LaserJunior-1
レーザースタンダード・ジュニア世界選手権
兼 ヨーロッパ選手権 2011
World & European Laser Standard
Junior Championship 2011
Report : オリ特・飯島 洋一
Edit : オリ特・広報委員会
日 程:
7月16日:大会受付、計測
7月17日:大会受付、計測、プラクティスレース
7月18日~23日:レース
開催地:フランス・ラ ロッシェル
日本代表選手:南里 研二(佐賀県ヨット連盟)
帯同コーチ:飯島 洋一
大会サイト:http://www.srr-sailing.com/
18日からレース NT‐HOPE・南里研二 参戦
最高のシーブリースが皆を歓迎してくれます。「2011年レーザースタンダード・ジュニア世界選手権兼ヨーロッパ選手権」がフランス、ラ・ロシェルにて開催されます。ラ・ロッシェルはフランスの西海岸大西洋に面したリゾートです。フランスのリゾートといえば地中海側の南仏が一般的ですが、こちらラ・ロシェルは少し庶民的なリゾートといった感じでしょうか? たくさんの家族連れ、カップルが夏を満喫しています。
大会には次代を担うJSAF・NTホープの南里研二が参加します。南里は昨年のラジアルユースワールドで好成績を収め、意気揚々とスタンダードJr.ワールドに臨みましたが惨敗を喫し、まさかのシルバーフリートに終わりました。それ以降、今年に入って鹿児島のNT選考レース、江の島練習会、春のヨーロッパ遠征と、レーザースタンダードでの経験を積んで今年再びチャレンジをはかりました。
当地の海は干満の差が大きく、潮流が非常に速い水域です。また、午前中どこから吹いていても気温が上がり、午後から必ずと言っていいほどシーブリーズが吹き込み、夕方には16ノット位まで吹きあがります。
なお、今大会と同時開催でラジアルオープン世界選手権が開催され、この二つのレガッタ終了後はユース日本代表らが参加するレーザーラジアルユース世界選手権が引き続き行われます。
最高のシーブリーズが世界各国からのJr.ユース、ラジアルセーラーを歓迎しています。
まずは今大会、我々二人だけですが、がんばります。皆様の応援をよろしくお願いします。
昨年のリベンジなるか? 南里研二夏真っ盛り、ハーバーの駐車場では朝市です。
日本では考えられないようなヨットの数。ラ ロッシェルのヨットハーバー。
LaserJunior-2
南里 準備万端 明日からレース
もう一度、セールを張って各部のチェック、セール慣らしで明日の準備は万端です。7月16・17日
受付、計測が行われました。15日までの天気とはうって変わって、雨のラロッシェルです。南里は計測でナショナルレターの修正がありましたが、無事に通過し、16日中に受付を済ますことができました。17日も雨。強風でトライアルレースは中止となってしまい、南里は念入りにレースの準備を行うことにしました。
時間ができたことから船底磨き、各部のチェック、マーキング、テーピング、シートのほつれの点検、セールの慣らし、そしてスペアパーツの準備と念入りに準備ができました。シンプルなレーザーでメンテナンスを怠る選手が多い中、世界のトップ選手は準備に念を入れます。毎朝船を洗うメダリストやマストの曲りをチェックする選手など勝つ選手はやはり勝つべく準備を怠りません。今回は南里もその習いです。
17日の夜にISAFユースワールドに参加していた重コーチ、土居選手、國政選手がクロアチアから合流(重コーチ帯同)しました。彼らはほどなくレーザーラジアルユースワールドに出場します。これで男二人だけの生活から解放され、少し気分が晴れた南里は万端整い、明日からのレースに臨みます。レースは23日まで続きます。大会規模は39か国・147艇の大フリート。ヨーロッパ転戦で腕を磨いてきた南里の実力が試されます。
計測を待つ長い列。待ちくたびれる南里(手前)さすが美食の国フランス。主催者のランチは美味しそうな料理にチーズの盛り合わせ、白、赤ワイン。手を伸ばそうとしている併催のラジアルOPENワールドに参加の藤野。
