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Radial championship


2010年 レーザーラジアル級世界選手権大会

レポート&写真:斉藤 愛子

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日 程2010年7月3日~10日
    ・7月6日~8日   受付、計測、チャーター艇供給
    ・7月8日       プラクティスレース、開会式
    ・7月9日~11日 予選シリーズレース
    ・7月12日~14日 決勝シリーズレース
    ・7月14日     閉会式、表彰式
開催地英国・ラーグス
日本代表選手
●女子
 長谷川 哲子(豊田自動織機)…ナショナルチーム
 原田 小夜子(長崎県セーリング連盟)
 蛭田 香名子(豊田自動織機)…ナショナルチーム
 高橋 香(福島県セーリング連盟)…ナショナルチーム
 松苗 幸希(室蘭市体育協会)
※世界選手権選考枠獲得順

●男子
 伊藤 秀郎(伊勢湾海洋スポーツセンター)
 廣瀬 一貴(住商情報システム)
 小野寺 正一郎(宮城県セーリング連盟)
 樋口 太郎(日章学園高等学校)
 永井 久規(豊田合成)…ナショナルチーム
 八木谷 允(NECシステムテクノロジー)

参加艇:男子/31カ国 104艇
    女子/41カ国 118艇
帯同NTコーチ:斉藤 愛子・飯島 洋一・佐藤結香(トレーナー)
大会公式サイト:http://www.laserworlds2010.co.uk/radial

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レーザーラジアル級の世界選手権がスコットランドのラーグス(英国)で開催されます。今大会はオリンピック種目の女子とレーザーラジアル級一般男子の2クラスが別海面で同時開催となります。レースは9日から始まります。日本からは女子5名、男子6名が参加します。

1007_radial C-01.jpgスコットランドの中ではセーリングが盛んなラーグスマリーナ。マストの林です。●開催地
ラーグスはスコットランドのグラスゴーから西へ60km、南側はアラン島(手編み模様のセーターなどで有名)、北は入江になっているため、強風が多いスコットランド西岸の中でも安全にセーリングが楽しめる場所です。英国の選手強化のナショナルセーリングセンターとなっているラーグスセーリングクラブがホストとなります。マリーナにはクルーザーが300艇以上係留されており、付近を観光クルージングするジェットボート(巨大なゴムボート)も目立ちます。



 昨年の世界選手権は佐賀県・唐津市で開催されましたが、女子は決勝で上位グループ(ゴールドフリート)に残ることができませんでした。昨秋から国内合宿だけでなく、週末を利用した練習会を増やし、年末年始は14日間連続合宿、ぶっとおしで、元旦もセーリングしてきました。海外レースの経験も増やそうと、5月には3週間で3レガッタに参加しました。練習量は昨年より200%アップです。まだまだ、トップセーラーには追い付けていませんが、どんな結果が出るのか、期待と不安でいっぱいです。まずは、ゴールドフリート目指して予選を戦います。

 男子には昨年世界選手権で4位に入賞、今年11月のアジア大会代表(レーザーラジアル級)に決まっている永井久規が参加します。3月のアジア選手権で対戦した韓国、マレーシア、シンガポール、カタール、UAEなどの選手がいますので、各国の代表選手の様子もうかがえます。永井はこの大会のために体重を落としてきました。ダウンウィンドがスピードアップしているのか、世界を相手に走りを試します。

 ラーグスは写真でもお分かりのように夏なのに寒いです。雨が降って風が強いと気温は12度とか。水温も13度しかなく、真夏とは縁遠いです。9日からのレースでは多少風が弱まり、気温も日中は20度くらいまであがる予報です。吹けば20ノット、強弱がつくと10ノット前後まで落ちることもあり、場所によって潮の流れが速くなっている島に囲まれた入江でのレースになります。14日までのレース期間中はオールラウンドなコンディションを想定して準備をしています。

1007_radial C-02.jpg6日に女子は計測を終えました。計測員がロープの取り回しを見ながら何やら相談しています。1007_radial C-03.jpg6月29日から現地練習をしているラジアル女子5艇。
1007_radial C-04.jpgラーグスヨットウラブの正面玄関でVサインの高橋香選手1007_radial C-05.jpg6日にチャーター艇を受取、雨の中を練習に出る永井。クラブには日の丸もあがります。

