも含めた効果的なメニューを選手には日々こなしてもらえるように工夫しています。それぞれが持ち寄る教材や、海上練習での動画などを使いながら、毎日しっかりブリーフィングを行い、選手には感覚的なだけでなく理論的にも知識や原理、テクニックを理解してもらうように努めています。

▲海上練習の様子 Formula Kite 唐門紘選手
▲29erクラス練習風景
▲iQFOiL 大島朱莉選手
▲海上練習の様子
▲470級 2ボートでの海上練習

【気象講習】講師:岡本講師
選手には毎日、気象の発表と振り返りをしてもらい、岡本講師からも毎日のレビューとフィードバックの共有を行いました。
また、実際に対面での気象講習も行っていただき、風の吹く原理や雲の種類による違い、地形の影響など、基本的で大事な要素をしっかり再学習してもらう講習をしていただきました。
夏のレガッタシーズンで経験したシーブリーズのこと、グラディエントや雲、台風の影響など、実際に選手がレースや合宿中に経験している事象を具体的に解説していただいたことで、選手たちの毎日の気象発表の内容もより詳細で自身の分析を踏まえたものに変わっていったりと、講習を通して選手の成長を感じ取ることが出来ました。

▲毎日の気象発表/振り返りの様子

【メンタル講習】講師:高士講師
メンタル講習は、Basic対象とAdvance/Racing対象で分けて講習を実施しました。
Basic対象の方では「緊張とパフォーマンス」をテーマに、セーリング競技としてどの程度の緊張を保つことがベストなのかを選手に考えて貰うとともに、選手それぞれで異なる緊張の度合いをベストに近づける為のセルフコントロール方法などを講習を通して学習しました。
Advance/Racing対象の講習では「ペアやコーチとのコミュニケーション」をテーマに、コミュニケーションの上で重要となる自身を正しく認識することを学び、複数の問診から選手に自己診断を行ってもらいました。メンタル講習で再三学んできたジョハリの窓、その4つの窓のうちの1つである「自己が認識している自分」をまずは正しく知ることが、良いコミュニケーションにおける重要な最初のステップになります。

▲Basic選手対象 メンタル講習の様子
▲Advance/Racing選手対象 メンタル講習の様子

【栄養講習】講師:武田講師
武田講師からの栄養講習は、夏の時期に課題となってくる水分補給の方法などについて講義を行っていただき、また選手それぞれの尿検査と数値の計測なども行いました。
汗などによって失われる体内の栄養素をいかに効果的に補給し、自身のパフォーマンスを良い状態でキープ出来るかはスポーツ選手にとって重要なスキルのうちの1つです。レース時間も期間も長いセーリング競技においては、パフォーマンスの維持は毎レガッタ中の大きな課題であり、しっかりした知識や実践力を身に付けてHOPE選手たちには遠征に行ってほしいと思っています。また、栄養講習を通して自身を構成する栄養素などについての知見を深めていってもらい、今後のトレーニングと体作りにも効果的な食事や補給をしていって貰えればと思います。

▲栄養講習の様子

【リペア講習】講師:宮崎講師
今回初めての試みとして、リペア講習を行いました。
普段の練習から海外遠征まで、道具を使うセーリング競技において日々のメンテナンスや修理といったスキルはトップセーラーに必要な能力の1つです。自分達が普段乗っている艇種の材質を深く理解すること、またどういったもので修理していくのが正しいのか、修理やメンテナンスに適した道具とその正しい扱い方など、基本的なボートリペアのいろはを講習していただきました。また、修理薬剤の中には可燃性のものや、硬化する過程で発熱して火事を引き起こす危険性のあるものなども存在します。選手たちには、それぞれの正しい扱い方や、適切な処理の仕方などについても学んでもらいました。
今回はFRPやカーボン、メタルについて初歩的なことを学びましたが、次回以降は実際に修理の過程を実践しながらの講習などを企画していく予定です。

▲リペア講習の様子 実際に工具の扱い方なども学びました
▲トレーナー陣によるフィジカルテストの基準(認定条件)についても説明
▲全体集合写真

次回9月のHOPE合宿は、Basicは鳥取県境港、Advance/Racingは和歌山セーリングセンターで行われる予定です。年末の座間味合宿に入る前に基礎的な技術や知識をしっかりと身に付けて、ボートスピードとフィジカルを強化する準備を進めていきたいと思います。

Report & Photo by オリンピック強化委員会

日本スポーツ振興センター

本合宿は、スポーツ振興くじ助成金を受けて実施されています。