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Laser World


2010 レーザー級世界選手権

レポート:JOCトップアスリート
担当コーチ 飯島 洋一

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日 程2010年8月27日~9月5日
開催地:英国・ヘイリングアイランド
ロンドンより約90キロ、先日sail for gold regattaが行われたWeymouthから150キロ東に位置する英国南西部のヘイリングアイランド。島内には綺麗なビーチが続き、別荘が立ち並ぶ静かなリゾート地です。すぐ近くにはイギリス海軍の軍港があるあのポーツマスがあります。

日本代表選手
●シニアクラス
 ホール イアン(福岡ヨットクラブ)
 安田 真之助(鹿屋体育大学 在学)
 永井 久規(豊田合成)
 斉藤 大輔(秋田県セーリング連盟)
 城 航太(エスピーネットワーク)
●Jrクラス
 南里 研二(唐津西高校
帯同NTコーチ:
NCコーチ:中村 健次
NTコーチ:飯島 洋一
NTトレーナー:水野 元晴

大会事前サイト:http://www.laserworlds2010.co.uk/laserworlds/laser/senior-junior/
大会サイト:http://www.laserworlds2010.co.uk/standard


2010 レーザーワールド 開幕まじか
レースは30日から

1008_laser-w_01.jpg練習風景2010レーザー級世界選手権はILCAのお膝元、英国・へーリングアイランドで行われます。今年度からジュニアの世界選手権も同時に開催され、レーザースタンダードクラスのシニア、ジュニアの世界一を争います。シニア、Jrと約300人近いレーザーセーラーで英国の小さな町のヨットクラブはいっぱいです。
 日本選手(6名)の多くは8月6日から8月14日まで同じ英国・ウェイマスで行われたSkandia Sail for Gold Regattaに参加しており、レース終了後、ここへーリングアイランドに移動し練習を続けています。当地もウェイマスと同じで南西寄りのよい風が吹きそうです。また、干満の差が非常に激しく潮が非常に強いことが予想されます。

 昨年の世界選手権(カナダ)では、惨敗した日本レーザーチームですが、今年度は国内合宿、ヨーロッパ遠征、そして韓国合宿とトレーニングを行ってきました。各国もオリンピックが近づくにつれて、強化に力を入れ始めてきています。昨年同様厳しい戦いになると思いますが、選手達には今年練習してきたことを出し切って、悔いのないレースをしてほしいと思います。また、今回は次世代選手の育成・強化の一環としてジュニアクラスに高校生チャンピオンの南里が参加しています。事前練習では大人の選手に大いに揉まれていました。南里の力量が試される期待の大会です。

1008_laser-w_02.jpgヨットハーバー

1日目


2010 レーザー級世界選手権始まる
初日、上位選手との実力差をまざまざと…


1008_laser-w_03.jpg安田 1上 10位1008_laser-w_04.jpg南里下マークいよいよワールドが始まりました。
シニアクラスは159艇53ヵ国、ジュニアクラスは119艇33ヵ国のエントリーです。
 レーザークラスはオリンピッククラスの世界選手権の中で出場艇がもっとも多く、上位に入るのは至難の技といわれているクラスです。

 練習時は南西寄りの強い風が吹いていたヘーリングアイランドですが、今日は北寄りの風3~4mの中で予定通り2レースが行われました。
 レース結果はというと、各選手とも軽風の中でトップの選手と実力の差を見せ付けられる結果となりました。海外のトップの選手はダウンウインドのスピードがよく、常にスピードをキープして集団の中から抜け出して、またはうまく避けて順位を確実に上げてきます。海外トップ選手はルール42条(推進方法違反)ギリギリのテクニックを使いスピードをキープして走っています。
 スピード差を見せ付けられた日本人選手でしたが、スタートは今までとは違う積極的なスタートをしています。実は、事前練習を見ていた中村健次NC(ナショナルコーチ)は「スタートで前に出ようという気持ちが感じられない。もっと積極的に体、メインセールを使って相手より少しでも加速して飛び出していかなければならない。このスタートじゃ絶対に前は走れない」と厳しい指摘と檄が飛びました。それから日本人選手はレースが始まるまで、スタートに意識をもって練習してきました。その成果か、各選手とも今までとは比べ物にならないほど、積極的にスタートをするようになりました。

