ダッチユースレガッタ 2011
Dutch Youth Regatta 2011
Report by 重 由美子
日 程:2011年6月1日~5日
開催地:オランダ・ウォルクム
参加選手:
●レーザーラジアル
男子:國政 真平(玄海セーリングクラブ)
女子:土居 愛実(神奈川ユースクラブ)
●420級女子
角田 きあら・古屋 綾乃組(葉山町ヨット協会)
帯同コーチ:重 由美子・漆山 阿弥
開会式昨年、ISAFユースワールドに参加した選手たちの最初のビックレースが世界選手権で、緊張してうまく実力を出し切れなかった反省から、今年は、ISAFユースワールド前に海外のレースに参加し、環境とレースになれ、課題を見つけて、ISAFユースワールドまでの残りの練習期間に活かし世界選手権に向かうためにこの大会に参加することを希望し、JSAF,保護者、学校関係者、所属クラブ等のご協力により、貴重な機会を与えていただき、ヨーロッパのユースの大会では、最大規模のこの大会に参加させていただきました。
大会の規模は、ジュニア・ユース関係のクラスをほぼ網羅し、OP、カデット(2人乗りでスピンがついたOPを50cmほど長くしたような形の船で、ジュニアの2人乗りのトレーニングボート)、スプラッシュ(レーザーに移る前のセーラーの1人乗りのトレーニングボートで、レーザーより、50cmほど全長が短く、マストを立てきれないジュニアセーラーのためにグループ付きで、メンハリでセールを上げ下ろしできる)レーザー4.7、レーザーラジアル、420、29er、テクノ293の6種目(OPは、年齢により2クラスに分かれている)910名の参加者、800艇、22か国と人口約4000名の小さな街ウォルクムにユースセーラーとその家族、役員であふれかえって、ウォルクムの街は、さながらユースセーラーズタウンと化しています。
大会海面も4海面を使用、オランダのISAFユースワールドの選考レースにもなっており、他にも選考レースとしている国が2か国ありました。オランダは、大会運営もさすがにレース文化の根付いた国で、受付から、レースまで、コンスタントに無駄なく、無理なく、手際よくスムーズに行われています。
ユースの大会だけに、サポートボートがあふれているにもかかわらず、各エリアに、組織委員会の救助艇が4艇は、張り付いていて安全面にも気を配っている姿が窺えます。
また、今回は、震災のことを、いろんな方たちが、質問され、心配していただき、寄付の申し出もあり、地元の新聞にも日本人がはるばる来てくれたこと、震災にものともせずがんばっていることを大きく取り上げていただき、ヨーロッパのセーラーの心使いをひしひしと感じ、日本人は、震災国に住んでいる当事者として、全員でがんばっていかなければならないと痛感しました。
選手は、28日夜に現地入りし、29日艤装、(暴風雨のため乗れず)、30日、31日、1日と練習し、2日のレースに備えました。 暴風雨が続いてハードなレースが展開されたデルタロイドレガッタの直後で、オランダらしからぬ、暖かい穏やかな陽気で、第1日目が始まりました。
いざ出艇!きあら・あやの組 第1日目は、NE4から5.5m
軽風が得意な日本チームが、順調な滑り出しをしました。
420女子が、第1レース抜群のスタートと、スピード、コース引きで2位。第2レースも最後まで2位をキープしていましたが、回航動作のミスで抜かれて5位になったことが、残念でしたが、今後の1か月で回航動作をきちんと練習すれば軽風では十分戦える能力を持っていることを証明してくれました。レーザも好成績を残し、軽風では、ワールドでも上位を狙えそうです。
第2日目は、NE5mから始まり、1レースごとに徐々に風が上がり始め、3レース目には、6から8mくらいまであがってきました。
420女子は、1レース目でスピンを大きく破り使用できず、スピンを張らずのレースで順位を落としました。
レーザー男子も9位でフィニッシュできたレースがOCSでした。
その後のレースも、トラブルで沈寸前まで追い込まれ、順位を落としてしまいました。
レーザーの女子は、昨年よりも順風のクローズで戦えるようになり、5~6mまではトップ集団にくらいついていけますが、6mから徐々に落ち始めます。もう5kg体重があれば…というところです。課題は、フリーです。日本で敵がいないフリーでも、波が出てくると海外の選手に遅れ始めます。しかし、課題を見つけ、トライし、レースをするごとに徐々において行かれなくなってきました。課題の発見と克服の早い選手です。
第3日目も、5mNEから徐々に風が上がり始め、最終レースは、6から9mとなりました。今日は、昨日までと違い、順風と強風の風の強弱が一日続く日で、その分、シフトも周期的に15度ほどあり、レーザーは、それを読み切れず、順位を落としていました。
