報告:ナショナルコーチ 中村健次
「世界と戦える470セーラーであってほしい」
「勝つためのレースプランを常に考え、決めること」
合宿の目的
①昨今の経済不況を受け、選手の練習環境が整いにくいケースが多く見受けられる。必然的にレース経験の積み上げが思うように出来ず、競技レベルの低下がみられる事から、選手が国内でレベル維持を保つために、日頃の競争相手とともに多くのレースを実施し、さらなる競技力の向上をはかる機会としたい。
②ナショナルチーム内でも大きな結果の違いがあるのは何故か?勝てるチームと結果が出せないチームの差は何か?勝つためにはどのようにレースの組み立てをしたらいいのか?等をあらためて皆で考える場としたい。
③NT選手のみならず次世代を担う選手の吸い上げを行い、常に世界の上位と戦えるTEAM JAPANづくり、若手選手発掘の場を設けたい。
④セーラーの体づくり&体調管理(セルフコンディショニングの重要性)などフィジカル面の再学習の場としたい。
実施をはかった主な内容
①限られた艇数の中で、より実践に近い状況づくりを行うためのコース設定(マークセット)、1回目の上りは混戦を意識したショートコース、2回目の上りはロングコースでボートスピードやストラテージの重要性について実感できるような練習内容とした。
②スタートについても何度も繰り返し、条件に即したポジショニング、タイミングを感覚だけではなく、時間と距離で整理できる試みもミーティングでフィードバックした。
③セール比較、他のノウハウに関するレクチャー。
④江口専任トレーナーによる、強い体づくり講習&実践。
⑤上位を走る選手と走れない選手の考え方の違いは何かの議論展開(ミーティングテーマ)
参加チーム
男 子
NT:原田・吉田組/石川・柳川組/前田・谷口組/渡邊・谷川組
自己推薦:長橋・田淵組/高橋・杉浦組/市野・吉見組/川添・小泉組/飯束・外薗組/土井・大島組/冨岡・内田組
女 子
NT:近藤・田畑組/吉迫・大熊組
自己推薦:村濱・板倉組
参加セーラーたちに伝えたかった事
チームがそれぞれ感覚的に決めていたスタート・コース・走らせ方・チューニング(セールシェイプ)などについて、「なぜ?・どうして?・どのように?・どの情報を使って?」とプライオリティー(優先順位)を付ける事により、“勝つため”への発展性のあるレベルアップや個々が抱える問題解決への意識づけを行うことが重要だ。
例えば、レースの組み立て方についてもっと具体的に言うと…
・ 強風の安定した海風では第一にプラスのタックを走ること、ボートスピードが優先される。
・ 軽風の陸風(シフト+強弱)では第一に風の強いところに誰よりも早く到達して、そのブローに長く乗っている事など、状況に応じたプランの立て方をそれぞれのチームが「常に考え、決めること」が大切である。ノープランでは、ただ「勝った、負けた」だけで何の発展にも繋がらない。こうしたことを理解し、チームとして確固たるポリシーを持ったセーラーになってほしい。
最後に
この足早なレポートですべてを伝えることが出来ないのが残念ですが、(NTチームといえども)ヨットレースとは何か? を今一度考えてほしい。極論を言えば目的は1番でゴールすることにつきる。もちろん様々な戦術があると思いますが、風の振れに合わせることだけが正しい訳ではなく、誰よりも早く次のマークに到達することが「正である」ということを再認識してほしいと思います。そして、そのための戦術・セオリーを各自のレースプランに組み込むこと。それをあらゆる条件・状況下で実践できることが「強く安定したチームになる」ということです。
さらに言うならば、「世界と戦えること」…470トップアスリートに課せられた宿命的なテーマです。
合宿でも再三言ったことですが、ロンドンまで3年を切りました。ますますの研さんを積んで、それぞれの狙いを持った強くて魅力的なセーラーになってほしいと思います。