RS:X級世界選手権
2009年ウインドサーフィン RS:X級世界選手権大会
in イギリス
報告:宮野 幹弘
日 程:2009年8月31日~9月10日(レース初日9月4日~)
開催地:イギリス・ウェイマス
出場者:男子 富澤 慎(関東自動車工業)
谷 賢二郎
小川 達郎
高橋 良典
女子 須長 由季(ミキハウス)
大西 富士子(ティアーズ)
高木 未散 (萩原珈琲)
参加艇数:男子・32カ国 105艇 女子・29カ国58艇
大会公式サイト:http://www.rsxclass.com/rsx-class-event-information/rsx-world-windsurfing-championships
プラクティクスで富沢選手30ノットオーバーでのポートスタート計測風景2009年ウインドサーフィンRS:X級世界選手権は、2012年ロンドンオリンピックセーリング競技会場のウェイマスを舞台に9月4日から10日まで開催されます。
大会にはRS:X級日本ナショナルチームの男女全員7名が参戦します。
当地ウエイマスはロンドンからおよそ230kmほど西に位置する田舎町です。日本はまだ夏模様ですが、こちらは15~19度と寒い日が続き、すっかり秋の気配を感じています。風は平均15ノット以上、ここ数日は季節の変わり目もあるのか30~40ノットの日が続いています。
町の人々はとても親切で、初めての土地で分からないことが多い日本チームの選手達にも紳士的にいろいろな事を教えてくれるとても温かい町です。
ウエイマス自体は大きな湾になっていて、大会はこの湾の中で行われます。
この季節、オフショアの風が多いので海面はフラットでスピードの大会が行われるほど風が吹くところです。
今大会の注目選手は男子、地元英国のニック・デンプシー、強風が得意なオランダのキャスパー・ボーマン、百戦錬磨のアテネオリンピック金メダリスト、ギリシャのニコス、現在ISAFランキング1位のポルトガルのジョアオ、女子はここウエイマス出身の選手で北京オリンピック銅メダリストのブラウニー・ショウ、現在ISAFランキング1位のスペインのマリナなどがあげられます。
この選手達が強風下でどのような走りをするのかが注目です。
日本チームは準備万端整っています。世界の強豪といかに戦うか? 展開が楽しみです。
皆様の応援をよろしくお願い致します。
ウェイマス、右側がレース会場
1日目
女子・須長 11位、男子・富澤 15位 発進!
2レース目スタート後の富沢慎須長選手ジャイブマーク回航1いよいよRS:X世界選手権レースが始まりました。
初日の今日は、西北西の風が吹き、今までになく寒い中でのレースになりました。
大会参加艇数は男子105名、女子58名で各クラスともに2グループに分けて予選シリーズが行われます。
日本男子のイエローフリート選手は(男イエロー)谷賢二郎、高橋良典、ブルーフリート(男ブルー)では富澤慎、小川達朗、女子のイエローフリート(女イエロー)は須長由季、ブルーフリート(女イエロー)では大西富士子、高木未散の組分けです。
11:00、男イエローがスタート、その後ブルー。男子2レース終了後13:00より女子のレースがイエロー、ブルーの順でスタートとなりました。
風向は290°、風速はAve20ノット、Max25ノットの中、第1レース(男イエロー)が行われました。
このスタート前に、富澤選手(ブルーF)のマストが折れ、海上でセイルをたたみ、急いでハーバーへ戻り、マストを交換しました。その際に、午後からのレースに備えていた女子選手達の協力により、富澤選手のセッティングはスムーズに終わり、レース海面に無事復帰しました。さらに運が良かったのか、先に行われるイエローフリートのゼネリコもあり何とかスタートに間に合い、レースに臨むことができました。しかし、イエローフリート高橋選手は1上に行く途中にマストが折れてしまい、やむなくリタイアすることになってしまいました。
レースはスピード勝負の展開となり、2レースとも好スタートを切った富澤選手と、スピード勝負には自信がある女子の須長選手が好成績をおさめ、初日のレースを終了しました。他の日本選手は、なかなかスタートをうまく切ることができずで遅れてしまうケースが多くみられたレースでした。午後からの女子のレースの終盤では、風速が30ノット以上に上がり、選手たちを苦しめていました。
明日は日本選手の攻めのスタートが見られると思います。