大会前日


準備は万端。レースは9日から

1007_radial C-06.jpgプラクティスレースのスタート。ジュリーボートから日本の大谷隆夫審判が鋭い眼を光らせています。長谷川が正面からいいスタートをきりました。3日間の受付と計測期間が終わりました。今日は15時からプラクティスレースがあり、女子はC海面、男子はD海面でレースが行われ、日本選手も参加しました。女子のエリアは練習していた海域とほぼ同じで、長谷川が出走しましたが、蛭田と高橋はコーチボートから見て、エリアのチェックと風と地形の影響などのアドバイスをコーチから受けました。

 男子のエリアは女子のさらに沖になり、ハーバーからエリアまで45分(12ノット吹いていました)かかる遠さです。明日から、毎日、この距離を通うのかと覚悟を決めた次第です。

 夕方6時半から開会式が行われました。50カ国から集まった選手は、街の南側にあるスーパーマーケットの駐車場に集合し、そこからバグパイプを演奏する吹奏楽団を先頭におよそ2kmにおよぶメインストリートから海沿いの遊歩道を行進しました。各国の旗を持ち、整列するわけではありませんが、スコットランドでは街のイベントではいつも行列を作って行進することが普通なようで、実に手慣れた誘導で無事に行進を終えました。この大会のメインスポンサーはラーグス街で、開会式のあいさつでは「ラーグスにまた来てください。友達や家族にもスコットランドのラーグスを宣伝して、ぜひ遊びに来てください」と世界への発信をしていました。
 ラーグスはこの大会のために新しいスロープを増設し、これから先も国際大会を招致できるように拡張しました。87年にラーグスへ来たギリシャの選手は「あの時は芝生と小さなスロープしかなかったのに、マリーナが巨大になり、スロープも増えて別の場所みたいだ」と話していました。英国は2012年オリンピックのために、国内での国際大会を数多くこなしながら、運営スタッフの訓練を行っています。優秀な人材はオリンピック運営に加えていく方針ですから、運営スタッフも気合が入っています。

 3日間の計測では、レーザー級のクラスルールの解釈の相違がありましたが、最終的にはジュリーの判断で幾つかの解釈がはっきりしました。今回はジュリーに大谷たかをさんがいるので、細かいことがわからなくなった時に確認をすることができて安心です。また、毎朝のコーチ会議ではレース運営とコーチとで意見交換と情報伝達を行い、レーザーの大会がよりよく運営されていくことを目指しています。今回はこれがさらに発展して、大会をしきるジェフ・マーティンから「今朝、みなさんにジュリー、大会運営のチーフ、レース委員長を紹介しました。毎日のレースで問題点があったら、彼らに伝えてください。夜のうちに改善できる点は改善して、翌朝の会議では改善されたことを報告できるようにしたい。協力して、いいレースをやりましょう」と話しがでました。全ての問題点は改善してオリンピックにつなげようというのが主旨だと思います。あちらこちらにRYA(英国のヨット協会)の底力が見え隠れしています。

 開会式の後のレセプションでは韓国のキム選手から「ナガイが3月のレースの時よりも痩せているじゃないか。彼はアジア大会にラジアルで出るのか?」と聞いてきました。韓国もアジア大会での金メダル6個獲得を目指して強化が進んでいます。明日からのレースでは、オリンピック種目の女子だけでなく、男子のレースも激しい上位争いになるのでしょうか。スタートは12時です。

1007_radial C-07.JPG男子6名、女子5名、スタッフ3名の計14名の日本チーム。応援よろしくお願いします。
1007_radial C-08.JPG開会式はバグパイプを持った吹奏楽団を先頭に30分余りの道のりを選手一同、行進しました。1007_radial C-09.jpgダクパイプの音楽隊を先頭にLargsの街を行進します。

