報告：斉藤 愛子

がんばれ、チャレンジャー達！

　11月28日～29日の週末、8艇が参加して49er級全日本選手権が江の島で開催された。2日間とも、北東の風が8ｍ前後吹く中、土曜日はレースをおこなわず、講習会として日曜日に4レースを実施した。
土曜日のレースをとりやめて、急遽、講習会にした理由は、新チーム育成のためである。今年は初めて岡山、大阪、香川からのエントリーがあり、普段、地元で危ない思いをしながら49erセーリングを試みているセーラー達に基本を覚えてもらい、強風でも安全にハーバーから出着艇ができること、沈してもしっかり起こして走れる技術を身につけてもらうことを第一とした。江の島に遠征してきて、これらのことを学ぶ機会を設け、トップセーラーの走りから次のステップを見出してもらえたら彼らにとって今年の大会は非常に有効なのではないか。全員一致でそれを決定した次第だ。
　49erは、とにかく乗れるようになるまでが時間がかかるハイパフォーマンスディンギーである。普通のディンギーとバランスのとり方も違うし、止まってしまうと舵がきかないから自分の意思に反して艇が風位を向いたりするし、ベアしたくても、バウが風下を向いてくれない。コツを覚えて慣れるまでが第１段階。江の島で活動している橋本組や、北京目指して活動をしていながら、最近はレーザーに転向してしまった城などは、地道な努力で次のステップへとあがってきたセーラー達だ。470のトップセーラーも49erに乗った最初の段階では、自分がなんとヨットが下手になったのか…と感じるところがあるだろうし、加速して飛ぶのが怖いと、臆病なかじ取りになってしまう。見ていると、乗り手の性格が分かるので面白いものである。
　日曜日は朝から8ｍ吹いていたものの、全艇がハーバーから海上へ向かい、4レースを行った。岡山の岩崎・小林組と大阪の中野・鈴木組はスタートラインまで来ることで力尽きてしまったため、今回は1レースもフィニッシュできなかった。香川の新居・田井組は1レース目に何とかフィニッシュにたどり着いたものの、次からのレースは力尽きてリタイア。でも、江の島に来て、乗り方を教わり、チャレンジする意欲をみやげに各地へ戻ることになったことだろうし、来年までしっかり乗って一人前の49erセーラーに成長してほしいと思う。
　49erの底辺を支える橋本、高野はクルーの東選手をシェアして、2レースずつ参加したが、フィニッシュラインを横切る時の満足そうな笑顔がよかった。いつか、また世界選手権にチャレンジしてほしいと思う。
驚きなのは、城選手で、最近はレーザーで苦しそうな顔をしてハイクアウトしている姿が目立つのに、49erを操る時は実に楽しそうな顔でセーリングしている。クルーがどこかへ飛んでいってしまうような撃沈をしても、起こしてからまた果敢にジェネカーをあげて加速していく姿にはスピード狂魂が見えていた。SPNの470チームが交代でクルーをつとめたが、初めて49erでレースしたとは思えなかった。
昨年のチャンピオン、中村・佐々木組（現在両名ともにオリ特強化コーチ）は、2回ほど練習をして連覇を試みたが、佐々木クルーの動きがシャープでよかったと思う。2人とも、「50歳になるまで49erに乗るぞ！」と、合計100歳まで“がんばる宣言”をしていたが、隙あらば牧野・高橋組に勝とうとプッシュしていく底力には、勝負へのこだわりがみえてさすがだった。残念ながら2連覇はならなかったが、これからも49ｅｒを支え続けてほしい。
　新チャンピオンは牧野・高橋組で、ロンドン五輪目指して本格的に活動を開始したチームがオールトップで圧勝した。昨年は牧野がクルーからスキッパーへ転向したばかりだったのでミスが多く、隙をつかれて同点2位に甘んじたが、1年間の進歩はめざましく、スピード、動作にはっきりと表れ、JPNを背負って、海外での活躍が期待される。体格、体力ともに海外チームにひけをとらないし、牧野の性格は49er向きだから、1本、思い切り突っ込んでくれたらいいのではないだろうか。

　12月は寒い。2時間近く泳いでしまった鈴木クルーや他多くの選手と寒風にさらされる運営の希望もあり、来年はもう少し暖かい10月に全日本を開催する。各地からのチャレンジャー達がどんな進歩を見せてくれるのか。また、新たにチャレンジしたいメンバーがあったら49ｅｒ協会へ、ぜひ、ご連絡を！（行け行けタイプのスピード狂が49erにはバッチリですよ）


■2009年度49er全日本の成績
1位：牧野 幸雄／高橋 賢次　　　　　 （関東自動車工業）　　　　　 1-1-1-1
2位：中村 健次／佐々木 共之　　　　 （日本セーリング連盟）　　　 2-2-2-2
3位：城　 航太／前田 弘樹・谷川 亮介（エス・ピー・ネットワーク） 3-4-3-3
4位：高野 学／東 巧眞　　　　　　 　（江ノ島フリート）　　　　　 DNS-DNS-4-4
5位：橋本 航介／東 巧眞　　　　　　 （江ノ島フリート）　　　　　 5-3-DNS-DNS
6位：新居 健太郎／田井 克幸　　　　 （大紀商事/百十四銀行）         4-DNS-DNS-DNS
7位：中野 鉄芳／鈴木 國央　　　　　 （奈良県セーリング連盟）       DNS-DNS-DNF-DNS
7位：岩崎 裕児／小林 俊彦　　　　　 （三菱自動車工業/アイネス）   DNS-DNS-DNS-DNS

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