NT選考 2011
2011年度
JSAFナショナルチーム選考レース
Report by オリ特 広報担当
Photo by 平井 淳一
日 程:2011年1月5日~月9日
開催地:鹿児島県・鹿屋市 高須港沖
出場選手数:
●470級 男子:16艇 32選手
●470級 女子:2艇 4選手
●レーザー級:14艇 14選手
●レーザーラジアル級:8艇 8選手
●RS:X級 男子:7艇 7選手
●RS:X級 女子:7艇 7選手
以上 6クラス 72選手
ロンドン五輪を目指して 国内トップセーラーが集結
初日 各クラスとも2010NTがフリートをリード
レーザー級は全日本覇者、安田真之助がトップに2、3位と1点差でラジアル級首位に立つ長谷川哲子6選手が出場するRS:X級男子のスタート 2012年英国・ロンドン五輪セーリング競技日本代表を目指すセーラーたちの第1関門、
2011年度JSAFナショナルチーム選考レースが本日から当地にて開幕しました。
五輪競技会場のウェイマス沖と同じ条件の「強い風」を求めて2年連続開催地となった鹿屋市・高須港沖は曇天、気温10°。第1レースは途中軽風に見舞われましたが午後からは運営サイドが期待していた8m~9mのWNWの風に恵まれ、470級男女は4レース、その他のクラスは3レースを無事消化しました。
●470級 男子
松永・今村組が3-5-1-1で初日を一歩リードしました。強い風の中の安定した走りが目を引きました。2位には4点差で原田・吉田組。続いて石川・柳川組が同点3位につけています。
●470級 女子
初日の2強の対決は近藤・田畑組がリードしました。近藤・田畑組は男女混走でしたがすべてのレースで5着以内フィニッシュするなど男子をしのぐそのレース振りは圧巻でした。
●レーザー級
地元鹿屋・鹿屋体育大学の安田真之助が冷静なレース運びで2-1-3と安定して初日のトップに立ちました。アジア大会銀メダリストの永井久規も第1レースでトップをとりましたが
その後5-4の結果となり、安田に4点のリードを許しています。
●レーザーラジアル級
NT外の学生セーラー・冨部がトップに1点差の3位に入る健闘を見せました。
●RS:X級 男子
昨年秋からスランプ気味であった富澤慎が本来の調子を取り戻し、風が強くなるに従い、2位以下を大きく離し、独壇場のレース展開でした。
●RS:X級 女子
上位の3選手がトップを取りあう初日でした。3強の争いの様相です。
■鈴木國央レース副委員長コメント
「午後から注文どおりのよい風に恵まれたが、振れ幅もあり、安定せず、難しいレース展開となった。結果的にはほぼ僅差の初日になっており、「風を取った者が勝ち」だったということだろう。その中で470級の松永組の走りと近藤組の戦い振りが目を引いた。吹いてくれば場数の違いが出る。次世代セーラーがこの風の中どこまで迫れるかを注目していたが、やはり今日のために練習を積んできた大人選手とは経験値の差が出ている。負けずに食らいついてほしい。明日もよく吹く予想なのでよい選考レースができそうだ。」
■成 績
1日目成績表
ナショナルチーム選考レースの大会会場
2日目
スリーボンド対アビームのパンピングバトル。軍配はスリーボンドに
寒風吹きすさむ中、熱戦が展開
男子に混じっても走りに遜色ない近藤・田畑組大会2日目。
曇り空、気温7℃の鹿屋沖には終日強い北寄りの風が吹き募りました。平均8mから10m、ガストでは12m超の風。「強い風に勝てる選手」を選考しようという大会にとっては願っても無いコンディションです。
今日はウインドが4レース、その他のクラスは3レースが行われました。各クラスとも5レース以上を消化したため1レースのカットが行われ、初日のレース結果と合わせ逆転上位浮上のチーム・選手も出てきました。いずれにしても2日目を終え上位はほぼ実力通りの成績となっています。