念入りに船底を洗う南里。
1日目
南里研二 11-16 36位 発進
上マークを2位で回航。7月18日
レース初日の朝は曇り空で始まりました。昨日から続く強風で沖合は7~9mの絶好のコンデションとなっていました。
南里の1レース目はライン中央付近より非常によいスタートを切り、フリーな位置で左に展開していくことができ、上マークを2位で回航。しかし、ダウンウインドで走りに勢いがなく順位を下げて11位でフィニッシュしました。レース前の練習ではアグレッシブなダウンウインドを見せていたのですが、考えていた以上の良い順位のせいか少し臆病な走りになっていました。
続く2レース目はラインに着くのが少し遅れラインを正確に把握することができず、よいスタートを切ることができませんでした。そんな中でも1上20位中盤の順位をキープしてフィニッシュまでには16位まで順位を上げてきました。1レース目と2レース目は潮の流れが逆となりマーク付近は大混戦となりましたが、南里は前もって干潮の時間をチェックし対策を練っていたため無難に大混雑のマークを通り過ぎていきました。
南里からは「ヨーロッパのG1のレースに比べるとスタートがまるで楽です。周りの選手も飛びぬけて速い選手は何名かいますが、そのほかはさほど速いとは思いませんでした」と昨年からの成長を思わせるコメントがでました。とはいうものの今日はミスが多く、彼自身は満足していない様子で、レース終了後はダウンウインドの練習をし、夜は自分のセーリングのビデオを見て悪い点を探していました。
明日もよい風の中、潮流に翻弄されるレースとなるでしょうが、持ち前のアグレッシブな走りを見せてほしいと思います。
【大会成績/39か国・147艇】
南里 研二(佐賀県ヨット連盟)
36位 11-16
良いスタートを切った南里。ハーバーではJAPAN YOUTH TEAMがお出迎え。
2日目
南里 スタートに課題
2日目 OCS-BFDに沈む
7月19日
今日も昨日と同じよい風が残り、295°のマーク設定で2レースが行われました。
第1レース、南里は本部船寄りからスタートしましたが、失敗。少し出遅れる形でスタートしました。
そして、最後まで挽回することができずに25番くらいでフィニッシュを横切ったのですが、出遅れのこのスタートがなんとリコール(OCS)となっていました。南里がいた本部船寄りの集団がしっかり読まれていたようです。
続く2レース目のブルーフリートのスタートでは何と16艇がブラックフラッグで失格(BFD)となってしまいました。その中にまたもや南里のセールナンバーも含まれており、肩を落としてモーターボート(飯島)に寄ってきました。
「スタート時のスペースも春のヨーロッパのレースに比べると作ることができ、スタートしやすいはずなのに…うまくいかないです」(南里)
明日もよい風に恵まれる予報です。
南里の課題はスタート。これをクリアすれば前を走れるはずです。
【大会成績・2日目終了時/39か国・147艇】
南里 研二(佐賀県ヨット連盟)
93位 11-16-OCS-BFD
大会サイト:http://www.srr-sailing.com/
ポジションは作れるのに…うまくいかないスタート。ボードに書ききれないほどのブラッグフラッグルール失格者。中には南里のセールNOも。
3日目
3日目 苦戦が続く南里
7月20日
今日は朝から雨の一日でした。出艇していったときには4m程度だった風も2レースが終わるころには10mのブローも入ってきました。今日も上げ潮が強くゼネラルリコールを繰り返し雨の中、寒く長い1日となりました。
1レース目は先にスタートしていたブルーグループのゲートマーク回航(インナーループ)が南里のレッドグループのスタートと重なってしまい大混戦のままコースを回っていきました。この大混戦の中、南里は順位を上げることができず、25位となってしまいました。ほかのグループが重なった時の判断、大混戦の中でマーク回航、ダウンウインドの技術が問われる非常に難しいレースでした。