日本でのレースでは、同じレベルの大集団はおらず、独り勝ちの土居選手も、巧みにコースを読んでくる集団に10度のシフトに乗り遅れ、得意の風域でも大きく順位を落とすケースも見られ、レベルの高い中でコースを読み切ることの難しさを痛感していました。
日本で味わえない課題を見つけ、ここに来てよかったと痛感できる1日でした。
420も、風が上がるにつれ、体力不足、筋力不足とともに、回航動作の失敗で大きく順位を落とし、沈してスピンポールを流し、順位を大きく落としていました。
風の強弱があったため、その強弱に合わせたセッティングに苦労しスピードに今一つ乗り切れていませんでした。彼女たちの素晴らしい点は、スタートです。臆せず、抜群のスピードでスタートしていました。
今日までの結果で、オランダのISAFユースワールドの代表が決まり、代表となった選手は、盛大に表彰され、シャンペンとともに祝福を受けていました。レースの最終日は、明日ですが、ユースワールドの代表は、本日までのレースで決定し、表彰し、表彰日を分け、他国からも多数参加してくれている選手たちのために大会そのものの表彰式の盛り上がりを考え、オランダの代表決定式は、前日に済ませるという組織委員会の配慮でした。選手たちは、海に落とされユースセーラーの手厚い祝福を受けていました。代表選手をここまで、盛大に表彰する、そしてそれをみんなで祝福する姿は、ISAFユースワールドの地位とユースセーラーの夢を追う姿を垣間見ることができ、日本にもその日が来ることを願い、胸が熱くなりました。
【選手のコメント】
角田 きあら(420クルー)
今日までの3日間のレースで改善すべきところは、スピンアップからの動作とフリーの安定した走りで、特に吹いてくると細かい基本動作が雑になっているので最終日は、いつもより基本動作を意識したレースをしていきたいです。
古屋 綾乃(420クルー)
初日は、弱風から順風だった。2位、5位とよかったのですが、2日目、3日目から私たちにとって強風となったので、初日のように良いコースを引くことができませんでした。明日も強風が予想されていますので、昨日と今日できなかったことをできるようにしたいです。明日は、最終日なので、今まで以上に悔いが残らないように頑張ります。
土居 愛実
今回のレースを通して苦手としていた強風の弱点を改めて見直すことができた。前に比べて、クローズでのスピードはだいぶ良くなったけれど、海外のレースに出るといつもスネーキングの時の体の使い方、ヒールバランスをもっと練習したいと思う。日本のレースよりも艇数が多いため集団との位置関係などをいつも以上に意識してコース展開しないと一気に順位を落としてしまう。今回たくさんの課題を見つけ、ISAF本番までに改善していきたいと思う。
國政 真平
今回の大会で一番まず最初に感じたことは、強風でのクローズホールドのボートスピードのなさだと思いました。体格が大きくないということもあると思いますが、その前に基本的なハンドリング、ヒールバランス、セッティングが100%にできていないということが大きいと思いました。海外の選手は、その基本ができていてなおかつ風のシフトやブローの位置などをよく見ているのでスピードがあり、コースミスも少なくできているのだと思いました。中風域では、スタートが決まればボートスピード負けすることもなくうまくレース展開ができていたと思います。しかし、まだ前を走っている選手に比べると艇のバランスが取れていないのでのぼり角度がとれていないと思いました。フリーでは、スネーキングをする時にうまくアンヒール、ヒールが使うことができずに失速してしまい、遅れてしまっていました。あと海外の選手は、波に続けて乗っていて波からおりて、失速することがなくどんどん前に出て行っていました。フリーは、また日本に帰ってから一からやりなおして鍛えていきたいと思います。今回はいろいろなことが学べたので、これをISAFユースワールドチャンピオンシップに活かしていきたいと思います。
【各クラス 成績】
●レーザーラジアル級 男女混合〔6か国/48艇〕
國政 真平 24-10-OCS-16-35-34-31-27 28位
土居 愛実 13-5-9-25-18-18-20-19 13位
●420級 男女混合〔7か国/42艇〕
角田・古屋組 2-5-35-17-BFD-14-31-33 22位
大会サイト:http://www.dutchyouthregatta.org/
ISAFユースオランダ代表オランダならでは桟橋付ハウスより出航!
