まとめ
Laser Standard Men's World Championship 2013
レーザー級世界選手権
2013年レーザー級世界選手権 レポートまとめ
これがレーザーチャンピオンのスタート!
2013年レーザー級世界選手権はロバート=シェイドの優勝で終わりました。昨日レポートした「最後の15秒」のお手本となるロバートシェイドのスタート連続写真をご覧ください。風は6ノット前後です。
この直前、シェイドは後方から艇団の中に入って行きました。特徴は風上にスペースのある場所を選んでいる事です。20秒前までは大きなアクションは少なく、とくに風上、風下の両方にスペースを確保しているように思います。
20秒前になると、クライミングに備えたスピード作りのため風下スペースを使って加速、18秒前からクライミングを開始します。クライミングの量は写真を見ても一目瞭然なのですが、20秒前にスピードを確保していることが重要になります。
①スタート13秒前
②スタート12秒前
③スタート11秒前
④スタート9秒前
最後の10秒間はスペース確保が終了しているため、加速に向けて準備をして行きます。この時クローズホールドの角度よりも風下に向けないのが特徴です。また、風下の艇がクライミングしてきますが、既にシェイドは届かないところまで逃げています。
スタートの5秒前には加速アクションを開始、3秒前にはフルスピードでスタートラインを抜けて行きます。スタート後すでに艇団よりも、半艇身以上加速で前に出ており、このレーストップでフィニッシュし、優勝を決めました。
⑤スタート8秒前
⑥スタート7秒前
⑦スタート6秒前
⑧スタート5秒前
⑨スタート4秒前
⑩スタート3秒前
⑪スタート2秒前
⑫スタート1秒前
⑬スタート!!
オマーンで開催された今大会は、23日に終了し、無時に帰国しました。最後にレース後の選手からのレポートをご紹介します。
●安田 真之助
今大会では風域を問わず前を走ることができませんでした。レーザーワールドに何度もチャレンジしていますが良い結果が残せなくて残念です。
今回の世界選手権を振り返って前を走れない原因は2つあると思います。1つは世界選手権までの取組みだと思います。国内の練習の中で内容の濃い練習ができていなかったと思います。世界選手権の期間に鈴木コーチと何度もミーティングを行い、何が正しくて、何が間違っているのかが具体的に見えてきました。また何らかの固定観念によりヨットレースそのものが理解できていない部分が大きいと感じました。
レーザー級男子は前回のオリンピックで国枠を獲得できていない種目です。 来年のISAFワールドでは何としても国枠を獲得しなければなりません。そのためにはナショナルチームがまとまって練習するしか方法がないのです。今回それぞれの選手が課題を感じたと思います。来年のISAFワールドまでにお互いが協力しナショナルチーム全体のレベルアップを図りたいと思います。またユース、シニアの選手を含め少しでもオリンピックに興味のある選手と練習時間を共有できれば良いと思います。
●谷口 斎謙
ゴールドフリート進出を目標においてレースに臨んだのですが、結果は惨敗でした。予選3日間の強風域でのスピードが足りず、上位を走ることができませんでした。
予選最終日からは軽風となり比較的安定して走れるようになったのですが、決勝シリーズに入って2レース続けてBFDとなってしまいました。
この様な最悪のミスは許されないことで深く反省しています。
今大会は全くいいところがなく終わってしまい申し訳なく思っています。
強風域でのスピードをあげる為に体重アップと筋力トレーニングを重ね、戦える体を作りあげたいと思います。
応援していただきありがとうございました。
●南里研二
今回の大会では目標をゴールドフリートにしていましたが、あまりにも差がありました。でもその差とは普通のことを普通にできていないだけだと思いました。それだけでなく、考え方も間違えていました。
国内では当たり前になっていて気がつかない所も気づけて、いい経験ができました。今後はこの反省を活かして大きく改善して練習をしていきたいと思います。そして日本チームでもっと集まったりして、定期的に練習していきたいです。
今回の反省をふまえて考え直したいと思いました。
●粟野和昭
レーザー世界選手権に参加して、自分の力不足をただただ痛感するばかりでした。世界で戦うには、何を持って勝負をするかを明確にすることができず、今まで自分がしてきたことの延長で練習することしかできなかったことに悔いを残すばかりです。
レーザーの世界選手権に出場し、そのレベルの高さを実感することによって自分にとって何が足りないかという明確な目標を立てられたことが、せめてもの収穫であると信じ、これから精進していきたいと思います。
2回目の出場でしかも日本代表選手でありながら、不甲斐ない成績しか残せなかったことを強く反省し、この経験をなんらかの形で(反面教師的な…)若い世代に伝えればと思っています。
最後に
選手たちは今年の反省を生かして、練習環境の整備、体作りに励み、来年のシーズンに向けて活動をしてくれることと思います。次の予定は12月11日からのナショナルチーム選考レース、16日に体力測定となります。
長期間、レポートを読んでいただきありがとうございました。
(Report & Photo 鈴木國央/JSAF オリンピック強化委員会ナショナルコーチ)
Day7
2013年レーザー級世界選手権 7日目
応援、ありがとうございました!