続く2レース目は1レース目に走りの悪かったダウンウインドを修正して9位で回航中下マーク付近で強いブローが入り、沈をしてしまい22位まで順位を下げてしまいました。
トップの選手たちはシニアの世界選手権に参加しても十分上位と争える技術を持っています。また、英国は上位に何艇も名を連ね、シニアだけでなくユース選手層が厚いことがわかります。この中で切磋琢磨し残った選手がナショナルチームとなりシニアの世界選手権で上位に名を連ねます。このような世代を通した選手層の厚さが英国の本当の強さなのかもしれません。
明日は予選最終日、彼らしい勢いのあるセーリングを期待します。
【大会成績・3日目終了時/39か国・147艇】
南里 研二(佐賀県ヨット連盟)
84位 11-16-OCS-BFD-25-22
大会サイト:http://www.srr-sailing.com/
苦戦が続く南里皆で共同生活です。食事の準備をする南里、藤野(OPEN ワールド参加)。
4日目
南里 グループ内初のシングルを取るも
ゴールドには残れず
7月21日
今日も、雨でした…大会予選最終日、選手たちはきりっと気合の入った面持ちで海面に向かいます。南里も今日はイエローグループということでいつにもまして事前のチェックを行いました。
・今日も昨日と同じで曇りで視界が悪い。マークの位置に注意。
・昨日と同じで大きなシフトがあるかもしれない。
・背中に書いてあるJAPANのロゴが見えなくなるくらいまでハイクアウトしよう。
・ダウンウインドで沈を恐れて、アグレッシブに走らないで抜かれるならアグレッシブに走って沈するほうが100倍よい。
と南里に言い聞かせてレースに臨ませました。
第1レースは6~8mの中集団から抜け出せず33位。
続いて行われた第2レースではスタートで出遅れタックして逃げる展開だったのですが、シングル後半をキープ。8位でフィニッシュしました。このレースは10m近くまで風が吹きあがりましたが、南里はこれくらい吹くと面白いように順位を上げてきます。ここまで吹きあがったコンデションになるとポテンシャルを発揮してよいスピードがあるようです。
初日、昨日の沈したレース、今日のレースもそう、リコールしたレースもそう、ふつうに走ってくれば簡単に10番そこそこで回ってこれるのに…。そうすれば、簡単にゴールドフリートに入れるのに…と思ってしまうほど南里はよい走りを見せます。
しかし、その「普通」に走ってこれないのがヨットレースの難しいところです。私も現役時代「普通」に走れませんでしたし、今回ラジアルユースワールド帯同の為にラロッシェルに先入りしている重コーチ(アトランタ五輪・銀メダリスト)も「普通に走れないのがヨットレース」と言っていました。
「普通」に走るにはよいスタートテクニック、少しだけよいスピード、よいハンドリングすべてが「普通」以上でないといけないのでしょう。これぞセーリングの奥の深さです。
今日ベストスコアを取った南里ですが、ベストスコアのレースを見ていたタイのコーチに「Did you watch his Japan logo?」と尋ねると即答で「YES!!!」と返事が返ってきました。明日は「YES」と即答されないように頑張ってもらいたいと思います。「普通に、普通に」です。
【大会成績・4日目終了時/39か国・147艇】
南里 研二(佐賀県ヨット連盟)
77位 11-16-OCS-BFD-25-22-31-8
大会サイト:http://www.srr-sailing.com/
今日ベストスコアを取った南里の上マーク回航。なかなか「普通」に走れない南里。
5日目
南里 シルバーFで11-3
進化を予感させる前向きな姿勢
モーターボートの女性の応援でハイクアウトをいつもの1.5倍がんばった南里。7月22日
大会5日目。久しぶりに晴れました。ハーバーに行くとAP旗が掲揚されていたのですが、すぐにシーブリーズが入りはじめ、予定どおり13:00にレースとなりました。
今日の南里は11-3と前を走ることができました。やはりシルバーフリートでは前を走りやすいようです。1レース目のコースミス以外は大きなミス(小さなミスはたくさんありましたが)が無く走り切りました。1レース目はダウンウインドで8艇抜き。2レース目はフィニッシュラインぎりぎりまでトップ争い、と最後まで粘り抜いた彼を今日は褒めてあげたいと思います。