IJエリックさん宅に招待を受けて
オランダラジアル女子代表とショット
420級も数多く参加しています最終日の5日は、10時ごろにサンダーストームが来るという天気予報により、1時間の延期となりましたが、予定より来るのが遅く、2時間延期、さらに延期と変更になり、12時半ごろにレースの中止が決定されました。それから間もなくして雷雨となりました。したがって、前日までの成績が最終成績となりました。
大雨の中の船積を終了したころに、閉会式が盛大に行われ、大会の幕を閉じました。
前日の反省から満を期してレースを待っていた選手たちには、残念な最終日でしたが、苦手な強風域の中、また、ISAFユースワールド選考がかかっていて、必死に戦う海外の選手たちを目の当たりにした日本選手は、3日間で日本のレースでは味わえないハイレベルな選手の中で、セーリング、戦術、戦略を学びました。同時に自分の現在の長所と欠点を明確にでき、ISAFユースワールドへ向け新たにトレーニングする覚悟を得られた大会となったと思います。送り出していただいた皆様、ありがとうございました。
高校生にとって勉学に対しても貴重な時期に費やした時間が無駄にならず、その成果が出るようISAFユースワールドへの残された1か月を密度の濃いものとし、努力していきます。
【選手のコメント】
國政 真平(レーザーラジアル級男子)
今回の大会では、今までにないことを多く学べてよかったと思う。特に、世界で通用する所と、しない所がはっきり分かり、世界選手権に活かしていきたいと思う。今回は、強風のレースが多く、まだまだ、自分の体力、体重のなさが自覚できた。軽風から中風ではうまくレースをすることができたのでこれを続けたい。
土居 愛美(レーザーラジアル級女子)
今回のレースは、苦手な強風シリーズだった。今までの練習・増量の甲斐があってか前よりは少し前を走れるようになってきた。どちらかというと、クローズのスピードというより、強風時のコース取り、フリーのスピードが問題ということがわかった。そして、風が強くなるにつれて、順位に対する貪欲さが欠けてしまうことがあった。ISAFまでに練習しないといけないことがたくさん見つかった。残り1ヶ月と時間がない分、今まで以上に
時間を有効に使い、トレーニングを行いたいと思う。今年は、去年の成績を上回り表彰台に立てるように頑張ります!!!!!
角田 きあら(420級女子スキッパー)
今回のユースレガッタで自分たちの良かった所、悪かった所やこれからの課題を見つけることができ、ISAFワールド前のとてもいい経験になりました。残り1ヶ月間いつも以上に一回一回の練習を意識して、自分の足りない所をなくし、最高のモチベーションで、クロアチアに向けていきたいです。JSAFの方々、今回はこのような機会を企画してくださって
ありがとうございました。
古屋 綾乃(420女子クルー)
初日のレースで、自分たちが引くコースが世界に十分通用することがわかってよかったです。ただ、2日目・3日目で強風になったとき、弱風の時のようにコースを考える余裕がなかったため、良いコースを引くことができませんでした。また、リーチング・ランニングでのスピンアップ、ポールチェンジ、スピンダウンがまだまだ遅かったです。
スタートは、1レースだけBFDがありましたが、その他のスタートは、自分たちが狙った場所から出ることがほとんど出来たので良かったです。
ISAFユースワールドまであと1ヶ月あるので、基本的な動作、回航が強風でもしっかりできるように、そしてもっと素早い動作ができるようにトレーニングをしていこうと思います。ありがとうございました。
勝者への祝福はオランダも同じ…
外国のセーリング事情もみることができました
オランダならではの風車