オマーンで開催されていたレーザー級の世界選手権大会は、本日、最終日を迎えました。
しかし、朝から風が弱く、長い風待ちの後、ゴールドフリートのみが1レースを行いました。レースはゼネラルリコールの後、オールクリアでスタートし、ブラジルのロバート=シェイドが横綱相撲で1位を獲得、レーザー級で9度目の世界選手権を制覇、オリンピックと世界選手権と合わせて、14個目の金メダルを獲得しました。
日本のナショナルチーム選手からのコメント、また、昨日のレポートでお伝えしたスタートに関する情報は、帰国後ご報告させていただきます。
7日間の応援ありがとうございました。
(Report 鈴木國央/JSAF オリンピック強化委員会ナショナルコーチ)
●大会成績:
http://omanlaserworlds2013.com/results/Laser_Standard_World_Results.php
●大会Webサイト:http://omanlaserworlds2013.com/eng/
Day6
2013年レーザー級世界選手権 6日目
スタートまでの最後の15秒
オマーンで開催されているレーザー級の世界選手権6日目の今日は決勝シリーズ第2、第3レースが行われました。
昨晩この地方を襲ったサンダーストームは風速50ノット以上の暴風をもたらし、会場に設置されたテントを吹き飛ばしたそうです。今朝になっても雨が残り、風が期待できなかったために、朝のブリーフィングでは陸上待機の指示だったのですが、レース時間になると海面はこれまで経験したことのない陸からの8ノットの風が吹き、予定時間よりも少し遅れて出艇しました。しかし、選手が海面に着いたときは風が消え始め、風待ちのあとにハーバーバック。結局、海風を待ちスタートしたのは午後1時半となりました。
8ノット前後の海風の中、ゴールドフリートはゼネラルリコールの後スタートしたのですが、シルバーフリートはゼネラルリコールを繰り返し、なかなかスタートできません。結局2レース目は両フリートとも日没を理由にコース短縮が行われ、帰着したのは日没後となりました。
レースは最終日を残すのみとなり、ブラジルのロバートが首位をキープしています。2位はキプロスのパブロス。ロンドンオリンピックで彗星の如く現れ、銀メダルを獲得した選手です。3位はクロアチアのトンチとなっています。
ゴールドフリートになってからも、上位陣の選手たちはスタートを失敗しません。その理由は、ラインとの距離、時間、風下のスペース、スタート時、またスタート後のスピードなどなのですが、技術的なことはともかく、考え方の話を少々したいと思います。
スタートは一般的に、ラインとの距離やスピードを把握して、自分のスペースを確保することで成功率が高くなります。しかし今回のような選手権では、スタートラインの長さは「艇数×全長×1.5(クラスにより異なる)」で設定されるため、スタートラインはほぼギッシリとレース艇で埋め尽くされてしまいます。その中でスタート失敗しない彼らは、最後の15秒〜20秒間に自分のスペースを確保する努力をします。
コーチボートに同乗しているブレット氏は「クライム」という言葉を使いますが、それまでの間に準備してあったラインとの残りの距離、スピードを使って最後のスペースを作り、最後はベアなどせずにクローズホールドのままスタートしていきます。
一方、スタートに失敗しやすい選手は、1分前や40秒前などの時間帯に、無駄なスペースを作る努力をしてしまい、他艇に風下スペースへ割り込まれたり、スピードを失い吸い寄せられたり、スピードを挽回するためにベアが必要だったりします。ゆえに、最後の15秒間を大切にする選手たちは、スタートを失敗しないのだと思います。ただ、ロバートのような選手になると、周りの選手が近づこうとしないため、モーゼの十戒のようにスタートラインが開くことも事実ですが。
明日は最終日です。毎日変わる天候は予測できませんが、11時に予告信号が予定されています。
(Report 鈴木國央/JSAF オリンピック強化委員会ナショナルコーチ)
●大会成績:
http://omanlaserworlds2013.com/results/Laser_Standard_World_Results.php
●大会Webサイト:http://omanlaserworlds2013.com/eng/
Day5
2013年レーザー級世界選手権 5日目
レーザー級のレース展開で気づいたこと
オマーンで開かれているレーザー級の世界選手権大会は、本日5日目決勝シリーズに入りました。
この日は2レースの予定だったのですが、1レース目が終った後に落雷があったため、ハーバーバックとなりました。レーザー級は以前からライフジャケットの着用をクラスルール化するなど、安全の確保に対して積極的に取り組んでいます。今回のレースでは帆走指示書にコーチボートの乗員に対してもライフジャケットの着用はもとより、キルコードの装着を義務づけ、安全に関して厳しくチェックしています。
この地方は1年のうち5日しか雨が降らないと言われていますが、こちらに来ておおよそ2週間の間に3度目の雨となりました。この日はおおよそ45度で5〜8ノットの風が吹きました。
今回のレースでは、オーストラリアのブレット氏とコーチボートをシェアしており、彼の受け持つ選手のうち2名がゴールドフリートに進出したため、ゴールドフリーを中心にレースを見ました。そこで気づいたレーザー級のレース展開について以下にレポートします。
今回のように、風の振れがそれほど大きくないコンディションでは、昨日までのレポートにように、スタート後いかに前へ出すかが重要となります。とくに実力の拮抗した場合、少しの振れでは艇団の前を切り、タックすることが不可能になります。
前を切るためには、スタート後の競り合いの中で、ノック(ヘッダー)時にいかに耐え、リフト時にいかに前に出せるかで、待っていたノックの時に前を切れるかどうかが決まります。軽風でもそれは全く変わりません。今日の風は右振れだったのですが、最初から右を狙っていたのは1艇のみで、それ以外はスタートに失敗した4艇がトップ5で上マークを回航したものの、6位以降はスタート後の競り合いで競り勝った左海面の艇から順に上マークを回航していきます。
これは、スタート後のスピード争いが重要で、また、モードを使い分けながら、有利な位置に持って行くことがいかに必要であるかを示していると思います。
とくに日本人セイラーは、普段から練習しているクローズホールドでキープすることを意識しがちですが、トップセイラーは高さを取ることも上手なのですが、リフトが入った時にしっかりとスピードを出すことによって、高さが取れています。トップセイラーになればなるほど、クローズホールドという固定観念すら持っていないのだと思います。
また、ダウンウィンドにおいても、日本国内で使われているスネーキングという言葉は使われていません。レーザー級はブロードリーチとバイサリーを組み合わせて海面をジグザグに下っていくのですが、基本的にはガストと波に合わせてそれを繰り返し、VMG(Velocity Made Good)を求める走り方ということになります。
そのため、トップ選手たちはそれほど大きなアクションもなく、いいガスト、大きな波を待ち、一気に差を広げていきます。ここでも、日本人選手たちはスネーキングという言葉に囚われたかのように、目先の波に固着しすぎて、全ての波に乗せようという意識が高すぎ、結果的に下マークまでクネクネと直線的に下っていき、大きなガストや波を受ける可能性を減らしてしまっているようです。
今日のレースでも、ブレット氏が受け持つノルウェー選手がダウンウィンドのレグで2艇に抜かれたのですが、コースを変更し過ぎたことを、コーチと選手は反省していました。
(Report & Photo 鈴木國央/JSAF オリンピック強化委員会ナショナルコーチ)
●大会成績:
http://omanlaserworlds2013.com/results/Laser_Standard_World_Results.php
●大会Webサイト:http://omanlaserworlds2013.com/eng/
Day4
2013年レーザー級世界選手権 4日目