1日目


大会レース始まる
初日、女子出遅れ。男子・永井13位につける

1007_radial C-10.JPG普通にやれば5番以内でフィニッシュできるはずなのに…簡単なミスが悔やまれます。1007_radial C-11.jpg第2レースの1上マークで高橋は25位で団子状混戦を戦います。大会初日は霧雨の中を出艇しました。弱い風でのレースになるのかと思いきや、12時5分のスタート前にレースエリアでは南の12~14ノットが吹き始め、ゼネリコがあったものの各グループ順番にスタートしました。予報では西に振れて強まるとありましたが、1レース目の終了間際にその変化が起こり、女子は2グループ目がぎりぎりフィニッシュできたものの、男子は2グループ目が途中キャンセルとなり、後からやり直す展開となりました。西に変化した風は最初20ノットまであがりましたが、長く続かず、2レース目の後半は8ノットまでに弱まりました。雨が降ったりやんだりしていましたが、最後は晴れ上がり、変化に富んだ1日でした。

 ラジアル女子は1グループが60艇近い大きさです。スタートで出遅れてしまうと次から次へと艇が来るため、圧倒されてしまいます。高橋香はフリートの流れでレース展開をでき、2レースを30番台でまとめました。15位から45位は団子状態で1上マークに来るので、集団の中でがんばれないとだめです。「1上は25番くらいだったのですか?少しずつ落ちてしまいました。ハイクアウトがんばったのですけど。ダウンウィンドはどちらかのサイドに出ないと自分の走りができません。デッドランがまだ長いですか…」(高橋香)

 男子は1グループが50艇強で、女子よりも北側のエリアでレースをしました。南風の時には左海面がないくらい岸に近かったのですが、風が西(右)へ振ったおかげで右海面に伸ばしていた永井にはプラスでした。2レースを終えて永井はトータルで11位につけていますが「3位と11位だったのに、韓国とシンガポールがトータルで前にいるいるのですか? え~! 今日はミスが多くて、スタートでティラーを離してしまったり、散々でした。明日、巻き返します」(永井)

 明日は不安定な天気の1日になりそうです。雷マークが予報で出ていますが、上空に寒気が入ってくるのでしょうか? 今日も気温20度いくかいかないか。選手は冬支度でセーリングしています。

■成 績
・女子/116艇 41カ国参加
 長谷川哲子 45-40 86位
 原田小夜子 54-48 103位
 蛭田香名子 40-45 87位
 高橋 香  37-32 68位
 松苗幸希  48-36 84位

・男子/91艇 31カ国参加
 伊藤秀郎 37-32   68位
 廣瀬一貴 30-32   61位
 小野寺正一郎 36-42 86位
 樋口太郎 34-38   76位
 永井久規 3-11     11位
 八木谷允 13-38   46位

大会公式サイト:http://www.laserworlds2010.co.uk/radial

1007_radial C-12.jpg第1レースのスタート。60艇が並ぶラインは300m近くあります。1007_radial C-13.JPGブルーG第2レーススタート。八木谷選手がいいスタートを切り上マークをシングルで回航。
1007_radial C-14.jpg初日のトップをいくオランダのマリット。でも、アメリカのアンナ・タニクリフ(北京五輪金メダリスト)が同点です。1007_radial C-15.jpgこの大会用に新設されたスロープ。男子が出艇しています。

2日目


女子は混戦。
男子・永井、2回目のシングルを取り、健闘

1007_radial C-16.jpg本日の第1レース1上に12位で現れた高橋。集団の流れに乗ってレースができたようです。1007_radial C-17.jpg思うようにレースができず苦しい展開の永井。苦しいながらも解決の糸口を探します。2日目のラーグスはレース海面に行く途中で南東からの吹き出しがなくなり、無風状態がありましたが、スタート前には北東から吹いてきて、8ノット前後の中で2レースを行いました。女子はスタートを試みた後、レース海面を沖に移動してからの2レースでした。
 北東の風は陸風になり、スコットランドの丘陵地域を通り抜けてくる風です。湾内に吹き出すところで強弱があり、ベンドもあり、難しいレースとなりました。女子は、全般的に昨日よりも風が弱いせいか、30位前後で頑張りました。第4レースでは高橋香が1マークを11位で回り、2上では9位まで順位をあげました。2回目のダウンウィンドも集団の中で粘ったのですが、1艇、2艇と少しずつ抜かれてしまい、フィニッシュは13位。
2上は左から結構あがれて、タニア(メキシコ)の後ろでシングルだったのに。ダウンウィンドは風がシフトして負けたのでしょうか?(ガストが入らないサイドにいたからですが…)キープできなくて残念です」(高橋香)
女子は上位陣も悪いレースがあり、昨日の吹きで悪かった選手が上位で固めるなど、混戦になりましたが、オランダが今日も総合トップを走っています。(明日のサッカーワールドカップ決勝が気になる様子です)