準強風の1日でしたが、今日のハイライトは470級男子において初日から熾烈な首位争いを演じている松永・今村組(スリーボンド)と原田・吉田組の第6レース、サイドマークからフィニッシュへ向かうテール&ノーズの抜きつ抜かれずの戦いでした。3位チームを大きく離しての2艇による強風下のスピンラン接近戦は寒さを忘れさせるまれに見る熱いバトルでした(この模様はYou-Tube等に動画掲載予定です)。両チームは総合順位においてもわずか1点差。最終日まで両チームの戦いから目が離せなくなりました。
●470級 男子
今日のレースで松永・今村組が2-1-2。原田・吉田組が1-2-1。総合ポイントもそれぞれ10点、11点と1点差です。3位には石川・柳川組がつけていますが10点差です。
●470級 女子
近藤・田畑組が強風の中、男子チームに一歩も引けを取らず、さすが「世界の近藤・田畑組」の腕力と実力を見せつけています。
●レーザー級
安田が2位以下を得点で大きく離し、フリートをリードしました。2位には初日第1レース13位がカットされたイアン・ホールが4位から浮上しました。逆にアジア大会銀メダリストの永井は2位から4位に陥落しました。
●レーザーラジアル級
初日出遅れた髙橋が巻き返しの1-3-1を取り一気に2位に浮上してきました。トップは手堅い走りを見せた蛭田が初日トップの長谷川を逆転しました。
●RS:X級 男子
富澤慎が一人旅を続けています。強風下の走りは他選手を圧しています。
●RS:X級 女子
強風になれば須長の独壇場です。文句なしの1-1-1-1で2位以下を離しにかかっています。
総合2位には大西が浮上して、初日首位の小菅は同点3位に甘んじました。
■鈴木國央レース副委員長コメント
「強風下のレース運営となったがレース委員会の臨機応変な対応のおかげで順調にレースが消化できた。
選手の実力が出た2日目だ。とにかく速くないと勝てない。ふだんから乗りこめているかどうかだ。自分に勝つことも大事だ。
選考レースならではのこちらの考え方も読んでほしい。スタートラインが短いこともその一つだ。あえて短くしているのでいつもほどどちらが有利という問題はないはず。場所ではなくストラテジー優先のスタートが肝心かもしれない。」
■成 績
2日目成績表
熾烈な席取り合戦となるレーザー級スリーボンド対アビームのパンピングバトル。軍配はスリーボンドに
出艇スペースが狭いため1艇ずつ順番に海へ
3日目
大会3日目も北西の風が10m近くまで上がる最高のコンディションとなりました。
全クラス、絶好のコンディションの中、熱い戦い
まだまだ続く新NTの席取り
昨年は欧州遠征などで力をつけてきた城。総合2位に浮上です戦のレーザーラジアル級で2位に1点差でトップに立つ蛭田大会3日目。
晴天、気温8℃の鹿屋沖には今日もまた強い北寄りの風が吹きました。前日より若干落ちたとはいえNNW平均8mから9m、ガストでは12m超のあいかわらずの風です。頂に噴煙をたなびかせる桜島方向から風が下りてきます。地元の方の話では「この季節のいつもの風」だそうです。
今日は全クラスがそれぞれ4レースおこなわれました。同一海面でのべ20レースが整然と進む様は今回に備えベテランスタッフを揃えたレース委員会の「腕」に他なりません。
470級男女とウインドは11レースを消化。ラジアル級、レーザー級は10レースを消化して、選考レースは成立しました。カットレースも2レースとなりました。
発表されている2011NTの席取り争いは依然として続いています。とくにプレ五輪日本代表(1クラス・1チーム)争いでは質的内容は異なりますが470男子NTとラジアル級は大接戦です。注目の470級男子は松永と原田の2強の戦いが毎レースごと熾烈を極めています。今日はお互いに2レースずつトップを取りました。勝負は最終日までもつれ込みそうです。
明日は天気予報では風が落ちる予報となっています。連日腕力合戦をしている選手には歓迎風となるのでしょうか。
●470級 男子
今日のレースで松永・今村組が(6)-1-1-2。原田・吉田組が1-2-3-1。総合ポイントでは1点差で松永組が首位をキープしています。18点差の3位には石川・柳川組、続いて10点差で市野・吉見組です。
●470級 女子
近藤・田畑組が2-2-1-1。大会初めて吉迫・大熊組の後を走りました。点差は7点ありますが、あと2日、プレ五輪代表の席取りは油断禁物です。