第1日 2レース成績
男子(105艇):富沢 慎(15位)11−7
谷 賢二郎(83位)46−42
小川 達朗(93位)47−45
高橋 良典(96位)DNF(53)−DNF(53)
女子(58艇) :須長 由季(11位)5−9
大西富士子(29位)14−17
高木 未散(50位)24−DNF(31)
レース初日セッティング風景
2日目
ガスティーなコンディションの中で苦戦
女子第3レーススタート高木選手下マーク回航本日も昨日と同じように男女各2グループにわかれてレースが行われました。
今までになく今日は穏やかな朝を迎えましたが、コンディション的にはとても難しい
コンディションになってしまいました。
風向は260度から290度の間を行ったり来たり、風速は8ノットから16ノットとガスティーコンディションの中、どのグループも何度もゼネリコを繰り返してのスタートになりました。初めにレースをした女子選手達は風速風向共に安定していたのでそれなりの成績をおさめることができましたが、午後スタートの男子選手は、このコンディションにうまくスピードを出し切ることができず、苦戦を強いられました。
明日が予選シリーズ最後のレースです。頑張っていきたいと思います。
第2日 4レース成績
男子(105艇):富沢 慎(22位)11−7−21−13
谷 賢二郎(90位)46−42−38−DNF(53)
高橋 良典(99位)DNF(53)−DNF(53)−47−39
小川 達朗(101位)47−45−48−DNF(53)
女子(58艇) :須長 由季(11位)5−9−7−14
大西富士子(34位)14−17−23−15
高木 未散(43位)24−DNF(31)−15−15
レースを待つ須長選手
Photo by 中村 健次
3日目
吹いた中ではスピード重視か角度重視か?
男子イエローフリートスタート本日6日は予選最終日です。
今日の結果で8日からの決勝フリートが決まります。
今日は今までにない暖かい穏やかな中、レースが始まりました。
風向は180°~210°。風速は8ノット~14ノットと風向は違いますが、昨日同様に難しいコンディションの中で2レースが行われました。
今回好調の男子富澤選手は好スタートを切るも、2上で風をうまくとらえられずに
順位を落としてしまい、この日カットレース(28位)を作ってしまった。
また、女子好調の須長選手は2レースともにスタートで遅れてしまい、自分のレースをできずに、同じくカットレース(25位)を作ってしまう結果になりました。
日本選手は、ガスティーなコンディションということもあり、スピードを取って走るか、あるいは角度を取って走るかの選択に悩まされ、苦戦しました。
そうした中、女子の高木選手が本日の第2レース目で多くの選手がスピードを取る走りをしている中、角度を取る走りをして10位に入ることができた。
このスピード重視と角度重視の走り分けは、ナショナルチームの課題として考えていかなければならないところだと思います。
明日はレイデーです。疲れた身体を休めて次に備えます。
高木選手2レース目上マーク回航大西、高木選手上マーク回航
Photo by 中村 健次
第3日 通算総合成績
男子(105艇):富沢 慎(28位)11−7−21−13−(28)−17
谷 賢二郎(88位)46−42−38−DNF(53)−45−33
高橋 良典(92位)DNF(53)−DNF(53)−47−39−38−31
小川 達朗(96位)47−45−48−DNF(53)−36−43
女子(58艇) :須長 由季(25位)5−9−7−14−(25)−18
高木 未散(34位)24−DNF(31)−15−15−15−10
大西富士子(36位)14−17−(23)−15−14−23
4日目
決勝ラウンド始まる。
男子・富澤、2レースとも好スタートを決める。
1レース目富沢選手下マーク回航須長選手1レース目下マーク回航大会4日目(決勝ラウンド1日目)
今日から男女ともゴールドフリート、シルバーフリートに分かれての決勝ラウンドが始まりました。
予選の結果、決勝ラウンドのゴールドフリートには男子・富澤慎選手、女子・須長由季選手の2名、シルバーフリートには男子・谷賢二郎選手、小川達朗選手、高橋良典選手、女子・大西富士子選手、高木未散選手の5名がそれぞれのフリートに分かれ戦うことになりました。