 男子は永井がトータルで16位ですが、前との点差は少ないです。ミスを少なくして、追いつくことでしょう。「第4レースはスタートで出遅れてしまったのですが、右へ逃げたら風が右からきて救われました。一応、シングルでフィニッシュはできたのですけど、やられています」(永井)。ライバルのキム選手(韓国)は「今日はOK!」と笑顔でしたが、3位以内でまとめている強みを見せていました。キム選手は体重が64kgで、永井とは10kg近く差があります。男子はアジア勢ががんばっており、アジア大会の強化が各国で進んでいる様子がうかがえます。

 明日は予選最終日で、2レースを予定しています。女子は明日のがんばり次第でゴールドフリートに残れるところに数艇がいます。女子は昨年日本に来なかった各国のナンバー2と3の選手がそろっていますが、ユースからあがってきたセーラーを含めて、力をつけている選手が増えています。ゴールドフリートに残るためには接戦の中で戦い抜く強い気持ちを持たなければなりません。男子もボーダーラインにいますので、明日の2本を精一杯、いいレースをしてくれることに期待しましょう。夕方に降りだした雨も冷たく、とても夏とは思えない1日でした。

■成 績
・女子/114艇 39カ国参加
 長谷川哲子 45-40-(47)-30  115位
 原田小夜子 (54)-48-39-39  126位
 蛭田香名子 40-(45)-31-28  99位
 高橋 香  37-32-(49)-13  82位
 松苗幸希  (48)-36-44-38  84位

・男子/102艇 31カ国参加
 伊藤秀郎 (37)-25-22-21    68位
 廣瀬一貴 30-33-17-(34)    80位
 小野寺正一郎 38-42-(44)-32  112位
 樋口太郎 34-(38)-30-22    86位
 永井久規 3-11-(15)-9      23位
 八木谷允 13-(39)-29-38    46位

大会公式サイト:http://www.laserworlds2010.co.uk/radial

1007_radial C-21.jpg少し風が弱くなると松苗はしっかり走るようになります。1007_radial C-19.jpgダウンウィンドでの混戦はシビアです。長谷川は集団の中でポジションキープに必死です。

1007_radial C-20.jpg第4レースで9位を走る高橋香。前はギンタレア・シェイド(北京五輪銀メダリスト)です。1007_radial C-18.jpg1上マークを20位前半で廻航する蛭田。

3日目


日本女子、全艇シルバーフリートに
男子・永井、総合14位につける

1007_radial C-22.jpg「こんなんじゃダメだ…。レースができてない。」1007_radial C-23.jpg本部船の横から出ようと艇を止める長谷川選手低気圧がグラスゴーに中心をもってゆっくり北東へ移動したため、朝から30ノットオーバーの強風。スタート時刻が5時間延期され、17時からレースがスタートしました。最初は10時に1時間延期があがったのですが、その後、1時間おきに1時間ずつ延長され、結局5時間待ち。15時45分にハーバーを出てレースエリアへ向かい、それから2レースを行おうとしましたが、1レースしか完了しませんでした。

 皮肉なことに、強風で風待ちしたはずなのに、レースが始まるやいなや、風は落ちてしまい、12ノットの西風でスタートしたもののフィニッシュでは北西6ノットになってしまいました。19時になっても2レース目をスタートさせようとするレースコミッティーにオランダやベルギーの選手達がデッキをたたいて抗議し、「ワールドカップの決勝が始まってしまう…」と騒いでいました。いい風なら我慢するけど、4ノットで左右に60度も振れる中で無理やりレースをしないでほしい、それならサッカー見させてくれというところでしょうか。風はなくなり、結局、スタートできずに終わりました。

