420 World
2011年 420ジュニア世界選手権大会
Report & Photo by 鈴木 誠
日 程:2010年12月27日~2011年1月5日
開催地:アルゼンチン・ブエノスアイレス
出場選手:
●男 子
村田俊彦・田中賢太郎組(福岡第一高等学校)
●女 子
角田きあら・古屋綾乃組(葉山町セーリング協会)
帯同コーチ:鈴木 誠
大会サイト:http://www.yca.org.ar/
チームワーク抜群の高校生男女2チーム
準備万端で本番に
当地には24日夜に到着しました。延々32時間のフライトでした。長いフライトで選手の体調を心配しましたが、全員思った程、時差ボケもなく順調です。気候は、暑いですが湿度が低く日陰に入ると涼しく感じます。治安については、貧富の格差があり夜の外出は危険のようです。
到着後、就寝中大きな音が何回も鳴り、「銃声では?」と選手も怖がっていましたが、クリスマスイブということで花火をどこかであげていたようです。
食事は安い、量が多い、おいしいと3拍子そろっていますが、注文する際スペイン語しか通じないお店が多いので困ってしまいます。その時はアドリブで選手も対応していました。
レース水域は、河川での開催ですが、川とは思えないような広さです。しかし水は茶色で選手も最初は困っていました。
チーム状況は非常に良く、男女共レースに対してのモチベーションは高くなっています。特に男子チームは自分達のことだけではなく女子チームのことも気にかけてくれて色々なアドバイスをしていました。コーチとして見ていると、初めて一緒に海外遠征をしているチームとは思えない程、まとまっていると思います。心強い限りです。
27日は計測を行いましたが、チャーターボート艇も計測を行う事になり2艇とも重量が軽いため、錘(おもり)をつける事になりました。その他は問題なく計測は無事通過しました。28日は開会式があり、盛大に行われました。
いよいよ明日からプラクティクスレースが始まり本番に入ります。選手一同、準備万端でレースに望みたいと思います。
4名の高校生チームにご声援をよろしくお願いいたします。
Practice
プラクティスレースでそれぞれの課題を確認
12月29日、今日はプラクティスレースです。
男子56艇、女子41艇のエントリーがあり、それぞれ別スタートでコースはトラベゾイドで行われました。
現地入りしてから良い風が吹いていましたが本日も南東の風、12~16ノット。レースのポイントとしては、「順位は気にせずスタートすること」「他艇とのボートスピードを確認すること」を重点に臨みました。
男女共、最後までフィニッシュする艇は少なく、あくまでも本来の意味の調整レースでした。
男子チームは「スピードは問題ない」が、マーク付近の展開を誤るとブランケットから抜け出せない状況になり「要注意」とのことでした。
女子チームはスタート後のスピードがなく、そのスピードアップが課題となりました。
天気も快晴の日が続き、風も午後に入ると強くなる傾向があり、明日からの本レースが楽しみです。
ハーバー内のお店で選手がお気に入りです。こんな動物(イグアナ)もいます。
1日目
レース初日
男子 9-30の発進
女子はトラブルでDNC-DNC
12月30日、いよいよレースが始まりました。
今回はエントリー数が少ないため(男子:56艇・女子:41艇)、予選レースがなく男女共12レースの戦いになります。
第1レースのスタートは14時に変更になりました。やはり午後になると強風になり、レースは南東、16~19ノットのコンディションで行われました。
男子 村田・田中組は下1から最高のスタート、左海面を延ばし上マークをシングルで回航、息の合ったパンプを行い下マークでは5位、2上では順位を落としましたが9位でフィニッシュ。
女子 角田・古屋組はアウター寄りから良いスタートをしましたが、スピードがなくファースト
タックは逃げのタックから入る展開となりました。上マークは30位前後を回航。その後、最終下マーク回航直前に沈をしてしまいました。さらに悪いことに、水深が浅いためマストが河底に刺さり、曲がってしまいました。レースは断念せざるを得ません。1.5m位のうねりで波長が短いため、ボートコントロールが難しいようです。
第2レースも南東・17~19ノットで行われました。
男子組は同じく下1からのスタート、しかしスタート後、不運にも風が右にシフトしタックポイントをつかめず上マークは30位前後、その後も順位は変わらず30位でフィニッシュ。
女子組はやはりマストの損傷が大きく、ハーバーに戻りマストを直す事にしました。
ハーバーに戻ると、同じようなマストトラブルがあったチームが結構いて修理におわれていました。
初戦からトラブルになり、選手も精神的にダメージが大きいと思いますが気持ちを切り替え明日の準備をして巻き返しをはかります。
2日目
それぞれの課題を見つけた2日目
もっとスピードをつけよう
大会2日目も14時スタート、1レースのみ行いました。
第3レース、南東・17~20ノットの風。当地は本当に良い風が吹きます。男子組はそれに対応するべく、レーキをダウンさせて臨みました。
スタートは本部船寄りを狙いに行ったのですが、位置取りが悪く一線からのスタートができず逃げのタックからの展開、上マークは30位前後、フィニッシュは33位でした。