11:05、風向240°風速8ノット~10ノットの中、女子ゴールドフリートのレースがスタートしました。1上を6位で回航した須長選手は、アウターマークに向かう途中に、後方からのブローに乗った後続艇に追いつかれてしまい、さらに須長選手はそのブローをとらえることができずに順位を落とし、最後は13位でフィニッシュしました。
その後スタートした男子ゴールドフリートの富澤選手は、好スタートを切り、うまくブローをつかみ11位でフィニッシュ。引きつづき2レース目に入ろうとしているときに、深い霧により一度ハーバーに帰ることになりました。そして、1時間後にゴールドフリートの2レース目が再開され、スタートで出遅れた須長選手は28位。また、富澤選手は混乱している中からのスタートでしたが、好スタートを決め、9位でフィニッシュしました。シルバーフリートでは、女子の高木選手が7-3。同じフリートの大西選手は3-4と第2グループながら好成績を上げ、それぞれ順位をUPしました。
通算総合成績(全8レース:本日2レース結果含む)
男子(105艇):
★ゴールドフリート
富沢 慎(22位)11−7−21−13−(28)−17−11−9
★シルバーフリート
谷 賢二郎(81位)46−42−38−DNF(53)−45−33−16−20
高橋 良典(84位)DNF(53)−DNF(53)−47−39−38−31−20−13
小川 達朗(94位)47−45−48−DNF(53)−36−43−30−33
女子(58艇) :
★ゴールドフリート
須長 由季(26位)5−9−7−14−(25)−18−13−(28)
★シルバーフリート
高木 未散(32位)24−DNF(31)−15−15−15−10−7−3
大西富士子(34位)14−17−(23)−15−14−23−3−4
霧の中レース延期
日本選手ウェイティング
Photo by 中村 健次
5日目
課題はアンダープレーニングの風域の走り
2レース目スタート風景高木選手2レース目スタート大会5日目(決勝ラウンド2日目)
今日は、9月とは思えないとても寒い朝を迎えました。
事前練習などで当地ウエイマスに3週間前から来ているのですが、初めてとなる北から北東の風が吹く中、レースが行われました。
風向は30°、風速は10~11ノットと、日本選手が課題としている風域(アンダープレー二ング)でのレースとなりました。ゴールドフリート男子のスタート直前に、当初のマーク設定であった30°よりも、右寄りの風が入るようになり、この風をうまくつかめなかった富澤選手は、総合で順位を1つ落としてしまいました。須長選手もスピードにうまく乗ることができずに、この日もこの風域で苦戦を強いられました。
ゴールドフリート女子の2レース目は、風速が上がり13~14ノットの風が入るようになり、この風域(プレー二ングコンディション)のスピードには自信のある須長選手が、スタートは失敗するものの、ダウンウィンドでイタリアやオーストラリアの強豪選手達を抜き、15位でフィニッシュしました。
シルバーフリート女子の高木選手は、ゴールドフリートのレース時よりもガスティーなコンディションの中、しっかりコースを見極め、角度重視の走り方とスピード重視の走り方をうまく使い分けて、3位でフィニッシュ。しかし、1レース目の順位が悪かったため、総合順位を1つ落としてしまいました。
大会は、明日最終日を迎えます。残すは1レース。日本選手達の健闘を祈るばかりです。
予報では予選初日のような20ノット以上の風が吹きそうなので、初日のような好成績を期待したいところです。
通算総合成績(全10レース:本日2レース結果含む)
男子(105艇):
★ゴールドフリート
富沢 慎(23位)11−7−21−13−(28)−17−11−9−(45)−28
★シルバーフリート
谷 賢二郎(86位)46−42−38−DNF(53)−45−33−16−20−39−34
高橋 良典(88位)DNF(53)−DNF(53)−47−39−38−31−20−13−28−44
小川 達朗(94位)47−45−48−DNF(53)−36−43−30−33−40−33
女子(58艇) :
★ゴールドフリート
須長 由季(27位)5−9−7−14−(25)−18−13−(28)−26−15
★シルバーフリート
高木 未散(33位)24−DNF(31)−15−15−15−10−7−3−9−3