 女子は1レースでゴールドフリートに残れるかどうかがかかっていましたが、高橋は捨てレースになる51位をとり、蛭田、長谷川も届きませんでした。松苗が18位と、風が落ちた時に右サイドでジャンプアップできて、いいレースをしてくれました。あと少しなのですが、つめの甘さというか、1艇でも抜こうというようなレース運びができませんでした。海外の選手と比べて、レース経験のなさが目立ちます。
 男子は永井が12位でまとめました。スタートで失敗し、途中20位前後を走る場面もありましたが、挽回して12位に入りました。トップを行くポーランドは強風でも微風でもトップをとり、ラジアル男子の3連覇目指して優勝街道をまっしぐらという印象です。
 女子は今日で予選が終わり、明日から決勝フリートに分かれます。残念ながら、5艇ともシルバーフリートになってしまいましたが、50%以内の目標はクリアできないとしても、51%になるように頑張ろうと励ましています。トップには2連覇を狙うサリ・ムルタラ(フィンランド)が出ました。

 今日はとにかく、待ちくたびれた1日でした。陸に戻ってすぐに首にオレンジのマフラーを巻いたオランダ男子選手達がクラブハウス2Fのテレビへと猛烈にダッシュしていきました。でも、結果はブラボー、スペイン!


■成 績
・女子/114艇 39カ国参加
 長谷川哲子 45-40-(47)-30-31  89位
 原田小夜子 (54)-48-39-39-34  96位
 蛭田香名子 40-(45)-31-28-36  82位
 高橋 香  37-32-49-13-(51)  77位
 松苗幸希  (48)-36-44-38-18  84位

・男子/102艇 31カ国参加
 伊藤秀郎 (37)-25-22-21-25    52位
 廣瀬一貴 30-33-17-(34)-13    51位
 小野寺正一郎 38-42-(44)-32-27  82位
 樋口太郎 34-38-30-22-(39)    78位
 永井久規 3-11-(15)-9-12      14位
 八木谷允 13-(39)-29-38-38    76位

大会公式サイト:http://www.laserworlds2010.co.uk/radial

1007_radial C-24.jpg風が強く待機させられる選手達。背中に哀愁が漂います。1007_radial C-25.jpg混雑の中でちょっと負けてしまっている原田選手

1007_radial C-26.jpg右からあがった松苗選手。14位まであがったのに、ダウンウィンドで少しずつ抜かれてしまいました。1007_radial C-28.jpgラジアル男子一般参加選手の広瀬選手。上マークを8位で回航し13位でフィニッシュ。徐々に海外レースに慣れてきた模様。

1007_radial C-27.jpg永井選手の様子が気になる飯島コーチ

4日目


男女とも6レース消化
男子3名がゴールドフリートに

1007_radial C-29.jpg1上マークを7位で廻航した高橋。右へ回り続ける風に翻弄されました。1007_radial C-30.jpg軽風の中ダントツで上マークをトップ回航。集団を引き連れて2マークに向かいます。晴れ時々曇りで、時々雨という大変な1日でした。今日から女子は決勝レースでゴールドとシルバー(総合57位以下)の2フリートに分かれてのレースとなりました。男子は予選最終日で、明日から決勝グループ分けになります。

 北風でスタートしたレースは、途中で雨雲の通過があり、徐々に右へシフトして最後は130度まで変化しました。中止になってもおかしくない流れでしたが、女子の場合は先頭グループがフィニッシュ直前だったこともあり、続行してしまったような状況でした。日本勢は1上で高橋香が7位で廻航しました。

右への変化に頭がついていかなくて、途中どこのマークを回っているのか錯覚に陥ってしまいました。もうフィニッシュだと思ったら、まだ1レグ残っていたり…、最後は見落としが多くて、失敗でした」(高橋香)

 高橋は10位でフィニッシュしましたが、途中から右へ右へと攻めてあがってきた松苗はフィニッシュ前のマークで高橋を抜き、8位でフィニッシュしました。
 レース中に南側の山の上で竜巻が発生しましたが、5分くらいで消滅し、大事に至りませんでした。ジュリーボートから本部艇に「トルネードが見える」と連絡が入っていましたが、本部艇ではあわてる様子もありませんでしたので、この地域では時々発生しているのかもしれません。