▲本日4位を獲得した南里選手オマーンで開催されているレーザー級の世界選手権は予選の最終日を終えました。残念ながら日本選手はゴールドフリートに進出できませんでしたが、選手たちは自らの課題に真摯に取り組み、それぞれの殻を突破することができたと思います。
この日は朝から風がなく、おおよそ1時間遅れで出艇しました。300度から入り始めた風は、レースの始まる頃には345度まで振れ、練習期間中と同じコンディションとなりました。
海面に出てからは一方的な右振れ、昨日までの風はさらに右の80度、練習期間中は左海面有利など、様々な記憶と状況から判断が難しい海面だったと思います。
このコンディションの中、南里選手は上マークをシングルで通過、その後も冷静にレースを進め、最終的には3位と30センチ差の4位でフィニッシュしました。またその他の選手もそれぞれに最高順位を更新しました。
レース終了後、選手と話し合いました。
今回のレースの最大の反省点は普通のレースを普通にできないこと。これを克服するため、来月NTCで開催されるナショナルチーム選考レースの終了翌日、自主的に体力測定を行い、普通にレースするための体力向上を目ざし、体力に関する目標値を設定しようという話をしました。来年こそは準備をしっかりと行い、サンタンデールのISAF世界選手権で国枠を獲得するという意思の表明だと思います。
明日からは3日間、決勝シリーズが行われます。残念ながら全員シルバーフリートですが、その中にはブラックフラッグや失格により本来ゴールドフリートに残っているはずの選手がいます。その中で、来年以降の世界選手権での糧を見つけるのが課題です。
(Report & Photo 鈴木國央/JSAF オリンピック強化委員会ナショナルコーチ)
●大会成績:
http://omanlaserworlds2013.com/results/Laser_Standard_World_Results.php
●大会Webサイト:http://omanlaserworlds2013.com/eng/
Day3
2013年レーザー級世界選手権 3日目
▲大混戦で回航する上マークオマーンで開催されているレーザー級の世界選手権は本日(3日目)、予選シリーズの3レースが行われました。
昨日のレースでは日没を理由に1レースしか行われず、今朝のコーチブリーフィングでは、「先にスタートするイエローグループだけでもレースができなかったのか」とコーチ陣から意見が出ましたが、レースコミッティは「できる限り同じコンディションで、各グループのレースを行いたかった」との見解でした。そんな心配をよそに、本日はレース予定時刻の11時から10ノットオーバーの風が入り、予定されていた3レースを終了しました。
日本チームは昨日までの反省から、積極的にスピードを出すことでなんとかフリートについて行こうとしています。各レースでは上マークを20番代で回航する場面が出てきました。しかし、ダウンウィンドレグに入ると、普段から行ってきたブロードリーチとバイザリーを繰り返す動作に固着しすぎて、レグ全体を考えた普通のヨットレースができずに順位を落としてしまう場面が多く見られました。レース終了後、選手個人個人とブリーフィングを行い、主に考え方についての話し合いを行いました。
明日は予選最終日となり、ゴールドフリートへの最後の望みをかけてレースを行います。
3日目終了時点で、ブラジルのロバート=シェイドが総合トップに立ちました。彼はレーザー級でアトランタ金メダル、シドニー銀メダル、アテネ金メダルを獲得し、スター級に転向してから北京銀メダル、ロンドン銅メダルのスーパーアスリートで、今回地元のリオ五輪に向け6つ目のメダルに挑戦します。40歳になりセーリング技術がさらに熟成されたように、ほとんどミスをおかさずにレースをまとめてきています。明日も応援をよろしくお願いいたします。
(鈴木國央/JSAF オリンピック強化委員会ナショナルコーチ)
●大会Webサイト:http://omanlaserworlds2013.com/eng/
Day2
2013年レーザー級世界選手権 2日目