●レーザー級
安田が依然フリートをリードしています。2位には城がイアンを抜いて浮上しました。明日の風次第では順位の変動もあり得ます。
●レーザーラジアル級
3位までの順位は前日と変わりませんが、蛭田と髙橋が抜けだしましたが、2人の差は1点です。
●RS:X級 男子
総合トップの富澤と2位髙橋が11レースを連続で1位、2位を続けています。
●RS:X級 女子
須長が(4)-1-1-1で首位を堅持しています。NT枠2席目の争いは2位に再浮上した小菅と大西が僅差で戦っています。
■鈴木國央レース副委員長コメント
「総合成績はともかくとして、若い世代がレースにようやく慣れてきた印象を持った。吹いて、距離も長い中、順位も上に出てくるようになった。とくに470級の次世代セーラーだ。体力がある証拠かもしれない。今後に大きな期待が持てる。
10レース消化できて一安心だ。いい風に恵まれていて、前日ほど波も悪くなく、走りやすかったはずだ。時にガスティーが入ったり難しい面もあるが強い選手はそれにうまく対応している。
明日、風が落ちれば順位も入れ替わる可能性がある。集中力を切らさず、油断しないで走りぬいてほしい
。」
■成 績
3日目成績表
RS:X級女子首位の須長。強風域では他選手より一歩リードしていますバックに見えるのは桜島。火山灰は鹿屋まで届きました
4日目
レーザー級のスタート。前日2位の城が3位のイアンに負けたため、順位が入れ替わりました
終日弱い風が安定せず
レーザー、ラジアル両クラスのみ1レース実施
決戦は明日最終日に
ラジアル級トップ争いの蛭田(写真左)と高橋。高橋が蛭田を抑えて首位に立ちました大会4日目。
朝方は冷え込みが厳しく、海面には北寄りの風が残っていました。9時近くになり運営艇群がコース準備に入り、レース艇も出港しましたが、そのあと風がパッタリとなくなり、全クラスAPHとなってしまいました。風は南にシフトしてはるか遠くの開聞岳方向から心地よいシーブリーズが入り始めました。しかし風向、風速ともに安定せず、春を思わせる気温の中長い陸上待機となりました。こうした時の選手の心境はどのようなものなのか。とくに選考枠のライン前後にいる選手の気持ちには微妙なものがあるのではないでしょうか。
13時を過ぎたころようやく弱めの北西の風が入り、ウインドを除くクラスが出港となりました。しかし依然風は上がらず、またまた海上待機。
15時前、風の動向を見守っていた本部船はレーザーとラジアルのスタートを決断、300°5ktの微風の中両クラスのスタートがはかられました。そして、続く470級クラスのスタートシークエンスが始まり、定刻に一旦スタートしましたがゼネリコ。沖合のシングルハンドの動きは神経戦模様。ついに本部船上に470クラスAPHが掲揚されました。
レーザー、ラジアルはかろうじてレースを終了することができました。これにより全クラス11レース消化となりました。
レーザー第11レースでは首位を走っていた安田が2回のペナルティー(42条違反:タック後の2回連続ボディパンプとフリーレグおけるロッキング)でリタイア(15点)しましたが「捨てレース」となり大勢には影響ありませんでした。トップを取ったイアンが城に変わって総合2位となりました。ラジアル級はすでにNTが内定している髙橋(全日本チャンプ)が2位で入り同点総合首位に立ちました。
明日の天気予報は諸説が出ていますが、どちらにしても「かなり吹く」見込みです。吹けば時間的には3レースが可能かもしれません。上位艇にとっては英国・プレ五輪出場をかけた最後の戦いとなります。
■成 績
4日目成績表
一旦海に出たものの戻って陸上待機に。選手たちは緊張感を保ちつつ、風を待ちます桜島の火山灰。数字の3のようなカーブを描いて鹿屋方面へ流れてきました
本シリーズではじめての微風になった大会4日目。NT選考レースも残すは明日最終日のみ
最終日
全14レースを消化し、本当の実力が試された鹿屋選考レース。長い戦いが終わりました
選考レース閉幕 2011年度ナショナルチーム決定
470級男子の決戦は松永・今村組が1点差で勝利
プレ五輪代表に