 男子は廣瀬が1マークをトップで廻航しました。

スタートは普通だったのですが、少し左へ伸ばしてからタックして右へいき、この時に自分だけ風があったのでよかったです。即タックして右へ行った艇はだめでしたから。ああ、なんか気持ちいい。ワールドに来てよかった! てしまって、1上回った後に下へ行こうとして、そこであっという間に2艇抜かれてしまいました。明日からゴールドです!」(広瀬)。

 廣瀬を抜いたうちの1艇は小野寺で、今日は日本選手の2-3位フィニッシュとなりました。永井、廣瀬、伊藤の3人がゴールドフリート(上位46位まで)に残りました。

 今日は男女ともに1レースしかできませんでしたが、女子は明日、11時半スタートの3レースを予定しています。2レース足りない状況なので、何とか取り戻そうとしています。


■成 績
・女子/114艇 39カ国参加
 長谷川哲子 45-40-(47)-30-31-25  80位
 原田小夜子 (54)-48-39-39-34-40  97位
 蛭田香名子 40-(45)-31-28-36-22  75位
 高橋 香  37-32-49-13-(51)-10  70位
 松苗幸希  (48)-36-44-38-18-8    73位

・男子/102艇 31カ国参加
 伊藤秀郎 (37)-25-22-21-25-16    46位
 廣瀬一貴 30-33-17-(34)-13-3      38位
 小野寺正一郎 38-42-(44)-32-27-2    73位
 樋口太郎 34-38-30-22-(39)-32    80位
 永井久規 3-11-(15)-9-12-14      17位
 八木谷允 13-(39)-29-38-38-11    63位

成績表:
http://www.laserworlds2010.co.uk/laserworlds/radial/women/radial_results.htm


1007_radial C-31.jpgシルバーフリートのスタートでは上エンドからトップスタートを決めた蛭田(196299)。1007_radial C-32.jpgゴールドフリート決勝レース。軽風のスタートは隙間がない状態です。

1007_radial C-33.jpg今日も夕方には風がなくなってしまい、largsの美しい町並みをバックに曳航で帰着です。1007_radial C-34.jpgレース中に山の上にできた竜巻。5分くらいで消滅したのでほっとしました。

5日目



風無く…長い待機の末、ノーレース

1007_radial C-35.jpg鏡のようなレース海面。丘の上にお城がありました。朝から風がなく、11時半スタート予定の女子は11時まで陸上待機となりました。僅かに吹き始めた北風でレースをやろうと、11時にAPが下りて出艇しましたが、風はまたなくなり、16時まで海上待機の後、後日延期の旗があがりました。他の大会でもよくあることですが、中止が決まった直後、ハーバーへ曳航されていく間に8ノットを超える南東の風が吹き出し、「ああ、待っていれば…」と思わす場面もありましたが、その風も長続きせず、海上に残っていたとしても、結局レースはできなかったのではないかと思います。

 明日は最終日になりますが、スタートは午前10時で3レースを予定しています。最終スタートは16時以降行わないため、予報されている東風15ノットがあたれば、うまくいくのではないでしょうか。

 昨日の女子の成績表は、シルバーフリートの順位をコンピューターが区分して計算してしまったため、誤りがありました。訂正は下記のとおりです。

■成 績
・女子/114艇 39カ国参加
 長谷川哲子 45-40-(47)-30-31-25    85位
 原田小夜子 (54)-48-39-39-34-40  102位
 蛭田香名子 40-(45)-31-28-36-22    80位
 高橋 香  37-32-49-13-(51)-10    72位
 松苗幸希  (48)-36-44-38-18-8      73位

・男子/102艇 31カ国参加
 伊藤秀郎 (37)-25-22-21-25-16    46位
 廣瀬一貴 30-33-17-(34)-13-3      38位
 小野寺正一郎 38-42-(44)-32-27-2    73位
 樋口太郎 34-38-30-22-(39)-32    80位
 永井久規 3-11-(15)-9-12-14      17位
 八木谷允 13-(39)-29-38-38-11    63位

成績表:
http://www.laserworlds2010.co.uk/laserworlds/radial/women/radial_results.htm