 2レース目は安田が見ているこちら側にまで熱意が伝わるようなスタートをして上マークを9位で回航していきました。残念ながら順位をキープすることができず19位まで順位を落としましたが、順位を落としてしまった原因を修正し、明日からも今日のような積極的なスタートをすればきっと前を走れるはずです。

 先月開催されたラジアルユースワールドで15位と好成績を収めた、Jrクラス参加の南里ですが、思っていたよりもレーザースタンダードJrクラスのレベルは高く、なかなか前を走らせてもらえません。こちらに来てシニアの選手とトレーニングを続けていましたが、ボートスピードも体力も戦術も海外選手にはついていけません。悔しいですが、これが世界のレベルです。南里は気持ちを入れ替え、今後厳しいトレーニングをして彼らと対等に戦える選手になりたいと強く思っているようです。連れてきた甲斐があります。
 世界では20歳ぐらいの選手でも大人に混じりヨーロッパ選手権でシングルに入る選手もいます。日本の若い選手も世界に目を向け積極的に世界にチャレンジしなければならないと感じました。彼は積極的なセーリングが持ち味の選手です。今日の成績に肩落とさず明日からも元気にレースを続けてほしいと思います。

 企業のサポートを受けている選手が少ないレーザーの選手達は選手達で1軒の家を借り共同生活をしています。食事、洗濯も選手、コーチが一緒になり共に助け合い費用を節約して、出来るだけ長い遠征活動をしています。今はとにかく上を目指して練習環境(特に海外遠征)、トレーニング、栄養等の多方面からの強化活動をしています。

 初日を終えて良い面、悪い面がありますが、強く前を走りたいと思いレースに臨んでほしいと思います。

●シニアクラス 53カ国/159艇
・ホール イアン(福岡ヨットクラブ)
 25-50 119位
・安田 真之助(鹿屋体育大学 在学)
 27-19 64位
・永井 久規(豊田合成)
 36-20 83位
・斉藤 大輔(秋田県セーリング連盟)
 51-37 140位
・城 航太(エスピーネットワーク)
 41-42 135位
●Jrクラス
・南里 研二(唐津西高校
 OCS-46 113位

1008_laser-w_05.jpg出廷

2日目


安田、ワールド初の8位フィニッシュ
ジュニアクラス・南里、総合で中位にジャンプアップ


1008_laser-w_06.jpgイアン艤装今日は高気圧に覆われ、英国らしくない快晴で一日が始まり、昼過ぎから昨日よりも弱い風、2~4mで2レースが行われました。

 選手には昨日同様、スタートに意識を持っていくようにアドバイスをしましたが、イアン、永井と斎藤はスタートではうまく出ることができなかったようです。城を加えたこの4人は前日からの順位を落としてしまいました。そんな中、安田は少しスペースのある、開いているところから思い切ってスタートを切りました。そしてストラテジー的に有利と思う方向へ自信をもってコース取りをしました。
 1レース目は途中順位を落とし27位となりましたが、2レース目は安田自身世界選手権でのベストスコアとなる8位フィニッシュをすることができました。総合62位につけています。

 一方、7月に一緒に練習をさせてもらった韓国のHa選手は日本選手よりも技術的に1枚も2枚も上の選手ですが、行きたい方向にうまくいけず、総合109位と出遅れています。いくら技術的に上手でも良いスタートを切り、行きたい方向に先にコースをとらないと大きく順位を落としてしまいます。改めてスタートやストラテジーの重要性を感じた1日となりました。

1008_laser-w_07.jpg皿洗い Jrクラスの南里ですが、持ち前の積極的なセーリングスタイルが戻ってきたようです。1レース目は第1上マーク10位から順位を上げて6位。2レース目は南里いわく、「リコールかと思った」と言うくらい良いスタートをしたのですが、良いスタートをしてしまったが故に右、左の後続艇が気になり中途半端なコースになってしまい順位を落としてしまいました。帰着後「こういう海風の時は少し大きめにサイドに出してコースを引かないとだめなのですかねえ?」とつぶやいていました。私達はシニアのサポートで海上では彼にサポートができませんが、自分自身できちんと考えてレースをこなしているようです。
 総合で51人を抜いて中位の62位に上がってきました。行けるぞ! 南里!

