2012年度ユースナショナルチーム候補選手強化合宿
兼
2013年ISAFユースワールド日本代表選考レース
2013年度RS:X シニアナショナルチーム候補選手 選考レース
2013年度Techno293ユース五輪強化候補選手 選考レース
Report : (総括)重由美子、(テクノ・RS:X)宮野幹弘
Photo:飯島洋一
Edit : オリンピック特別委員会 広報
4日間のレース予定が無風のため2日間で終了
オーストラリアユース代表チームと陸・海で有意義な交流
ユースワールド日本代表決まる
●参加選手
○420級:14(男子8、女子6)チーム
○レーザーラジアル級:20(男子13、女子7)選手
○RS:X級ユース:4(男子3、女子1)選手
○テクノ293級:7(男子4、女子3)選手
RS:X級シニア:10(男子5、女子5)選手
▲金メダリストのベリンダコーチ▲大会前半戦は良い風に恵まれました▲「レース前の気持ちについて」講習中オーストラリアISAFユース代表(420級男女、レーザーラジアル級男女)チームを招聘してのJSAFユースNT候補選手強化合宿と、ユースワールド日本代表選考レースが、3月23日~28日の6日間にわたり和歌山セーリングセンターにて行われました。
最初の2日間は強化合宿としてレース形式の練習を行いました。あいにくの陸風のシフトの大きい軽風で2日間とも練習を早めに切り上げました。
23日の夜の講習ではオーストラリアチームとの交流プログラムがおこなわれ、お互いに質問をし合い、日本選手も英語で頑張って質問していました。セーリング先進国オーストラリアのセーリング事情を同世代の選手から直接聞き交流を深め、シャイな日本選手らも少しずつ打ち解けていった様子が見られるなど意義ある時間でした。
25日からはレースが始まり、25日3~5m、2日目3~6.5mの陸風の左右に60度シフトの中、ブローの強弱も激しい非常に難しいコンディションのもと各3レースが行われました。
注目の激戦区420級男子は、昨年のISAFユース5位の岡田・宮口組(唐津西高)が第1レースで痛恨のリコールで戻るなど、実力はあるもののその後のスタートでも終始安全に構えすぎて後れを取る一方、軽風、シフトに強い山口の小泉・有岡組(山口光高)が、複雑に振れ回る風を的確につかみ、全6レースを安定したスコア(1-1-3-2-2-1)で収め、優勝しました。この守る側の岡田チームとチャレンジャーでまだ2年生という若さを武器に伸び伸びと自分たちの走りをした小泉チームとの熱い戦いについては、シドニー五輪女子470級金メダリスト、ロンドン五輪6位のべリンダコーチもそのレベルの高さに感心しているほどでした。これからの両チームの長く続く戦いが楽しみです。
今回9位となった420級男子のオーストラリアチームのスキッパーは、あのニッポンチャレンジスキッパーのピーター・ギルモアの子息で、今年16歳という若さです。オーストラリアの強風では圧巻の走りを見せていましたが、140kgの重量では、今回の中軽風シリーズでは、体を持て余した感じでした。
女子420級は、初日コンスタント(5-7-6)にスコアを伸ばした中山・池内組(唐津西高)が2日目、勝ちを意識しすぎてミスを連発、大きくスコアを崩し(10-9-12)、逆に2日目に調子を上げてきた深沢・馬渡組(函嶺白百合学園高/七里ヶ浜高)が1点差で優勝(7-9-8-7-7-7)しました。
女子は男子に比べるとまだまだ課題が多く残りますが、深沢・馬渡両選手は世界選手権の経験も豊富でこれからが楽しみな選手です。男女を通して今回総合2位となった女子のクラーク&スミス組(オーストラリア)は昨年のISAFユースワールド2位のチームで、昨年のこの大会では、他を半マークほど離して走ることが多々見られ、日本チームとの格の違いを見せつけましたが、今年は男子もなんとか対等に戦うことができ、日本チームもレベルアップした様子が伺えました。
男子レーザーラジアル級は、振れまわる風に強い高山大智選手(大分県・佐伯市立鶴谷中)が並みいる先輩を押さえ優勝しました。初日14-6-3、2日目もオーストラリア・アンダーセン選手と激闘の末1位を取るなど、すっかり波に乗りました。その一方、圧倒的に優位な位置にいた樋口碧選手(唐津西高)が第5レースまさかのフィニッシュライン間違いでDNFとなり、第6レースでもあせって、パンピングを取られ自滅してしまいました(2-3-2-1-DNF-9)。優勝候補の筆頭であった北村選手(静岡・聖隷クリストファー高)も自身の持ち味であるセオリーどおりに真ん中に返していくコース展開が今回の風では裏目に出て、順位を下げて最終学年での目標ISAF6位以内を成し遂げることはできませんでした(4-5-6-6-3-3)が、彼らが戦って負けて得たことは、きっと勝っていたときよりも将来大きいものとして彼らの成長をうながしてくれると思います。そう感じさせるくらいに真剣に戦った彼らの姿には胸を打たれるものがありました。