1007_radial C-36.jpg昨年のボルボユースラジアル女子勝者 シンガポールのエリザベスと歓談中の長谷川、松苗。1007_radial C-37.jpgボーダーギリギリでゴールドフリートに残った伊藤選手。7月なのにこの格好です。

1007_radial C-40.jpg結局風は吹かずにAP&A旗でハーバーバックです。1007_radial C-39.jpg無人レーザーとすれちがう松苗。うっかりするとぶつかってしまいそうです。

1007_radial C-38.jpg一応アンカリングして、いつでもスタートできるようにしていた本部船。無線の声は風速ゼロの繰り返しでした。

6日目


最終日、風コンディション整わず、またもノーレース
大会は6レースのみにて閉幕

1007_radial C-41.jpgもう、待つしかない。風の音がゴーゴー聞こえるテントで待つ日本選手達。昨日は風がなくてノーレース。今日は風が吹きすぎてノーレース。この2日間、全くレースができない状況で大会は幕を下ろしました。朝から40ノット近いガストとスコールのような雨が繰り返し降ったりやんだりする中、10時スタート予定は延期され、選手はスタンバイ状態で風が落ちるのをひたすら陸上で待ちました。昼過ぎに風速はあがり、平均が27ノット、ガストが42ノットをレース海面で記録し、今日はもう無理という印象がありました。しかしながら、レース運営サイドは最後まで希望を捨てず、海上へ出てレースが可能かどうかトライしました。1レースでもできるなら、16時のスタートのタイムリミットまで努力を重ねました。

 スコットランドの上空には強い寒気が居座り、次から次へと低気圧や雨雲が発生して大会中、毎日一度は雨が降るコンディションでしたが、今日はその総まとめのような強い寒気が下りてきて、992hPaの低気圧(台風みたいな数値です)が通過していきました。
 2日前までの結果がファイナルになりましたが、女子の優勝はフィンランドのサリ・ムルタラで、昨年の唐津ワールドに続いて、2連覇です。男子の優勝のマルチェン・ルダルスキ(ポーランド)も同じく2連覇です。ルダルスキはスタンダードリグで2回のオリンピックキャンペーンを経験していて、その頃よりはスリムになった印象がありますが、相変わらず凄い体力の持ち主です。
 女子は合同で練習することがあるムルタラ(33歳)とオランダのマリット・ブーメスター(22歳)がワンツーをとりました。ムルタラは強風番長で微風が苦手なはずでしたが、今回は1レースだけ40番台をとったものの、残りはすべてトップ5でまとめての優勝でした。苦手を克服し、オリンピック本番を目指してレベルアップしてきた結果の勝利でした。ブーメスターは捨てレースがないくらい安定した成績で昨年の6位からジャンプアップしてきました。ユースチャンピオンから、大人っぽくなってきただけでなく、実力もつけての銀メダルです。
 3位のペイジ・ライリー(米国)は2005年のワールドチャンピオンですが、昨年の唐津では全くふるわず、オリンピックチャンピオンのアンナ・タニクリフが昨年は3位でした。今回は久々の表彰台で復活を印象づけました。タニクリフはマッチレースとラジアルと両方で活動していますが、本人いわく「本命はマッチレースで、ラジアルはヨットレースの練習」とのこと。マッチレースで金メダルをとることが目標です。ライリーがラジアルとなれば、米国は2種目で金が狙えるというもくろみです。

 男子は昨年の唐津では日本人の参加が多くて世界選手権という手ごたえがありませんでしたが、今年は英国にきて、海外勢ばかりでのレースで、世界の走りとレースにチャレンジできました。その中で、唐津で4位に入っていた永井が今回は17位と振るいませんでした。韓国やシンガポールに先行される状況で大会を終えましたが、後半に入ってレース数が少なく、しかも男子は決勝シリーズが1レースもできずに終わりました。レースをサポートした飯島コーチは「11月のアジア大会本番までに細かいミスをなくすことと、ラジアル独特の微調整を覚えることをやったなら、韓国、シンガポールに中国が加わった中でも互角に戦えると思います。9月はレーザーワールドがあるから、ハイクアウトはそこで鍛えるとして、その後はラジアルでトレーニングパートナーと走りこみをして準備したらいいでしょう」と言っています。永井はそのパートナーには飯島コーチを希望しているようです。