 明日は予選3日目、各選手とも正念場となってきます。明日も英国らしくない晴れ空でレーザーワールドらしくない軽風でレースは続くと思われます。選手には行きたい方向へ行ける思い切りの良いスタートをしてほしいと思います。

安田コメント
初めての世界選手権でのシングルフィニッシュは嬉しかったですが、コーチボートから見られたくないようなミスも沢山しています。これらのミスをなくし、もっと上を目指します。


●シニアクラス 53カ国/159艇
・ホール イアン(福岡ヨットクラブ)
 25-50-43-38 111位
・安田 真之助(鹿屋体育大学 在学)
 27-19-27-8 62位
・永井 久規(豊田合成)
 36-20-44-42 122位
・斉藤 大輔(秋田県セーリング連盟)
 51-37-40-41 142位
・城 航太(エスピーネットワーク)
 41-42-48-33 141位
●Jrクラス 33カ国/119艇
・南里 研二(唐津西高校
 OCS-46-6-28 62位

1008_laser-w_08.jpg開会式

3日目


世界の壁を前に苦戦が続く日本レーザーチーム

1008_laser-w_09.jpg

 今日の英国・ヘイリングアイランドは昨日同様、英国らしくない快晴でしたが昨日よりも少し風が上がり、3~6mのコンデションで2レースが行われました。

1008_laser-w_10.jpg城 航太 昨日に引き続き、選手には積極的なスタートをアドバイスして送り出しました。しかし、今日も苦戦が続きます。そんな中、安田が上マークを10番前半で回航するレースがありましたが、フィニッシュは27位と順位を落としてしまいました。今日は昨日順位には響かなかったミス(マーク回航)が、今日ははっきりと順位に現れたようです。彼の場合、前々から基本動作、基本練習と言われていたのですが、あまり重要視していなかったようです。中村ナショナルコーチからも厳しい指摘がありました。世界のトップ選手はパーフェクトのボートハンドリングは当たり前です。基本がパーフェクトにできて、初めて彼らとヨットレースというゲームをすることができるのかもしれません。レーザーという船は艤装がシンプルで、レースで勝つためにすることは艤装と同じでシンプルです。もっとやるべきことに意識を持ち時間を費やさなければなりません。レース中ではありますが、明日はやるべきことをしっかり行いレースに臨んでほしいと思います。

 Jrクラスの南里は50-17で総合69位と昨日より少し順位を下げてしまいました。2レース目は上マークを4位で回航したようですが、徐々に順位を下げてしまいました。やはり、周りが気になって中途半端なコースになってしまいます。強い自信を持って思い切ったレースをして決勝ではゴールドフリートでレースをしてほしいと思います。彼ならできるはずです。

 明日はJrクラスだけレイデイで、海外選手と観光に出かけて親睦をはかる予定です。レースだけでなく国際交流のほうもしっかり行って、切磋琢磨する仲間を増やしてきてほしいと思います。シニアは、休みはありません。明日は予選最終日。積極的なスタートをアドバイスして海に送り出そうと思います。


●シニアクラス 53カ国/159艇
・ホール イアン(福岡ヨットクラブ)
 25-50-43-38-30-39 116位
・安田 真之助(鹿屋体育大学 在学)
 27-19-27-8-32-28 72位
・永井 久規(豊田合成)
 36-20-44-42-41-46 134位
・斉藤 大輔(秋田県セーリング連盟)
 51-37-40-41-41-42 140位
・城 航太(エスピーネットワーク)
 41-42-48-33-38-41 137位
●Jrクラス 33カ国/119艇
・南里 研二(唐津西高校
 OCS-46-6-28-50-17 69位

1008_laser-w_11.jpgコンデショニング1008_laser-w_12.jpgシェアハウス

4日目


予選シリーズ終了 安田シルバーへ、他はブロンズ
この悔しさを次に

1008_laser-w_13.jpg

1008_laser-w_14.jpg永井2位でマークを回る。今日も高気圧にどっぷり浸かり、暖かい日でした。風は昨日とほぼ同じ3~5mの風で2レース。強風好きの選手には少し物足りないコンデションが続きます。今日はベテラン永井が見せ場を作ってくれました。スタートをフリーな位置で出た永井は、他の選手が小さな風を使って走っていくのを尻目に大きな風を掴み、上マークを3位で回航、途中ダウンウインドで1艇を抜いて2位でフィニッシュをしました。

ヨットレースの楽しさを思い出しました!!!!」(永井)

