平成24年度 第1回 東日本大震災復興支援
セーリングクリニック
オリンピック特別委員会
Report:NC 中村 健次
充実した2日間
東北4県の高校生、大学生 約70名が受講
●開催日:平成24年4月7~8日
●開催地:大学生(宮城県七ヶ浜町吉田浜)、高校生(小浜)
●主 催:JSAFオリンピック特別委員会
●共同開催:東北セーリング連盟、宮城県セーリング連盟、(社)宮城外洋帆走協会、関東学生ヨット連盟
●参加校:仙台一高、仙台二高、塩釜高校、石巻高校、宮城県水産高校、気仙沼高校、気仙沼向洋高校、いわき海星高校、青森工業高校、東北大学学友会ヨット部、東北学院大学ヨット部、東北大学医学部ヨット部
▲JSAF河野会長のご挨拶「東北セーラーにエールを送る」▲津波によるフェンスの痛々しい傷跡▲今回参加したトップコーチ陣東日本大震災から1年余の去る4月7・8の両日、昨年10月の第1回目に引き続き第2回目(平成24年度第1回)の「東日本大震災復興支援セーリングクリニック」を開催しました。
私たちは半年ぶりに開催地の七ヶ浜・小浜に足を運びました。当時と比べると、漁協の機能は回復途上でしたが、基礎部分のみ残っている状況だった海辺の建物は半年前と変わらず痛々しい爪痕を残したままでした。
今回のクリニックは、そのような状況下での開催にもかかわらず多くのセーラー(高校生・大学生約70名)が集まり、また、JSAF河野博文会長をはじめとする有志の炊き出し部隊も合流、地元の連盟・関係者の方々なども参集され、当初の想定を上回る大きなイベントとなりました。
昨年の第1回目は関東自動車工業の関一人コーチ(アテネ五輪銅メダリスト)と私中村のオリ特2名で大学生を対象に開催しましたが、今回は東北4県に呼びかけた結果、高校生も参加を希望したいということで、指導陣としてJSAFジュニア・ユース育成強化委員会(通称チビ特)の白石潤一郎コーチ(全日本スナイプチャンピオン)、重由美子コーチ(アトランタ五輪銀メダリスト)、そして重コーチの師匠“あの「松山和興コーチ」”(玄海セーリングクラブ)にも協力を仰ぎました。
高校生はFJ級を持ち込み、オリ特・チビ特からはISAFユース世界選手権で採用されている420級4艇を持ち込み、一緒に走らせたり、レースをしてみたりと今までにない取組みも行われました。「高校生には2艇をセーリングした印象を率直に聞きたい」という思いもありましたが、東北の高校生たちにとって、この時期に多くの仲間と練習が出来たこと、トップコーチからの新鮮なアドバイスをもらえることなど、終始真剣な眼差しでクリニックを体験していた姿が印象的でした。
初日は冬型気圧配置のためあいにく雪まじりの天候でした。海上に出て練習するうちに徐々に風も強くなり大学生も高校生も沈艇続出になってしまいました。せっかくのクリニックですから何とか練習をさせたいと思いましたが、大きなトラブルも起きず幸いでした。しかしながらこの季節、まだまだ寒い東北でのセーリングに軽装で練習している選手もいて、危機管理・安全確保に一層留意することの必要性など、夜の講習会で選手及び指導者の方々に安全管理(服装・沈おこし等)面についてもお願いした次第です。
2日目は午前中の無風から、昼頃には軽中風の風が入りレース形式での練習を行いました。地方から参加の高校(指導者)からは15時にはハーバーに戻りたいとの要望がありましたので、「15時練習終了」を告げたところ、なんと「あと1レースしてください」とのリクエストが入り、みんなで集まり練習することがいかに楽しいのか、さらには参加者のセーリング向上心の高さが伝わってきて私としては嬉しい限りでした。
▲海上練習風景
▲海上練習風景今回も初日の練習を見て、「基本技術をしっかり身につけること」を第一に指導をしました。前回にお願いした艇の整備、レースに出る前に先ず「シーマン」としての自己責任をしっかり果たすことを再度強調しました(基本は出艇から帰着まで自力で帰れる事が大前提です)。艇の整備についてはトラブルを起こさない整備が最重要ですが、2つ目は怪我をしない整備をすること、3つ目は体の動きややりたいことが直ぐ出来る整備です。初日の沈艇続出の裏側にはジブシートをカムクリートから外せず吹き倒されるケースが多く見られました。これはハーバーに戻って気が付いたことですが、外れにくくなっているジブカムクリートだったからです。
もう一つの指導は、このような事態(ジブシートが外せない)が多く発生し上手く出来ないことを「なぜ出来ないのか?」と「考えること」も提案しました。なぜなら道具を使うスポーツである以上「道具によって起こる色々なことがある」ということを分かって欲しかったからです。セーリングにとってボートスピードに影響するセールシェイプやチューニングに注力することはもちろん大事なことなのですが、私は艇の整備も「セールと同じように艇のチューニングだ」と堅く信じていますし、選手時代にはいつも「なぜ?なぜ?」と考えていました。このことは今回のクリニック参加者だけに限らず、このレポートを読んで頂いた皆さまにも伝えたいことです。また、「基本を覚えることが上達への早道」だということも認識してほしいと思います。これも私たちオリ特・チビ特の信念です。
今回のクリニックは2日間という短い時間でしたが、私たちのセーリングへの思いが少しでも伝わり、東北地区次世代セーラーの育成強化に役立つことができれば幸いだと思います。
最後に、被災された東北地区の皆様の確実なる復興をお祈りするとともに、クリニックに参加された選手・指導者・ボランティア・地元の皆さまに感謝申し上げます。
▲海上練習風景▲海上練習風景
▲海上練習風景▲海上練習風景
▲河野会長率いる炊き出しメンバー、トン汁とお汁粉が振舞われた▲陸上にてセールシェイプについてのレクチャーを行う