風傾向として右にシフトしていくことが多いようです。
女子組は前日のアクシデントがあったので、沈を恐れてしまうのではと気がかりでしたが、気持ちも切り替わった様子がうかがえ、安心しました。
スタートについては良いスタートでしたが、やはりスピード不足。上マーク30位前後でフィニッシュは32位でした。順位はけしてよくありませんでしたが、ようやく初めてのフィニッシュを果たし、これで選手も落ち着いていくと思います。
○村田コメント
「世界の選手達にはボートコントロールやボートスピードが優れている人が多いのですが、大会期間中にレベルアップをはかって、残りのレースもしっかり戦っていきたいと思います」
○田中コメント
「ランニングでのスピードは悪くないのですが、クローズでのスピードアップが課題です」
○角田コメント
「上位選手のクローズの速さにかなり驚きました、そのスピードに勝てるように、あと9レースを悔いなく終わるようにしたいです」
○古屋コメント
「スタート後のスピードをつけることと、波に対してのバランスをうまくとることができないので、その点を2日以降、改善していきたいです」
今日は大晦日。大会運営側の配慮でニューイヤーパーティーを開催していただき、我々も参加しました。パーティーは盛大に行われ、田中賢太郎が人気者になり外国セーラーとの交流も良くとれていたと思います。
■総合成績:2日目終了時
●男 子
村田俊彦・田中賢太郎組 9-30-33 21位/56艇
●女 子
角田きあら・古屋綾乃組 DNC-DNC-32 38位/41艇
成績サイト
3日目
大会3日目も強風の洗礼
あけましておめでとうございます。
昨日はレイデー元旦ということもあって、開いているお店は少なかったのですが、選手達と町を散策し、お土産を購入して気分転換を図りました。
今日1月2日は3レース予定。南東の風が吹いています。
このシリーズの特徴は大きな振れもなく、上スタートし右海面を延ばすと良い結果がでており、選手も特徴を掴みかけているのですが、16ノットを超えてくるとボートスピードに差がつき、思うようなコース取りができていないようです。また、沈をしてしまうとマストが刺さってしまい、すぐデスマストになってしまいます。連日デスマストがでている状況です。
第4レース 120° 16~18ノット
第5レース 120° 24~26ノット
第6レース 120° 26~34ノット
男女共、今日のレースはボートスピードに苦労していました。
第6レース最高34ノットが吹きスピンアップしている艇は少ない中、男子チームは中位から積極的にスピンアップをしました。しかし、バウが波に突っ込み、その後沈。起こしてみるとマストが折れ、メインセールも破損していました。
女子チームは、このサバイバルレースの中、沈をせず第6レースでは22位と健闘しました。
今日もたくさんのデスマストがあり、ハーバーではマストの調達に右往左往している選手が多くいました。幸い日本チームはナウティベラに最後の一本があり今日中に整備することができ、明日のレースには支障なさそうです。
連日の強風で、選手も疲れがでているようですが、後半6レース少しでも世界のスピードに近づき、良い結果を残せるよう頑張っていきます。
■総合成績:3日目終了時
●男 子 56艇
1位 アルゼンチン
2位 チリ
3位 スペイン
4位 イタリア
5位 イギリス
35位 村田俊彦・田中賢太郎組 9-30-34-43-43-DNC
●女 子 41艇
1位 フランス
2位 イギリス
3位 ドイツ
4位 アルゼンチン
5位 イタリア
32位 角田きあら・古屋綾乃組 DNC-DNC-32-28-29-22
成績サイト
4日目
明日につながる「試練」
1月3日、2レース予定で14時からのスタートが1時間早めて13時からのスタートになりました。夕方からは吹き上がるので運営側が配慮したのかもしれません。好天、南東の風。現地入りしてから雨はなく、天候には恵まれています。
7レース 120° 18~22ノット
8レース 130° 22~26ノット
今日も強風となり、男子チームは昨日のトラブルからマスト、メインセールを交換し出場しました。セッティング等の不安はありましたが、問題はなかったようです。
2レースとも上スタートをして、右海面を狙っていましたが、7レース目はスタートの位置取りが悪く出遅れ、8レース目はまずまずのスタートを決めました。ボートスピードは連日の強風下で徐々にですが良くなり順位も上がってきました。
女子チームはスタートは本当に良いのですが、ボートスピードがないのが残念です。その中でも中位でフィニッシュしてきているので今後の走りに期待したいと思います。選手達は日本のユースの中ではトップクラスの実力を持っていると思いますが、強風下では「世界で通用しない」ことを真摯に受け止めています。あと4レース残っていますが、何が足りないのか、どう工夫すれば良いのか考えています。
選手達の試行錯誤は明日の結果につながってくると思います。
■総合成績:4日目終了時
●男 子 56艇
1位 アルゼンチン
2位 イタリア
3位 チリ
4位 スペイン
5位 英国
37位 村田俊彦・田中賢太郎組 9-30-34-43-43-DNC-33-27