 北京オリンピック選考終了後、レーザーワールドから離れてレース感が鈍っていた永井ですが、このレースをきっかけにヨットの楽しさと共にレース勘が戻ってくれることを期待します。永井は11月のアジア大会のレーザーラジアル級の代表として金メダルを目指しています。今回はトレーニングのひとつとしてこの世界選手権に参加しました。セール面積が一回り小さなラジアルクラスでの適正体重にあわせて減量中の為、少し風が上がってくる辛そうですが、レベルの高いレーザースタンダードの世界選手権でトレーニングを積み、アジア大会に標準をあわせます。

 安田は今日も上位で上マークを回るレースがあったのですが、集団の中のダウンウインドで思うような走りができず順位を下げてしまいました。

 イアンは予選シリーズを通してスタートで思うように前に出ることができず、好きなコースを走ることができません。ダウンウインドはいいスピードで走っているだけにまったくもったいないレース展開となっています。

 本日で予選シリーズを終えたわけですが、日本選手は安田がシルバーフリート。その他はブロンズフリートです。各選手とも残念な結果となりましたが、何が悪かったのか? 何が足りないのか? をよく考えて帰国後のトレーニングに励んでほしいと思います。また、明日から始まる決勝シリーズでは気持ちを入れ直し、悪かったところを修正しレースに臨んでほしいと思います。

 今日レイデーだったJrクラスのホープ・南里は明日が予選最終日となります。これまでのレース振りを見ても上位を走る実力は十分にあると思われます。若い選手に「無難にスコアをまとめてこい」とは言いたくありません。思い切って明日のレースをしてきてほしいと思います。


●シニアクラス 53カ国/159艇
・ホール イアン(福岡ヨットクラブ)
 25-50-43-38-30-39-28-33 112位
・安田 真之助(鹿屋体育大学 在学)
 27-19-27-8-32-28-27-29 80位
・永井 久規(豊田合成)
 36-20-44-42-41-46-2-45 117位
・斉藤 大輔(秋田県セーリング連盟)
 51-37-40-41-41-42-44-49 144位
・城 航太(エスピーネットワーク)
 41-42-48-33-38-41-43-41 138位
●Jrクラス 33カ国/119艇
・南里 研二(唐津西高校
 OCS-46-6-28-50-17 69位

大会サイト:http://www.laserworlds2010.co.uk/standard

1008_laser-w_15.jpg混戦の上マーク1008_laser-w_16.jpg出艇前のミーティング

5日目


ジュニアクラス 期待の南里、
ゴールドに進出できず

1008_laser-w_17.jpg南里上マーク
 決勝初日も当地は高気圧に覆われました。風は昨日より少し強く、4~6mで2レースが行われました。今日はJrクラスが予選最終日ということで我々コーチ陣は南里のサポートに回りました。

 南里は今日15番程度を2レース取ればゴールドフリートに残れるということで、鼻息を荒くして出艇していきました。ところが、南里は1レース目、2レース目ともスタートで出ることができず、当然のことながら彼の行きたい方向に行くことができません。また、ダウンウインドでも順位を上げることができませんでした。甘くはありません。38-39に終わりました。

スタートラインでのポジションの取り方が少しずれている。そしていつも混んでいるところに入っていく」(中村NC)

簡単にゴールドフリートに残れると思っていました。スタンダードの世界のレベルは思っていたよりも高かったです」(南里)

 南里は帰着後、中村NCにスタートでのラインの読み方などの教えを受けていました。
結局、彼は決勝シリーズではシルバーフリートになってしまいましたが、今日中村NCに指導を受けたことを実践して、少しでも世界レベルのスタートで出られるようになってほしいと思います。

 シニアクラスでは安田がスタートもよく、上マークまでは上位で回航することもあったようですが、やはりダウンウインドで順位を守ることができません。海外の選手に比べて船の動き、体の動きが少なく、外から見ていると何もしていないように見え、波に乗れていないように見えてしまいます。抜かれていくあせりなどがあったのかもしれませんが、残り2日間ダウンウインドの走りを研究して、少しでも自分のものにしてほしいと思います。

 ここまで5日間、毎日2レースずつを予定通りこなしています。選手達も顔には出しませんが疲れが出てきているのかもしれません。あと2日間、自分の力を出し切り、大会を終えてほしいと思います。