レース終了後、南里はこの成績に満足することなく第2レース目のフィニッシュ間際の攻防を振り返り、なぜトップになれなかったのか?などさまざまなケースについて私に語りかけてきました。
こうした常に良い方法を考える前向きの姿勢はアスリートにとってとても大切なことです。今後の彼の成長を見守っていきたいと思います。
明日は最終日。この調子で残り2レースをしっかり走り切ってほしいと思います。
【大会成績・5日目終了時/39か国・147艇】
南里 研二(佐賀県ヨット連盟)
59位 11-16-OCS-BFD-25-22-31-8-11-3
大会サイト:http://www.srr-sailing.com/
準備を手伝う仲間。今日はISAFユースワールド代表の國政、土居が応援に駆け付けモーターボートに乗船しました。来週から始まるラジアルユースワールド代表選手たちも合流しました。
最終日
進化を見せた南里の後半
収穫大で大会を終える
ダントツでマークを回航する南里。フィニッシュ後、思わずガッツポーズ7月23日
今日はいつものように朝そよそよと吹いていた風が時間を経つごとに強まり、15時ころには10m近い風が入ってくるラロッシェルの夏らしい1日になりました。
今日の南里はとても頑張りました。1レース目、落ち着いたスタートの後、フリートをリードして左海面に向かいました。そしてトップで上マークを回航するとぐんぐん後続艇を引き離しトップフィニッシュを果たしました。
続く第2レースも第2上マークでトップに浮上、期待しましたがダウンウインドでブローチング。4位で最後のマークを回航しました。その後、フィニッシュラインまでの短いクローズで4艇の激しいトップ争いが行われました。トップ3艇はフィニッシュマーク側、南里は本部船側を攻め、本部船のスターンめがけてタックしてフィニッシュしていきました。この攻防で南里は3位フィニッシュ。今日は1-3と素晴らしい成績でシリーズを終えることができました。最終レースでトップこそ逃してしまいましたが、最後の最後まで諦めず、勝負したレースでした。いいレースだったと思います。シルバーで頑張って総合54位。私の言う「普通」を少し学んだのかもしれません。これからもひたむきにやってください。
これで2011年レーザーJrワールドチャレンジは予定12レースすべてをこなし、無事終了しました。
●レースを終えて
【南里のコメント】
「予選のリコールが悔しいです。でも、前みたいに簡単に沈をすることがなくなりました。また、以前に比べクローズ、ダウンウインド共に確実にスピードが上がっています。でも、もっとダウンウインドは速くならないと…バイザリーが怖くて苦手です。来年のJrワールドにも絶対に出て入賞します」
【飯島の総括】
「今回の南里を一言で表すと『もったいない』です。強風でよいスピードがあるにも関わらず、沈やそのほかのミスで順位を落としてしまいます。先日のレポートにも書きましたが、普通に走ることの難しさを改めて感じたレガッタでした。しかし、南里は私のアドバイスを素直に聞き入れて、フィニッシュまで諦めずに勝負しました。目標のゴールドフリートには及びませんでしたが、見ていて本当に楽しいレースでした。この経験と今大会フィニッシュラインまで諦めずに勝負した気持ちを忘れず、トレーニングに励んでほしいと思います」
【大会成績/39か国・147艇】
南里 研二(佐賀県ヨット連盟)
54位 11-16-OCS-BFD-25-22-31-8-11-3-1-3
大会サイト:http://www.srr-sailing.com/
ライバルのマレーシア選手と南里。マレーシア、南里、タイの選手と順位で仲良く並んでしまいました。いつも勝ったり負けたりだそうです。今後ライバル対決は長く、長く続きそうです。いつまでもライバルでよき友として戦ってほしいと思います。今大会のWinner。NZLの選手はシニアのワールドでもゴールドフリートに残る選手です。