●女 子 41艇
1位 フランス
2位 英国
3位 ドイツ
4位 アルゼンチン
5位 チリ
31位 角田きあら・古屋綾乃組 DNC-DNC-32-28-29-22-26-24
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5日目
日々進化を模索する日本チーム
1月4日、2レース予定で13時からのスタートです。お昼頃まで曇りでしたが、その後晴れ。南東の風がまた吹いています。
9レース 120° 15~18ノット
10レース 120° 17~22ノット
男子チームは色々考えた結果、チューニングを変えてレースに臨みました。
2レース共、上スタートをして、第9レースでは、上マークを10番台で回航、ボートスピードも良くなったようで16位フィニッシュ。このままでは終われないという気持ちと創意工夫が良い結果につながったと思います。
第10レースでは中位での回航でしたが、最終下マークでイタリア艇とルームの要求でプロテスト、その後ブランケットから抜け出せず順位を落としてしまいました。プロテストについては、私もオブザーバーとして同席、村田の必死の英語と正当性が認められイタリア艇はDSQとなりました。
女子チームは第9レース、良いスタートをしたと思いましたがリコール。選手達もそれを自覚しており、解消してからの展開をはかりましたが、やはりこのレベルでのレースでは解消してからの追い上げは難しかったようです。
第10レースはよいスタートをし、期待したのですが、やはりボートスピードが悪く結果は良くありませんでした。強風下でのセールトリム、ハンドリング等で上位との差がありそのへんは選手も理解しているので少しでも上位の走りに近づくようレベルアップをしてもらいたいです。
明日は最終日、良い結果を期待し選手が集中できるよう、しっかりとしたサポートしていきたいと思います。
■総合成績:5日目終了時
●男 子 56艇
37位 村田俊彦・田中賢太郎組 9-30-34-43-43-DNC-33-27-16-(訂正依頼中)
●女 子 41艇
31位 角田きあら・古屋綾乃組 DNC-DNC-32-28-29-22-26-24-32-30
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最終日
多くのことを学ぶことできたワールド大会
今後のセーリング活動への「励み」
5日、いよいよ大会も最終日となりました。今日は朝から久しぶりの雨になりましたがハーバーに着くと雨はあがり日差しがでてきました。
風もなく、13時スタートが延期され陸上待機、14時頃からめずらしい北西の風が吹いてきて、1レースのみ行われました。
11レース 320° 7~9ノット
初めての順風のレース。選手も連日の強風から開放され精神的にも落ち着いた雰囲気でした。
男子チームは、28以内(フリートの半分)まで順位を上げたいという意気込みで臨み、女子は順風条件でボートスピードが上位の艇にどの程度ついていけるかを試す機会になりました。
男女共、最終レースは満足のいく結果ではありませんでしたが、11レースをこなし充実感はあったと思います。
強風シリーズとなった今大会、デスマスト、プロテストなど選手は大変苦労しましたが、自分達だけで対応してきた事は今後に役立つと思います。
今大会出場にあたり関係者の皆様には何かとお世話になり御礼申し上げます。選手も大変貴重な経験をさせていただき感謝しています。
最後に選手のコメントです。
村田 俊彦
目標だった優勝とは程遠い結果となってしまいましたが、今後の課題と世界のレベルを知る事が出来てとても良い経験になりました。スタート、ボートスピードも日ごとに良くなり、今後の取り組み次第では世界と戦っていけると感じたシリーズでした。
今大会、出場する為にJASF、高校関係者の方々に大変お世話になりました。このような機会をいただき本当にありがとうございました。
田中 賢太郎
この大会を終えて、体力作りからしっかり始めて、そこから変えていき次の大会に向けて頑張っていこうと思います。
そして今回このような機会を与えていただきJSAF、高校関係者の皆様に心から感謝しております。
ありがとうございました。
角田 きあら
11レースを戦い終えて、成長した部分、自分に足りない部分を発見してとても良い経験になりました。もっと努力をして、また世界の人達と戦えるようにたくさん練習を積んでいきたいと考えています。
古屋 綾乃
全体的にスタートは良くできていたと思います。まだまだ足りない事が多いですが今後の練習で克服していきたいと思っています。
■大会総合成績
●男 子 56艇
1位 アルゼンチン
2位 イタリア
3位 チリ
4位 スペイン(ジュニア)
5位 英国
37位 村田俊彦・田中賢太郎組 9-30-34-43-43-DNC-33-27-16-37-40
●女 子 41艇
1位 イギリス(ジュニア)
2位 ドイツ
3位 フランス(ジュニア)
4位 アルゼンチン
5位 チリ(ジュニア)
31位 角田きあら・古屋綾乃組 DNC-DNC-32-28-29-22-26-24-32-30-26
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