470級男子のスリーボンド対アビームは最終レースまで壮絶な戦いを繰り広げました負けたら470活動は終了」というプレッシャーを跳ね飛ばして優勝した松永・今村組。最高の勝利です470女子の直接対決は、11勝3敗で近藤・田畑組の圧勝に終わりました大会最終日。選考レースも大詰めを迎えました。
朝の冷え込みは相変わらずです。天気予報では朝方から風が吹くとのことでしたがレース海面は冬の静かな海といった感じが支配していました。
9時を過ぎ、待望の冷たい北西風が入り始めました。レース委員会では3レース実施を目指して粛々とコース設定をおこない、安定した北北西7mの順風のもといよいよ最終日のレースが始まりました。今日の注目は前日を終えて1点差の470級男子と同点となっているレーザーラジアル級の2クラスの首位争いです。
470級男子は松永・今村組と原田・吉田組の2強時代が到来しました。前日までの11レースでそれぞれトップを5回ずつ取り、その実力は伯仲しています。スタートも常に1線から出て、途中コースミスをしても最終上マークではいつの間にかトップグループに抜け出し、強風下迫力のパンピングを展開する局面を作り出します。両艇のスピード創造力と風探求力は他を圧していると言えます。第12レースを終わり両チーム同点となり続く13レースでは松永組が首位、原田組が4位(捨てレース)で2点差となりました。
決着をつける最終第14レースはインナーループの上下2周。最終上を終えて石川・柳川組がトップ、続いて松永組、原田組の順。強まる8~9mの風の中、後続艇を大きく離した3チームによる高速スピンランの激走が始まりました。トップチーム同士ならではの見応えあるシーンがフィニッシュラインまで続きました。結果、着順では石川組、原田組、松永組となり、その瞬間に松永組の1点差の勝利が確定しました。松永のガッツポーズが彼ら二人の思いを十分に表していました。
レーザー級1位通過した安田。今年も大学に所属してキャンペーンを続ける予定です高橋と同点で迎えた最終レース。最終ダウンウインドレグで逆転し、プレ五輪の切符を手にした蛭田道具選択の呪縛を振り払い、自分らしいセーリングを意識したRS:X級男子の富沢 レーザーラジアル級は2強が同点で最終日を迎えましたが、蛭田が(5)-1-1、髙橋が1-4-2でこれまた最終レースで決着。1点差で軍配は蛭田に上がりました。長谷川は2強の戦いに割って入れませんでした。
その他のクラスは11レース終了時の新NT枠内と同じ顔ぶれでした。
470級女子・近藤組対吉迫組の勝負は近藤組の11勝3敗。
レーザー級は9回トップを取った安田の圧勝に終わりました。城が新NTに入り、2010NTの永井と斉藤が涙を呑みました。
RS:X男子は富澤の全勝独り舞台でしたが、新NT増枠の3番手に金子が入りました。
RS:X女子は10勝を挙げた須長の強さが目立ちました。ベテラン小菅が大西を制してNT枠を守りました。
果敢に選考レースに挑戦した高校生、大学生の大健闘も称えられます。大人選手たちに交じってめったに無いよい経験をしました。後半はその成果が随所に見られるようになりました。今後の彼らの飛躍を願わずにはいられません。
17時からの閉会式では選ばれた5クラス24名のチーム・選手に「2011年NT認定書」が手渡されました。ステージに並んだ新NTは第一関門を通過しました。これからの頑張りがロンドン五輪日本代表の「席」につながります。
5日間、全14レースが戦われた今回の選考レースはオリ特が望んだ「よく吹く風」に恵まれ、事故もなく滞りなく終了できたことは幸いでした。
今回の海陸の運営はオリ特スタッフ、全国から駆けつけたレース運営のベテランたち、地元鹿屋体大OB・現役学生そしてプロテスト委員会メンバーなど約50名の手によっておこなわれました。また、地元町内会の連日の炊き出し、地元諸団体・企業の支援など多くの裏方部隊の献身的な支えがあってこその大会成功でした。最終レース終了後本部船から各運営艇に「終了宣言」が発せられ、それに対する各運営艇からの「応答」は感動的でした。
有難うございました。
■成 績
大会総合成績表