Balaton Laser 4.7 Youth Worlds 2013 Championships
2013年レーザー4.7級ユース世界選手権
総括レポート
大会帯同スタッフ:斎藤 愛子
(JSAFオリピック強化委員会 情報科学担当)
4.7ユース世界選手権を振り返る
▲レース海面に向かいながらダウンウィンドの走りをチェックする遠藤▲第7レースで2マークを回航する鄭15日に帰国しました。7月3日の夕方に成田で集合、パリ経由でハンガリーの首都ブダペストへ移動し、空港からレンタカーを運転して開催地バラトンに入りました。
4日から10日間、男子は実走238艇(46か国)、女子は122艇(32か国)がU18とU16のタイトルを争い、男子はU16がハンガリー、U18がトルコ、女子は両方ともスペインが優勝しました。
欧米の選手達が4.7に乗る期間は短いものです。『OPに乗るには体格が大きすぎる』ユースセーラーが13歳くらいから『ステップアップで4.7に乗り』、そこから『さらにダブルハンドやラジアルへ』と上がっていきます。今回、日本から参加した岩城もすでに身長が175cmあり、OPの北米選手権に出場するのを辞退して4.7の大会に来ました。藤本も180cmありますから、見た目、海外勢にひけをとりませんでした。女子は上位に入った選手と比べると日本の3名はやや背が小柄だったと思いますが、体重はそれほど差がないと思います。今回は吹いても15ノット、ほとんどが8ノット以下でのレースだったので、体力差がでることはありませんでした。
毎日長い待ち時間、海上で12時間というメンタル面では厳しい状況が続きました。いろいろな国の選手やコーチの様子を見ていて気が付いたのは、この年代の選手には、『教え込むことをせず、選手が自分で考える能力を養うように意識づけしている』ことでした。初めての大舞台で選手の表情は変化し続けます。集中が途切れることも多々あります。それでも、『自分で乗り切る力を養い、強くなれる選手か、そうでないか』のふるいにかける場のようにも感じました。
今回、日本チームは男子3、女子3の構成で、2海面に分かれるレースエリアでコーチボート1隻。手が回りませんから、シンガポールと相談してどちらか1エリアに分かれてカバーし、2か国で協力することにしました。今回は旧友がコーチだったので話は簡単でしたが今後も2海面に分かれる際にはこうした他国コーチとコミュニケーションができる力が必要だと思います。サポートのない他国の選手はSail Coach などを利用して練習、チャーター艇からすべてをパッケージで料金を支払い、面倒を見てもらっていました。Sail Coachはサポートのいない選手をターゲットにしたプライベートサポートの会社です。冬場には数か所でトレーニングキャンプも実施しており、過去に日本選手も数名利用したことがあります。(参考:http://www.sailcoach.com/)
技術的な面でいえば、今回の日本選手たちはダウンウィンドでひけをとらなかったと思います。
女子14位に入った遠藤は昨年末にオーストラリアの大会へ行き、「アップウィンドはいいのですが、ダウンウィンドで両側からごそっと抜かれてしまいました」とぼやいていたので、江の島ではダウンウィンドを強化しました。ロールタックも数多く練習したので、基本がしっかりできたのが成績につながったと思います。
▲第6レースで1-2マーク間を2位キープする岸▲第8レースをトップグループで快走する岩城男子の岩城は中学校1年の時から唐津で開催されるジュニアオリンピックに4.7で参加してきましたが、ダウンウィンドはシルバーフリートの中なら速いと感じていました。トップ選手の中にはもっと速い人もいるようですが、ダウンウィンドでもコースを考えて抜いてきました。また、岩城はレース展開でも思い切りよく、スタートも果敢に有利なエンドを狙います。もちろん、失敗して下位に低迷するレースもありましたが、抜け出た時にはトップや3位をとりました。
藤本は「スタートでのぼり殺されてしまいます…」とぼやいていましたが、1分持たずにタックして逃げていくレースが多かったようです。スタート直後だけは上り勝たないといけないので、今後はスピードよく走る練習だけでなく、軽風でも角度をとれる技術を覚えてほしいと思います。
村上は「予選の時は1レース目から黒旗で失格がついていたからその後を無理できず、無難なところからスタートしていたけど、決勝は有利なサイドからしっかり狙っていきたい」と、世界選手権に来たからにはチャレンジしなければ損だと考えて、トライしました。中止になったレースやいくつかのレースではうまく出たものの、出遅れて反対サイドへ行かされて下位に甘んじたこともありました。欧州の選手達はこういった大フリートの大会が頻繁にありますから、数をこなすことによってスタートが上手になっていきます。日本でレベルアップするには、国内レースのレベルを欧州カップ並みにあげていけたらいいのだと思います。その点、遠藤はスタートで抜け出るのがうまく、それが上位につながりました。
女子の鄭と岸は対象的でした。鄭は10ノットを超えると走りが苦しくなりますが、弱くなる風にはすごく敏感で、チャンスで順位を上げてきます。集団が一番大きいところで勝負しているので、フィニッシュしても自分の順位がわからないことが多かったようです。
岸は吹いた時にはスピードがありますが、強弱がついてくるとラルで止まってしまう難点を克服できませんでした。また、多数艇の中で展開の速さについていけず、気が付いたら行きたくない場所へ行かされていたということも経験しました。艇数が多いだけならOPも大フリートですが、4.7は艇速が速いので、使うエリアも広くなります。60艇のフリートの中で自分の走る位置を素早く考えて行動に移すことに慣れる時間が必要だったのでしょう。最終レースではシルバーフリートの3位をとりました。岩城も初めのうちは自分らしく走れなかった様子で、予選終了時には、「僕だけブロンズだ…」としょげていました。しかし、ほとんどビリながらもシルバーに残ると、別人の様相で決勝に入るとトップで快走することができました。久々に「怖いもの知らずのヤングパワー!」を見せてもらいました。
欧米やアジア、オセアニアの選手は『4.7の年代にレースを学び、体格に合わせて次のステップへ』進みます。日本から過去に挑戦した選手達もその後、ダブルハンドで国体に出たり、大学で活躍していたり、ラジアルユースやISAFユースへシングルハンドで挑戦しています。今年で年齢制限にかかる終了組は新たなる目標を探して活動してほしいと思いますし、あと2回チャレンジできる岩城は来年の唐津での大会をぜひ目指してほしいところです。
この大会で感じたことは「上位はそれほど遠くない!努力して狙えば、必ず届く!」です。
応援いただいた皆様、ありがとうございました。
2014年唐津での4.7ユース世界選手権は今年9月から国内予選が始まります。詳細は下記URLのレーザー強化委員会ページを見てください。該当する年齢の皆さん、このチャンスにトライしましょう。http://www.laserjapan.org/archives/2473
▲選手は朝夕必ず公式掲示板を見に行き、英語に頭をひねりました▲遠藤紅葉の幻の総合9位
▲U18女子の表彰▲U18男子の表彰
▲メンシートを抜いての曳航にも慣れました.
▲風を測っては、毛糸がなびかないと嘆く高橋まさコーチ
▲大会会場は毎日回答旗があがり混雑していました
▲日本チーム
(文責:JSAFオリンピック強化委員会・広報)