▲レース会場のAl Mussanah Sports Cityの様子オマーンで開催されているレーザー級の世界選手権は2日目を終えました。日本チームの成績は厳しく、20位から40位集団の壁を突破することができません。
2日目は朝から陸風が続き、出艇を延期し、午後12時半ごろにようやく出艇しました。コーチボートで借りられる運営用の無線では、早い段階から5ノット程度の風が入っていたようですが、弱すぎると判断されたためか、出艇を遅らせたようです。
出艇直後の海面は、60度近辺から8ノット前後の風が入り、レースには十分なコンディションとなりましたが、イエローグループがゼネラルリコールを繰り返し、4回で約10艇の黒色旗による失格者を出した後、スタートしたのは午後2時半過ぎ。風は吹き上がり15ノットオーバーのコンディションになっていました。続くブルーグループもゼネラルリコールを行った後に、スタートしたため、3時過ぎになってようやくスタート。結局第4レースの終了が日没に間に合わないため、1レースだけが行われました。
日本のエース安田は、昨日のミーティングの反省から、スタートラインの真ん中付近から飛び出し、懸命にスピードを保つ努力をし、トップグループの中でレースを進めます。スタート後右のガストが入り苦しい展開でしたが、スピードを保ってトップ集団に食らいついていたため、ジックリと左に振れ戻るのを待つことができ、艇団と一緒にポートタックになることができました。しかし、トップ艇団は右海面から出てくるグループの前を通過できないと判断して、左エッジにもう一度向った所で判断を誤り、右艇団の後ろを通って、右海面に出てしまいまし。結果風は左に触れ戻り、トップ艇団から離されて上マークを回航していきました。
世界選手権では一瞬の判断ミスで、大きく順位を落としてしまいます。あらためて、オリンピック強化委員会の推奨する練習にあるような、「見る、判断する、実行する」練習の大切さを感じました。
しかし、反省を生かして艇団についていけるようになったことは大きな成長です。明日からのレースに期待できるレースをすることができました。
(鈴木國央/JSAF オリンピック強化委員会ナショナルコーチ)
●本日の成績
○安田 真之介(京都府立宮津高等学校 教諭)
77位 31-43-41
○南里 研二(わたみん家)
96位 42-51-49
○谷口 斎謙(島精機製作所)
119位 59-55-56
○粟野 和昭(パフォーマンス・セイルクラフト・ジャパン)
124位 60-60-59
●大会Webサイト:http://omanlaserworlds2013.com/eng/
Day1
2013年レーザー級世界選手権 1日目
▲オープニング・セレモニーに参加した左から南里、谷口、粟野、安田、瀬川の各選手
オマーンで開催されているレーザー級世界選手権は、昨日のプラクティスレースの後、オープニングセレモニーが行われ、本日から6日間にわたるレースが始まりました。
第1日目の今日は、練習中の気象から変化し、15ノット前後の風でレースが行われました。海面はおおよそ90度からの風で、レース海面は浅く、深く掘れた波が特徴です。
レースコースはトラペゾイドコース+フィニッシュまでのショートアップウィンドという、レーザークラスのスタンダードのコースが設置され、トップ艇のターゲットタイムは60分で設定されています。15ノットでも25ノットでも60分のコースが設置されるため、本大会に初めて参加する選手は長く感じたようです。スタートは今年から新たに帆走指示書ガイドに加わった"U旗"から行われます。本日の第1レースからゼネラルリコールの後ブラックフラッグが掲揚され、10艇弱のボートが失格となりました。
波が悪くオーバーパワーのコンディションとなった今日のレース。日本選手はスピードについて行けず、苦戦を強いられています。
