文・写真：斉藤 愛子

　年末の12月26日から31日にかけて、鹿児島の鹿屋にレーザー級5艇、ラジアル級6艇が集まり2009年最後のＮＴ合宿を実施しました。鹿屋は2010年2月にナショナルチーム選考レースが開催される場所ですから、合宿の大きな目標は「鹿屋・攻略法」と「My Boat handling is Perfect」でした。
　合宿メニューは最初のウォームアップドリルから始まり、スタート練習、アップウィンドとダウンウィンドのすべり、ショートコース、そして毎日必ず1ないし2の40分程度のレースを行いました。レースコースは地元・鹿屋の榮楽コーチがＮＴ選考本番で想定しているエリアで行い、運営コーチ陣は水深50ｍ以上の中でマーク設定を実施。距離も佐々木コーチがＧＰＳで正確に設定しました。（同じ期間に鹿屋で自主練習中だった470女子の吉迫・大熊もレーザーの邪魔にならないようにコースを周回し、所要時間を測りながら佐々木コーチがデータをとりました。）

　攻略法がテーマですから、日々選手に要求されることは多いです。初日はスタート前にレースの準備をする動きが少なく、早速夜のミーティングで飯島、斉藤コーチから注意が飛びました。「スタート前のプランとは何か」「風の傾向は？」「潮は？」「何を元に組み立てるのか？」「実際に走ってチェックしなさい」とごく当たり前のことながら選手がやっていないことを次々と指摘し「明日、また聞くから！」と。選手からそのレースのプランを聞いた後でGPSを見て検証し、その日にレースエリアで何が起こっていたかを全員で話し合いました。

　2日目から選手の表情が変わりました。毎日のレースは成績をつけ、最終日に何か賞品が出るということからお年玉レースと命名されましたが、スタート前に準備の時間も設けエリアを自分でチェックすること、自分なりに判断をしてレースをやってみることを毎日続けました。GPSのスイッチを入れ忘れた選手はその日のミーティングで自分の走りだけがパソコンの画面に表示されないため、とても寂しい思いをしていたようです。全員の意識の中にレース前にチェックすることと、それを使ってどういう結果が出たかという点を考えていく習慣ができたのは大きな進歩です。レースストラテジーの基本を覚えることが最初の課題でしたが、レーザー男子はそこからさらに対相手というタクティカルな部分まで話が進むようになりました。女子はまだそこまで頭が回らない状況でしたが、男子の話を聞きながら次のステップとして考える基盤はできたと思います。毎日の練習は動作練習も沢山やりましたから、ミーティングの最初に飯島コーチがビデオの中から選択して動作や走りを解説。榮楽コーチは連続写真を見せながら詳細にしぼって動きの説明をしてくれました。飯島コーチはアジア大会の経験者ですから1艇に負けることにこだわりをもつように意識を高くもつことを強調しました。細かいところでミスした場面をVTRで見せ「１点差で負けたらアジア大会へ行けない。金メダルがとれない。この動きひとつで、金メダルじゃなくなるんだ」と、特に雑なミスが多い安田選手には厳しく指摘をしていました。

　海上に6時間以上出る日もありましたが、1レースの日は夕方5時から7時まで鹿屋体育大学のトレーニング室で筋トレも行いました。それぞれ個々のメニューを継続して実施している選手はそれを続け、体幹は全体でもやりました。また、筋トレの無い日はセーリング終了後に海岸線をクールダウンでジョギングし、選手は準備運動からクールダウンまでしっかり体を作り体を壊さないよう意識するようになりました。

　今回は高校生の南里君がNTにまざってフルリグで参加しました。恵まれた体格を生かして将来のトップセーラーを目指し早くから大人のＮＴと一緒に育成していきたいという狙いです。また女子もNTを狙うメンバー3名が加わり、2月にはラジアル2枠を目指して相当熾烈な争いが展開されるのでしょう。シングルハンドは心が強くなければ負けてしまいます。国内での争いが海外でも戦える強い選手を育成することに必ずつながると信じています。お年玉レースはNT外の城選手（レーザー）と松苗選手（ラジアル）が優勝となり、賞品の「ウィンドストラテジー（本）」をゲットしました。全レースカウントなので努力賞も含まれています。引き続き、風の勉強をしてください。

　鹿屋ではNT合宿の後も正月休みしか練習できない社会人セーラーと冬休み最中の大学生が集まり練習を続けました。2月にここで選考会ですから海に出るしかありません。北西の風が安定して吹く日、前線通過で右周りでシフトする日、まったりした1日、1日に10回も小噴火で爆発する桜島と鹿屋へ飛んでくる火山灰、この滞在中はいろいろありました。しかし全国各地が大雪で苦労した年末を思えば休みなくずっと毎日練習ができ、1日おきに風が変化し、突然見える岩の暗礁に乗り上げたりと、実のある合宿になりました。