 女子は繰り返し練習してきたスタートとダウンウィンドは20位前後の選手と走るなら負けないでいかれるようになり、昨年のようにスタート直後のJPNがタックして逃げていくようなシーンは少なくなりました。次の課題は『ファーストシフトと50艇フリートの中での我慢、レースの最後まで集中すること』と、とにかく、『もっと相手を追い抜く気持ちを前面に出して、強い気持ちでレースすること』です。練習は練習、レースはレースということではなく、『常にレースを想定して、風を読んで、レースを組み立てることができるように練習の時点から取り組んでほしい』と思います。世界のトップ15艇はスピード、技術ともに抜けでていると思いますが、それ以下は少しの差しかないのです。また、来年までしっかり練習してそのレベルまでは追いつかなければなりません。

 松苗は得意な軽風でいいレースをしました。苦手な強風を克服したならば、来年はもっと順位があがるでしょう。国内では体格と体力で強風レースを制覇してきた蛭田はスピードが同じくらいのフリートの中に入るとレースの経験不足と集中力の短さが目立ちます。予選の1レースで13位をとった高橋は、フリートの流れの中でスタートが出られれば普通にコース展開ができるようになりました。ダウンウィンドでも同じようにコースが見れるようになることと、自分に対する甘さを克服することです。長谷川は波のある海面で体を使って走らせることと、途中からノープランになってしまう…と、自分でもわかっているように最後までレースプランを組み立てられるようにならなければなりません。
 原田は日本で見せてくれた軽風での走りとリフトを確実に走るコース展開が見られませんでした。シフトが正しく判断できていなかったと思いますが、コンパスがなかったせいなのか、ハイクアウトに集中しすぎて見えなくなってしまったのか、走りに迷いがあるまま、大会が終わってしまいました。

 今回は唐津よりも数が増え、各国のトップだけでなく、2番手、3番手が集まったので、より厳しい大会でした。全体の50%という目標に届かず、高橋の72位は65%、32カ国目が最高順位でした。来年の世界選手権は五輪予選を兼ねて、オーストラリアのパースで開催されます。そこで枠をとれるよう、今から、16か月、フリーマントルドクターを覚悟して、乗り込み、練習していきたいと思います。

 ラジアル女子と男子は本日で大会を終了しますが、7月16日にはラジアルユース選手(男子6名、女子4名)が到着し、引き続き、ラジアルユース世界選手権が同じラーグスで開催されます。女子、男子と同様に応援していただけますよう、よろしくお願いします。


■成 績
・女子/114艇 39カ国参加
 長谷川哲子 45-40-(47)-30-31-25    85位
 原田小夜子 (54)-48-39-39-34-40  102位
 蛭田香名子 40-(45)-31-28-36-22    80位
 高橋 香  37-32-49-13-(51)-10    72位
 松苗幸希  (48)-36-44-38-18-8      73位

・男子/102艇 31カ国参加
 伊藤秀郎 (37)-25-22-21-25-16    46位
 廣瀬一貴 30-33-17-(34)-13-3      38位
 小野寺正一郎 38-42-(44)-32-27-2    73位
 樋口太郎 34-38-30-22-(39)-32    80位
 永井久規 3-11-(15)-9-12-14      17位
 八木谷允 13-(39)-29-38-38-11    63位

成績表:
http://www.laserworlds2010.co.uk/laserworlds/radial/women/radial_results.htm


1007_radial C-42.jpgクラブハウスには無情にもレース終了の旗があがってしまいました。1007_radial C-43.jpg午前10時の虹。ダブルレインボーは幸運の印のはずですが、1日中強風でレースができず。

1007_radial C-44.jpg男子で5位入賞 キム(韓国)。アジア勢いでは8位にシンガポールが入り、世界の中でも上位に。1007_radial C-46.jpg16時のスタートタイムリミット時刻のぎりぎりまで海上でスタンバイしていたレース運営チーム。

1007_radial C-47.jpgスコットランドといえばバグパイプの音色です。表彰式にも登場。1007_radial C-45.jpg左から3位のペイジ・ライリー(アメリカ)、2連覇を果たしたサリ・ムルタラ(フィンランド)、2位のマリット・ブーメスター(オランダ)

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