オリンピック特別委員会・ナショナルチームスタッフによる
第1回 東日本大震災被災地支援セーリングクリニック
レポート:東北セーリング連盟 相澤孝司
3月11日の東日本大震災で全てが流されてしまい、練習どころかヨットを浮かべることすらできない日々が続きました。しかし全国の仲間の皆様から寄せられた激励、様々な支援により、今回宮城県七ヶ浜町でセーリングクリニックを開催する事が出来ました。
10月8日から10日の3日間、JSAFからナショナルコーチ・中村健次さん、関東自工コーチ・関一人さんのお二人に来ていただき、学生を対象に行われ、東北大学学友会ヨット部、東北大学医学部ヨット部、東北学院大学ヨット部から470級10艇、スナイプ級5艇が参加しました。
内容については中村コーチから補足いただくとして、全日本インカレを1カ月後に、またそのあとの全日本スナイプ、全日本470を控えている時期に、お二人から指導いただいたことはとても大きな支えとなりました。日中の陸上でのレクチャー、夜の公民館を借りてのミーティングでは質問が絶えることなく続き、いかにセーリングに、練習に飢えていたかを垣間見る思いでした。
コーチボート及び機材を持ち込んでのクリニック、お二人に感謝申し上げます。
来春には高校生・一般も加え、さらに岩手、福島からも参加してもらい、もっともっと盛大に開催したい、元気になったところを全国の皆様に見てもらいたいと考えています。
東北セーリング連盟 相澤孝司
【中村健次のレポート】
大震災後、気になっていた被災地を遅ればせながら「支援クリニック」という形で訪れることができました。全国からの支援が進み、また現地の方々の頑張りで東北も徐々にではありますが、環境が改善されつつあると感じました。しかし、まだまだ瓦礫の山や道から離れた場所には撤去できない車両なども散見され、大震災の甚大な被害を肌で感じた次第でした。
我々JSAFは被災地の復旧状況を踏まえ、「支援クリニック」を実施できる時期を相澤氏と調整させて頂き、第1回支援クリニックを開催できる運びとなりました。私と関の2名、まことに微力ではありますが、無事開催できたことは同じセーリング仲間として意義あることであったと思っております。
今回、支援クリニック開催にあたり、現役ナショナルチーム・コーチ陣にも呼び掛けをしましたが、12月の豪ISAFワールド(兼ロンドンオリンピック日本代表選考)を控えている事情があり、申し訳ないながら、NT選手たちは参加する事が出来ませんでした。NT選手からは「次の機会には積極的に参加したい」との声が多く寄せられました。どうかこの間の事情につきましてご賢察いただければ幸いです。
クリニックを開催した七ヶ浜漁港は元々東北大学艇庫があった所なのですが、艇庫兼合宿所は完全に破壊されてしまい、現在は古いコンテナを仮置きし倉庫として使用しています。また漁港の堤防も壊れ、スロープも凸凹で出艇するのにもひと苦労の状態でした。
そうした中でも、選手はセーリングをしたい、レベルアップをしたいという気持ちを強く持っていました。海上練習でのアドバイス、夜の講習では多くの事を学んでくれたと思います。内容としては初日にはいつも通りの練習をしてもらい、我々が選手のレベル把握をした上でクリニック内容を決め、進める形をとりました。結果的に「基礎技術の重要性」「セーリング競技とは?」「レースの組み立て方・考え方」と言う一般的な部分が中心となりましたが、関コーチが海上練習では470艇に同乗して五輪メダリストのテクニックを随所に見せてくれました。選手たちは感激の面持ちでした。クリニックの一番の思い出になったかもしれません。
今回初めて東北に足を運び思った事はセーリングする海は恵まれているということでした。この素晴らしい海があれば、近い将来沢山のヨットが海に浮かぶだろうと確信しました。そのためには、今以上に我々皆で支援・協力しなければいけないという思いを強くしました。次回は来年春頃に実現出来ればと考えています。
復興への道のりは長いかもしれません。これからもご苦労は尽きないと思いますが、一日も早い復興を願っております。東北のセーラーの皆様に心からのエールを送ります。
関コーチが学生とセーリング
合宿所が流され、倉庫に古いコンテナを使用
支援クリニックのミーティング
破壊された港の片付け