●シニアクラス 53カ国/159艇
・ホール イアン(福岡ヨットクラブ)
 25-50-43-38-30-39-28-33-17-8 112位(ブロンズフリート)
・安田 真之助(鹿屋体育大学 在学)
 27-19-27-8-32-28-27-29-40-36 92位(シルバーフリート)
・永井 久規(豊田合成)
 36-20-44-42-41-46-2-45-19-23 117位(ブロンズフリート)
・斉藤 大輔(秋田県セーリング連盟)
 51-37-40-41-41-42-44-49-36-26 146位(ブロンズフリート)
・城 航太(エスピーネットワーク)
 41-42-48-33-38-41-43-41-26-39 142位(ブロンズフリート)
●Jrクラス 33カ国/119艇
・南里 研二(唐津西高校
 OCS-46-6-28-50-17-38-39 75位

大会サイト:http://www.laserworlds2010.co.uk/standard

1008_laser-w_18.jpgスタート1008_laser-w_19.jpgやっぱり、成績が気になるコーチ、選手達

6日目


12レース消化 低迷続く日本レーザーチーム
勝負への執念と挑戦者としての強い気持ちを持とう


1008_laser-w_20.jpg南里1008_laser-w_21.jpgイアン Jrクラスの南里は1レース目10番前半で上マークを回ったのですが、ヒッチマークで痛恨の沈。
これは彼が気を抜いた、完全に不注意のミスでした。続く2レース目は1レース目の失敗を取り戻そうと焦ったのかOCSとなってしまいました。日本の高校生セーラーの中では無敵の南里ですが、こちらでは思うように走らせてもらえません。世界のレベルの高さを痛感しています。彼らと対等に戦うには今まで以上の努力が必要です。しかし、二人で夕飯の支度をしている中での会話でも彼自身が世界のレベルに追いつきたいという熱い気持ちを持っていることを感じ取ることができました。彼が真面目に努力を続けていけば、今後の日本レーザー界を引っ張っていってくれる選手になるかもしれません。

 シニアクラスも良いところがありませんでした。シルバーフリートの安田は良いところがなく順位を下げ、総合成績も下げてしまいました。トップ選手はスタートに出遅れてもダウンウインドで大きく順位を挽回するボートスピードを持っています。しかし、日本人選手は順位を挽回するボートスピードがなく、次のマークでは先行艇との距離が離れすぎてしまい、順位を上げるチャンスがなくなってしまいます。ほんとに悔しいですが、これが現実であり、今の日本の実力です。

 ブロンズクラスの選手達も前を走ることができません。なかなか前を走れない苛立ちもあり、何をやってもうまくいかないというように見受けられます。
 私達コーチ陣も考えなければなりませんが、選手達は、なぜ上位の選手は速いのか? どうしたら速く走ることができるのか? を考え、ひとつひとつ問題を紐解いてトライ&エラーを繰り返していかなければなりません。ダメでもいい。どんどん挑戦者の気持ちで立ち向かっていってほしいと思います。

 明日は大会最終日。今日よりも少し強い風の予報です。レーザーワールドらしいコンデションで世界チャンプが決まることでしょう。日本6選手も気持ちに負けず、気合の最終日を戦ってほしいと願うばかりです。


●シニアクラス 53カ国/159艇
・ホール イアン(福岡ヨットクラブ)
 25-50-43-38-30-39-28-33-17-8-37-8 111位(ブロンズフリート)
・安田 真之助(鹿屋体育大学 在学)
 27-19-27-8-32-28-27-29-40-36-48-BFD 96位(シルバーフリート)
・永井 久規(豊田合成)
 36-20-44-42-41-46-2-45-19-23-34-17 119位(ブロンズフリート)
・斉藤 大輔(秋田県セーリング連盟)
 51-37-40-41-41-42-44-49-36-26-43-BFD 147位(ブロンズフリート)
・城 航太(エスピーネットワーク)
 41-42-48-33-38-41-43-41-26-39-17-9 133位(ブロンズフリート)
●Jrクラス 33カ国/119艇
・南里 研二(唐津西高校
 OCS-46-6-28-50-17-38-39-52-BFD 93位