女子は、多田緑選手(唐津西高)がコンスタントにスコアを重ね、念願のISAF代表となりました(5-16-7-10-10-7)。苦手な中軽風シフトの大きい海面を少しは克服していったようです。
他の女子選手も頑張っていましたが小柄な選手が多く、中風域で苦戦していました。オーストラリアチームは、男子75kg、女子67kgという重量級ながら軽風、シフトの多い海面でも丁寧に走り、男女とも1位を取り、圧倒的な走りでした。彼らの走りを見ていると日本選手はもっともっとレベルアップが必要です。
RS:X級男子は、3年間ISAFユース代表の座を勝ち取り今年はシニアNTを確定した倉持大也選手(東亜学園高)と合宿で一緒にトレーニングを重ねてきた川崎翼選手(京田辺シュタイナー校)が代表となりました。父親の影響でウインドサーフィンを始めたところも倉持選手と同じで、これからが楽しみな選手です。女子は1艇のみの参加でしたが、昨年もISAF代表として参加した原百花選手(武庫川女子大付高)がシニアと一緒に走ったレースで倉持選手にも勝ったレースもあり、1年間の成長が認められ、代表として推薦されました。原選手はコツコツと毎日陸上トレーニングも欠かさず、柔軟性も新体操選手並みで身長も高く、体型と身体能力でも今後の努力次第で期待が持てる選手です。
Techno293級は、2014年開催されるユース五輪強化選手を決めるために、13、14歳の選手が集まりレースを行いました。男子は昨年世界選手権5位を獲得した池田健星選手(逗子・久木中)が全6レースをオールトップで素晴らしい走りを見せました。女子は3名の選手が混戦する中、スラロームの大会でも好成績を残している新島莉奈選手(横浜国大付鎌倉高)が選ばれました。ユース五輪自力枠獲得、メダル獲得に向けさらなる精進を期待します。
今回の大会は中軽風でシフトと強弱の大きい2日間のみのレースとなってしまいました。残りの2日間は全くの無風で、戦わずしてレースを終えた選手たちには消化不良の大会だったようですが、これが自然を相手にするスポーツです。どんなことが起きようとも必ず狙ったレースで必ず勝てる選手になるためには、100%の準備では足りないのがヨットレース。ISAFユース代表になった選手は120%の準備をして、負けて涙したライバルの分まで日本代表として自信と誇りを持って戦ってきてください。みんなで応援しています。
最後となりましたが、今回はオーストラリア・日本エクスチェンジプログラムとして、「オーストラリア・日本エクスチェンジプログラム2013」ユニホームまで作成して参加していただき日本選手に大いに刺激を与えてくれたオーストラリアチームの皆様、ありがとうございました。
また、この大会に向け準備から期間中のアテンドまで誠心誠意取り組んでくださり成功に導いてくださった松岡けいさん、準備に奔走された佐々木共之、橋元郷両氏に心より御礼申し上げます。ルール委員会の方々にも大会中ルールに強い日本チームになるために積極的にサポートをしていただきました。多くのサポートを受けてこの大会が成り立ちましたことをこの場をお借りして御礼申し上げますとともに、ユースセーラーがそのことを心に深く刻み、真の成長を成し遂げてくれることを期待します。
●ISAFユースワールド日本代表チーム
○RS:X級 男子:川崎 翼(京田辺シュナイター学校2年)
女子:原 百花(武庫川女子大学附属高校2年)
○420級 男子:小泉 維吹(光高校1年)・有岡 翼(光高校2年)組
女子:深沢 瑛里(湘南白百合学園高校2年)・馬渡 凪沙(七里ヶ浜高校2年)組
○レーザーラジアル級 男子:高山 大智(佐伯市立鶴谷中学校3年)
女子:多田 緑(唐津西高校2年)
●RS:X級2013年度シニアナショナルチーム 認定選手
今回の選考レースの結果を受け、男女とも上位2名の選手を今年度のナショナルチーム選手として認定しましたが、ロンドン五輪が終了し、新チーム(若手選手)のオリンピック活動も見込まれたことから、推薦制度(上限2艇)を設けました。ウインドサーフィン連盟からの推薦(次世代選手強化。リオ五輪種目強化)により男女とも3、4位の選手についても今年度はナショナルチーム選手として追加認定することを決定しました。
認定選手は下記のとおりです。
○男子
富澤 慎 (トヨタ自動車東日本)
倉持 大也 (東亜学園高校)
板庇 雄馬 (立命館大学)
尾川 潤 (島精機製作所)
○女子
大西富士子 (ティアーズ)
小嶺 恵美 (大垣共立銀行)
伊勢田 愛 (琵琶湖マリンセーリングクラブ)
須長 由季 (ミキハウス)
▲レース後は参加者全員でストレッチ▲AUS選手を追いかける日本人選手達
▲420スタート▲がんばった高山
▲記念撮影