夕食後、長めのミーティングを行い、トップ選手との差について話し合いました。トップ選手はハイクアウトはもちろんのことながら、メインシートトリムを駆使して、スピードが落ちないように走っている。「少し速い選手を見ると、メインシートを出さずに走っているように見えるが、その選手層から抜き出るためには、スピードを落とさないことが大切で、スピードを落とさなければ、上り角度もとれる」という当然のことを話し合いました。選手たちは各々に明日へのイメージを高めたと思われ、明日以降のレース展開に期待をしたいと思います。
明日は午前11時予告信号の予定で、2レースが予定されています。天気予報を見ると、毎日晴れで8ノット前後の軽風の予報なのですが、1年に7日しか降らないと言われる雨が、昨日、今日の夕方と続けて降ったり、15ノットに吹き上がったりと、予想できません。明日も応援をよろしくお願いいたします。
(鈴木國央/JSAF オリンピック強化委員会ナショナルコーチ)
●本日の成績
○安田 真之介(京都府立宮津高等学校 教諭)
73位 31-43
○南里 研二(わたみん家)
98位 42-51
○谷口 斎謙(島精機製作所)
119位 59-55
○粟野 和昭(パフォーマンス・セイルクラフト・ジャパン)
123位 60-60
●大会Webサイト:http://omanlaserworlds2013.com/eng/
LWC2013
日本からは5選手が参加
▲日本選手の練習シーン
レーザー級世界選手権大会が11月14日から23日の10日間、オマーンのAl Mussanah Sports Cityで開催されています。
会場はオマーンの首都マスカットから、車で西へ100kmほど走ったところにあり、数年前に開催されたアジアンビーチゲームの折に、ホテルとマリーナが整備されています。
日本からは、ナショナルチームの安田真之介(京都府立宮津高等学校 教諭)、谷口斎謙(島精機製作所)、南里研二(わたみん家)、粟野和昭(パフォーマンス・セイルクラフト・ジャパン)の4名と、瀬川和正(龍谷大学)の合計5名の選手が出場します。
レーザー級世界選手権は、全選手新品のチャーターボートで行われます。船の性能ではなく、選手の腕によって競われるというヨットレースを忠実に守ろうとしています。ボートは大会の1週間前から受け取ることができ、谷口、南里、瀬川の3名は、1週間前から調整を進めてきました。
レーザー級の世界選手権は、私にとっても8年前に同級を引退して以来であり、現在のトレンドを見るとてもいい機会になります。今回は、8月にNTC(ナショナルトレーニングセンター、和歌山)で行われたナショナルチームの合宿に、コーチとして招聘したオーストラリアのブレット=ベイヤー氏とコーチボートを共用しています。彼はノルウェー選手とアイルランド選手をコーチングしていますが、そのコーチングの内容を身近で聞き取れるため、とてもいい勉強になっています。
現地での日本人選手は、レース前の合宿で主にスピード練習とコース練習を行ってきました。風速は4〜10ノットのシーブリーズが続いていますが、海面にムラがあり、パッチーなコンディションです。練習では、ヘッダーでしっかりと高さをキープすること、リフトではしっかりと体重をかけ前に出すこと。もちろん海面をよく見て、隣の船に走り勝つことを目的に行ってきました。選手たちは各々の課題を一つずつクリアしながら練習し、体調を整えてきました。
大会は15日までに受付けと計測が行われ、16日はプラクティスレースと開会式。17日から1日2レースの予定で4日間の予選シリーズと3日間の決勝シリーズが行われます。
51カ国から128名の選手が参加し、ロンドンオリンピック以降、選手の入れ替わりが多いようです。前回までのチャンピオン、トム=スリングスビーが抜けた後、若手選手が出てきていること、また、スター級がオリンピック種目から外れたことにより、レーザー級に復帰したロバート=シェイドの走りにも注目ですが、日本チームの応援をよろしくお願いいたします。
(鈴木國央/JSAF オリンピック強化委員会ナショナルコーチ)
●国際レーザー協会Webサイト:http://www.laserinternational.org/home
▲コーチボートから見るレース海面。ブレット=ベイヤー氏と同乗するため、コーチングの勉強にもなる