大会サイト:http://www.laserworlds2010.co.uk/standard

1008_laser-w_22.jpgどうしても順位がキープできない、城1008_laser-w_23.jpgリーチングで下マークに向かう

最終日


大会閉幕 
多くの宿題を課せられた日本レーザーチーム


1008_laser-w_24.jpgこのレースを同アジア大会に活かすか?永井1008_laser-w_25.jpg最後に少し走りのコツを掴んだ安田やっと当地へーリングアイランドに英国らしい曇り空、レーザーワールドらしい風が戻ってきました。風の強さは6~8m。コースも長く、これぞレーザーワールドというコンデションで大会最終日の2レースが行われました。これで予定された14レースすべて消化されました。比較的弱い風のコンデションだったとはいえ、さすがに選手達は肉体的に大変きつかったと思います。

 Jrクラスの南里は上マークを10番後半で回るもののダウンウインドで3回の沈をしてしまいました。彼は日本では戦ったことも見たこともない文字通りの強敵揃いの中、連日のレースで相当疲れていたのでしょう。ダウンウインドでは、いつもの積極的なセーリングを見ることができませんでした。

 シニアフリートでは安田が最終レースに10番台を走ることができました。ダウンウインドのバングテンションを中村ナショナルコーチからアドバイスを受け、いつもより弱めで最終レースを走り、順位を下げずにダウンウインドを走りきることができたようです。前々からバングテンションについては指摘されていましたが、沈をすることを恐れて緩めることができなかったようです。最終レースは、「このままでは何も変わらないぞ!」と言われ、セッティングを変えレースに臨みました。

 ブロンズフリートでは城が今までで一番良い走りをすることができました。レース終盤になるにつれ、徐々にレースに慣れスピードも良くなってきました。

 今日の安田のように自分が作ってしまっている限界を、果敢に超えようとする気持ちを持ち続けなければ日本のレーザーはオリンピックに出場することすら難しいかもしれません。帰国後、選手達には自分で作ってしまっている限界(セーリングも私生活も)を越えようと挑戦し、世界のレベルに追いつける選手を目指して、切磋琢磨してほしいと切に願う次第です。

 さて気になる世界チャンプですが、オーストラリアのTom Slingsbyが2007年、2008年そして今年度と3回目のチャンプに輝きました。北京オリンピックでは大本命でしたが、苦手の微、軽風でメダル獲得を逃し、昨年の世界選手権でも振るいませんでした。今回は苦手だった軽風のコンデションを丁寧に走り、世界チャンプに返り咲きました。苦手だったコンディションを克服したチャンプの顔は本当にうれしそうでした。

 今大会、日本レーザーチームはまさに「世界に打ちのめされ」ました。
捲土重来(けんどじゅうらい)という言葉があります。それは我々に課せられた宿題かもしれません。
最後に、大会に帯同した中村健次ナショナルコーチから総括の原稿が託されました。NCの立場として厳しい指摘が記されていますが、ここは謙虚に目を通す必要があります。

■中村健次ナショナルコーチの総括
 JSAFオリ特がロンドンオリンピックに向けた目標「メダル獲得、複数入賞、全種目オリンピック出場」を掲げ、本年度は各クラスの実情・実力を確認するため、今回のレーザーワールドにも初めて帯同しました。
 レーザークラスがオリンピッククラスである以上、オリンピックに出場するためには何が必要かを確認し、どの様なアドバイス、強化をすれば目標に達成できるのか考え、飯島担当コーチと協議しながら今大会を見てきました。残念なことに選手レベルがオリンピックに出場するための実力に達していない事が分かりました。それは、選手の体型や体力だけでは無く、何とか勝ちたい、そのためには何をすればいいのか? さらに言うならば人頼りで活動(レース)を続けている様にしか思えませんでした。要は競技者として必要な「心・技・体」が未熟だということです。
 とくにレースを途中で諦め、手を抜く選手がいた事実には驚きました。とても考えられないことです。あえて名前は特定しませんが、この選手に強化(補助)をする必要があるのだろうかと真剣に考えたほどでした。遺憾と言う他ありません。
 その他、申し上げたいことは多々ありますが、飯島コーチのレポート内容に代えることにいたします。レーザークラス選手諸君の奮起を切望します。

 今後の強化の進め方ですが、我々は無駄な時間を過ごすつもりもありませんが、冒頭に記したようにオリンピック種目である以上、そのクラスが強くなり、いつの日かメダルを目指せる種目になるためには、どのような方策で強化するかは二つの方策があると考えています。
 一つ目は現状を踏まえた「選択と集中」であり、より可能性のある選手にのみ強化を行い、オリンピック出場枠を獲得する事。
 二つ目はユース世代の強化です。世界各国が使用するクラスをユース世代から導入し母体(競技人口の増大)を広げ、さらなる競争力を高める事です。
この考えの実行を加速したいと考えています。