大西富士子(36位)14−17−(23)−15−14−23−3−4−14−15
6日目
多くの課題と収穫を得ることができたRS:X世界選手権
最終レース終了後富沢選手(撮影:中村健次)女子表彰台(撮影:山田敏雄)男子優勝者Nick Dempsey(撮影:山田敏雄)大会最終日
今日も、9月とは思えない寒い朝を迎えました。前日よりさらに寒さが増し、寒くて目が覚めるほどでした。
風は予報通り20ノットオーバーの風が吹いており、プレーニングコンディションとなりました。レーススケジュールは、11時よりゴールドフリート女子(メダルレース出場者のトップ10名は除く)、続いてゴールドフリート男子(女子と同様にトップ10名は除く)のレースが行われました。そして、14時より、男女ともトップ10名による最後の戦い、メダルレースが行われました。
風向55°風速16~20ノットの中、予定より30分遅れて女子のフリートがスタートしました。須長選手は、好スタートを決めましたが、上マーク付近での風の振れにうまく合わせることができずに上マークを10位で回航。しかしその後、得意のフリーで2人を抜きそのまま8位でフィニッシュしました。
男子は女子終了後にスタートしました。女子のレース時より、やや風が落ちコンディションが少し変わりました。富澤選手は、残念ながらその変化をうまく読みきれずに36位でフィニッシュ。総合で25位と前日より3つ順位を落としてしまいました。
14:00、女子のメダルレース。このレースは、海面を知り尽くした地元英国のBryony Shawが1位でフィニッシュしました。また、暫定総合1位であったスペインのMarina Alabauが6位、さらに2位であった同じくスペインのBuranca Manchonが4位でフィニッシュしたため、総合順位は変わらずに1位Marina Alabau(スペイン)、2位Buranca Manchon(スペイン)、3位Charline Picon(フランス)が表彰台に上がりました。
男子メダルレースはこちらも海面を知り尽くした地元のNick Dempseyが1位でフィニッシュし、世界選手権優勝を果たしました。男子総合2位は、Nimrod Mashiah(イスラエル)、続いて3位Dorian Van Rijsselberge(オランダ)となりました。
本大会のメダルレースでは、男女とも英国選手がトップフィニッシュを果たし、地元開催レースにふさわしい結びとなりました。
今日は全体的に右海面が有利に見えましたが、上マーク付近では風がなくなると左に15度ほど振れるとても難しい海面で日本人選手は苦戦を強いられ、今後の課題なども見つかるレースとなりました。しかし、今回の世界選手権では、来るべきロンドン五輪のレース会場において夏の風、秋の風という異なる2種類の風を体感でき、それなりの収穫を得ることができたと思います。またスピード重視か角度重視かなど、選手自身も多くの課題を見つけることができた大会だと思います。
大会期間中は、応援をいただきありがとうございました。
このあと、同じ会場で14日からISAFワールドカップ最終戦を兼ねる五輪種目勢ぞろいのスカンジア・セイル・フォー・ゴールドレガッタが開幕します。今回の貴重な経験を糧に、頑張りたいと思います。
応援よろしくお願いします。
最終総合成績
男子(105艇):
★ゴールドフリート
富沢 慎(25位)11−7−21−13−(28)−17−11−9−(45)−28−36
★シルバーフリート
谷 賢二郎(86位)46−42−38−DNF(53)−45−33−16−20−39−34
高橋 良典(88位)DNF(53)−DNF(53)−47−39−38−31−20−13−28−44
小川 達朗(94位)47−45−48−DNF(53)−36−43−30−33−40−33
女子(58艇) :
★ゴールドフリート
須長 由季(27位)5−9−7−14−(25)−18−13−(28)−26−15−18
★シルバーフリート
高木 未散(33位)24−DNF(31)−15−15−15−10−7−3−9−3
大西富士子(36位)14−17−(23)−15−14−23−3−4−14−15
大会公式サイト:http://www.rsxclass.com/rsx-class-event-information/rsx-world-windsurfing-championships