 日頃の繰り返しになりますが、シングルハンドクラスはOP級から卒業後に取り組みやすく、かつとても重要な種目として位置づけできると真に思います。
 我々はレーザークラスが非常にすばらしいクラスであり、世界同様、日本においてさらに普及、発展させたいと考えています。
以上、あえて厳しいコメントをさせていただきましたことをご容赦ください。


●シニアクラス 53カ国/159艇
・ホール イアン(福岡ヨットクラブ)
 25-50-43-38-30-39-28-33-17-8-37-8-18-DNC 116位(ブロンズフリート)
・安田 真之助(鹿屋体育大学 在学)
 27-19-27-8-32-28-27-29-40-36-48-BFD-40-12 92位(シルバーフリート)
・永井 久規(豊田合成)
 36-20-44-42-41-46-2-45-19-23-34-17-33-26 123位(ブロンズフリート)
・斉藤 大輔(秋田県セーリング連盟)
 51-37-40-41-41-42-44-49-36-26-43-BFD-19-34 144位(ブロンズフリート)
・城 航太(エスピーネットワーク)
 41-42-48-33-38-41-43-41-26-39-17-9-13-10 126位(ブロンズフリート)
●Jrクラス 33カ国/119艇
・南里 研二(唐津西高校
 OCS-46-6-28-50-17-38-39-52-BFD-45-29 94位(シルバーフリート)

大会サイト:http://www.laserworlds2010.co.uk/standard

1008_laser-w_26.jpgPrize Given

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●2010.7.12:RS:X級2010ヨーロッパ選手権大会 レースレポート
●2010.6.13:スター級2010ヨーロッパ選手権大会 レースレポート
●2010.5.31:ISAFワールドカップ第5戦 デルタロイドレガッタ レースレポート
●2010.5.18:エキスパート・オリンピック・ガルダレガッタ レースレポート
●2010.5.7:レーザー級 NT合同強化合宿レポート
●2010.5.1:ISAFワールドカップ第4戦 第42回イエールオリンピックウイーク
●2010.4.9:レーザー4.7ユース世界選手権 レースレポート
●2010.3.31:第14回 アジア選手権 レースレポート
●2010.3.29:2010年度ユース日本代表選考レースレポート
●2010.2.18:2010年度 JSAFナショナルチーム選考レースレポート
●2010.2.2:ISAF ワールドカップ 第2戦 マイアミ OCRレースレポート
●2010.1.27:ユース選手の目標・目的を明確にしたユース合宿レポート
●2010.1.24:ノースアメリカンチャンピオンシップレポート
●2010.1.13:レーザー級・ラジアル級合同合宿レポート
●2010.1.13:2010年 49er世界選手権大会 レースレポート
●2009.12.14:第5回東アジア競技大会 レースレポート
●2009.12.9:49er全日本選手権大会 レースレポート
●2009.11.29:全日本470級ヨット選手権大会 レースレポート
●2009.11.24:470級国内強化合宿レポート
●2009.10.19:和歌山インターナショナルレガッタ レースレポート
●2009.9.23:Skandia Sail For Gold Regatta (ISAFワールドカップ最終戦・第7戦)現地レポート
●2009.9.12:2009 RS:X級世界選手権大会 in イギリス 現地レポート
●2009.8.31:2009 470級世界選手権大会 inデンマーク 現地レポート
●2009.8.29:2009レーザー級世界選手権inカナダ 現地レポート
●2009.8.18:2009レーザーラジアル(Y&M)世界選手権in唐津 現地レポート
●2009.8.10:2009スター級世界選手権inスウェーデン 現地レポート
●2009.8.5:レーザーラジアル級世界選手権in唐津 現地レポート
●2009.7.30:レーザーラジアル級世界選手権事前合宿レポート
●2009.7.22:49er級2009年世界選手権大会inイタリア 現地レポート
●2009.7.12:スター級2009年ヨーロッパ選手権inドイツ 現地レポート
●2009.5.18:ラジアル女子 海外選手招聘合宿レポート
●2009.4.23:第41回フランス・イエール オリンピックウイーク
●2009.2.20:JSAFインターナショナルレガッタ